■進学実績では難関中高一貫校の圧勝だが…
子育てにおいて大学受験は代表的な悩みの一つだ。いまだに卒業大学を事実上の最終学歴とみなす風潮は根強く、就職活動やその後の人生にまで影響を及ぼすことも珍しくない。
一昔前ならば、旧帝大・早慶以上のレベルの大学(難関大)を志向するハイレベル層は、確実性を求めて難関中高一貫校を目指すパターンが主流であった。しかし、現在は公立トップ高校を経由するルートも存在感を増している。そこで、本稿ではそれぞれのルートについて、深掘りしていきたい。
まず、東大・京大、国公立医学部医学科(超難関大)への合格実績では、中高一貫校(私立・国公立の併設型一貫校および中等教育学校)が大きくリードしている。2025年に東大+京大で10人以上の合格者を輩出した高校のうち、現役・浪人の内訳が明示された全国の名門123校の進学実績を集計したのが図表1である。東大・京大、国公立医学科とも総合格者数・現役比率ともに、中高一貫校が大きく上回っている。単純に東大・京大への進学をゴールとするならば、今でも最短ルートは難関中高一貫校だ。
ただし、このデータは教員や生徒の能力差を示すものではなく、大学受験対策に投入できる時間構造の違いによる影響も大きい。中高一貫校では高校受験が存在しないため、6年間を通じて大学受験を見据えた学習設計が可能となる。
■「日比谷」「北野」公立トップ躍進のワケ
中高一貫校を取り巻く環境は大きく変化している。中学受験率は全国的に増加トレンドが続いており、2025年時点で首都圏では約18%、近畿圏でも約11%に達した。国公立の中等教育学校の新設も全国各地で進み、これまで公立高校の強さが際立っていた地域でも中高一貫校の新設が相次ぐ。
背景には、高校教育に求める役割の変化という政策的な事情がある。文部科学省は、学習ニーズ多様化への対応と卓越した人材育成の両立を掲げ、都道府県には特色ある高校を求めてきた。中高一貫教育の拡充は、その中で生徒の成長段階に応じた長期的な教育設計を可能にする制度として位置づけられている。
一方で見落とされがちなのが、公立トップ高校側の変化である。日比谷高校(東京都)は2010年代以降、進学指導重点校としての制度的支援を背景に、東大・京大への合格者数を急速に伸ばしてきた。同様に北野高校(大阪府)も、府の特色化政策や入試制度改革を追い風に、2010年代後半から京大合格者数を大きく伸ばしている。
中高一貫校の拡大と並行して、公立トップ校も躍進のステージに入ったといえそうだ。
■中学受験は塾代だけで約230万円
そうはいっても気になるのが家計負担だ。教育費は住宅費・老後資金と並ぶ人生の三大支出と言われ、特に大学関連費用は青天井で高額になりやすい。中高一貫コースの場合、中学受験対策と中高の授業料が上乗せされ、経済的負担が重くのしかかる。
特に難関中学の場合、ハイレベルな定番問題を一通り押さえたうえで、処理能力や思考力を問われる。小学校の授業だけでは太刀打ちできず、小4~小6の中学受験対策は必須と考えたい。この塾費用だけでも約230万円(「令和5年度子どもの学習費調査」、大手学習塾・予備校の発表資料を基に試算)に達し、小1~小3の平均的な学習費用を加えると小学校6年間での教育投資は約340万円となる。
ただ、一貫校に入ってしまえば、中学の3年間は学校のカリキュラムをしっかりこなせばよい。著しい苦手分野があれば補習も必要だが、授業メインで基礎固めが可能となっている。
一方で公立高校の場合は、圧倒的に授業料が安いというイメージを持つ人も多い。しかし、ゴールを東大・京大への進学に設定すると、この差は想像以上に縮まりやすい。
■「公立高校=安い」は大間違い
特に差が付きやすいのは英語だ。埼玉県のツートップである浦和高校・大宮高校では、英検2級取得により調査書で加点措置がある。裏を返せば高校中級程度と言われる準2級レベルが標準的水準とも言える。大阪府の場合は、全高校で英検2級取得により入試英語の80%得点、準1級で100%得点となる。しかし、京大合格者数No.1の北野高校では80%得点でも合格ラインに届かない可能性があり、実質的に2級以上が求められていると言っても過言ではない。中1・2では主要3教科、中3で5教科を塾に頼るのが安全だが、3年間で約140万円を要する。
こうした最上位層の勝負は小学校から始まっており、平均的な塾費用の2倍程度を見込んでおきたい。また、内申点に注目すると、実技科目の比重が高い自治体もある。東京都をはじめとした10都府県では主要教科の2倍換算であり、スポーツ・文化活動への投資も欠かせない。こうした素養は小学校低学年までに下地が決まってしまうとも言われるため、筆者試算では、教科外のスポーツ・文化体験として、平均支出の2倍程度を想定した。
公立トップ校ルートでは授業料が安い一方で、学力と内申点を高水準で両立する必要がある。
■学校の授業だけで東大合格は“無理ゲー”
高校に入ると、学費以外の費用差はさらに小さくなる。東大・京大・国公立医学科レベルを目指す場合、いずれのルートでも学校の授業だけで受験対策を完結させるのは難しい。多くの生徒が大学特化の対策講座や分野特化型演習など、塾・予備校を併用しているのが実態である。
しかし構造的に見ると、その位置づけは両者で異なる。中高一貫校では学校カリキュラムで築いた基礎をベースとして、高度な演習や答案作成力強化がメインだ。一方、公立トップ高校では、大学受験に向けた進度に不足が生じやすく、先取り学習と演習量確保を兼ねる。両ルートともに高1から対策が望ましく、高校3年間で約230万円を想定した。旧帝・早慶以上の大学では浪人も一般的であり、予備校費用として100万~150万円程度の追加も覚悟しておくべきだろう。
もっとも、いずれのルートであっても、東大・京大や国公立医学科のハードルは決して低くない。難関一貫校では入口のレベルが高いため、周囲のレベルの高さに絶望し、自己肯定感が得られずに脱落する生徒も少なからず存在する。
■日比谷でも超難関大への進学は4割
また、全国トップクラスの進学実績を誇る日比谷高校でも東大・京大や国公立医学科などの超難関大への進学者は4割程度にとどまり、早慶~MARCHクラスへの進学も少なくない。
どちらのルートが適しているかは、費用だけでなく本人の性格を考慮したい。中高一貫校では高校受験が存在しないため、実質6年間を大学受験準備に充てられる。多くの学校では中学課程を中2までに終え、高2後半から大学受験演習に移行する。
高校受験という中間マイルストーンをスキップし、基礎から高度な演習までを一貫して進められる点は大きな強みだ。旧帝・早慶レベル以上の大学の入試では基礎理解に加え、それらを組み合わせた理解・表現能力が問われる。このため演習量を確保しやすい一貫校は有利で、長期目標に向けて計画的に努力を続けられるタイプには合理的選択といえる。
■公立トップに向くのは「文武両道コミュ強」
また、一貫校の中でも様々な特色があり、自律型と管理型に大別され、子どものタイプに合わせた学校選択が重要だ。自律型の一貫校では5年間遊びに明け暮れ、管理型では大量の宿題に疲弊する人も一定数存在する。
地方によっては有力な中高一貫校が存在しない場合もある。それでもわが道を行くタイプであれば、自律型の一貫校がオススメだ。周囲の影響を受けやすいタイプなら、環境のレベルが高い管理型の寮付き一貫校も検討したい。
一方、瞬発力のある文武両道タイプは、公立トップ校向きだろう。環境変化を刺激として成長できる生徒は、後半戦で急激に追い上げることも多い。
ただし、極めて高い内申点が求められるため、学力に加え、先生や先輩・後輩との良好な関係構築も必須だ。内申点で加点要素となりやすい生徒会活動や部活動実績など、多方面での活動も欠かせない。コミュニケーション力に課題がある場合、学力が高くても最上位高校への入学は難しいだろう。
高校入学後も、勉強と並行して部活・行事に全力投入が前提となる。実技面もハイレベルであり、いわゆる「理不尽系」とも受け取れる過酷な行事が課される学校も存在する。例えば浦和高校では1年次に海で2キロの遠泳や、修猷館高校では十里(約40キロ)を1日で歩く「十里踏破遠足」などが有名だ。こうした校風は合う・合わないが分かれやすく、体力面や集団適応で消耗しやすいタイプには厳しいかもしれない。しかし、この雰囲気が好みならば、学力面のみならず肉体的・精神的にも大きく成長できる環境といえそうだ。
■3%の名門高出身者が東大・京大を独占
ここまで見てきたように、中高一貫校・公立トップ高のいずれも、目指す頂点は共通している。2025年の東大・京大合格者全体のうち、今回取り上げた「名門123校」が占める割合は7割以上に達する。全日制の高校・中等教育学校4600校のうち、3%にも満たない学校から合格者の大半を輩出しているのだ。さらに言えば、名門123校のうち約6割が首都圏・関西圏の都市部に位置し、これらの学校出身者だけで東大・京大合格者全体の54%を占めている。
また、本稿で議論してきたとおり、東京一科や国公立医学科に進学するには、費用の内訳は違っても莫大な教育費を要する。結局のところ、都市部に生まれて教育情報を容易に入手できる環境で育ち、こうした教育費を払える家庭に生まれた人たちが学歴面で優位に立ちやすい。中高一貫校コースの場合、教育費でゆとりある時間を確保し、その中で重課金によって超難関レベルまで押し上げているのが実情という見方もできる。公立トップ高コースはオールマイティ型の才覚がなければ成り立たず、それでも実質的に相当な経済的負担が必要だ。
大学入試改革が叫ばれて地域枠や推薦枠拡大等が加速してもなお、高学歴人材の階層が固定化しやすい側面が見え隠れする。努力だけで突破するには、スタートラインの差が大きすぎるのだ。日本の教育機会の公平性に関して、抜本的な再設計を議論すべきかもしれない。
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伊藤 滉一郎(いとう・こういちろう)
受験・学歴研究家、じゅそうけん代表
1996年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、メガバンクに就職。2022年じゅそうけん合同会社を立ち上げ、教育機関向けの広報支援サービスを展開する。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、XやYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。
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(受験・学歴研究家、じゅそうけん代表 伊藤 滉一郎)

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