学校に行かない子どもに対し、親はどう接すれば良いのか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二さんの共著『その「習慣」が子どもの才能をダメにする』から、「どうしたら学校に行ける?」と聞くよりも親が優先すべき習慣を紹介する――。
(第3回)
※本稿は、成田奈緒子、上岡勇二『その「習慣」が子どもの才能をダメにする』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■子どもが夏休み明けから学校に行かなくなった
×「(不登校のわが子のカウンセリングの場で)どうしたら、学校にまた行けると思う?」
○「学校のことはともかく、寝る時刻だけは守ろうね」
【エピソード】

ソウマは小1の夏休み明けから学校に行かなくなりました。しばらく見守ることにし、家で好きなように過ごさせていましたが、再登校する気配がないまま半年以上経ってしまいました。「2年生になったら行けるかと思っていたのに」と母親はがっかりしています。

不登校になってからソウマが唯一、家族以外の人と話すのがカウンセリングの場です。そこで母親は「どうしたら、学校にまた行けると思う?」とソウマにたずねました。ソウマは「知らないって言ってるじゃん!」と怒り、そっぽを向いてしまいました。

近年、不登校の子どもたちは増え続けています。2025年度の文科省の調査によると、小中学生の不登校児童生徒数は過去最多の35万3970人、高校生は6万7782人で、小中高の合計では42万人超となっています。
■不登校になる子に共通する生活習慣
文科省の定義による不登校とは、要約すれば「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」です。
具合が悪く、何らか診断名がついているケースは除かれているので、実質的な数はもっと多いと思われます。
私たちのところへも不登校に悩んでいる親御さんがよく相談に来られます。
「からだの脳」がしっかりしていないまま「おりこうさんの脳」を育てようとすると、バランスを崩して不調を抱えがちになります。現代の子育てではほとんどの場合「からだの脳」がちゃんと育っていません。そのうえ、不登校の子は生活リズムが乱れていることが多いため、私たちはまずしっかり寝るようにお話しします。
小学生の場合、睡眠時間は最低9時間必要です。夜9時に寝て朝6時に起きるリズムが理想的です。これだけで劇的に変化することもあります。小1から学校に行けなくなり、家族に暴言を吐いたり暴れたりして大変だということで親御さんが相談に来られたことがあります。
■親の理想通りに子育てをしてはいけない
「小学校に入るまではとてもいい子でかわいかったんです」
まさかこんなことになるなんてと、親御さんはパニックになっていました。子どもに対していろいろな働きかけをしているけれど、まったく効果がないといいます。ところが、毎晩9時に寝る生活をするようになったら、驚くほど落ち着きました。
学校にも行けるようになり、暴れることもなくなりました。ものすごく欲しかったゲーム機の抽選に外れてしまったときも、以前ならそれだけで3日は暴れていただろうというところを「なんで外れたんだろう」の一言で終了。

あっけらかんとしていて親御さんも驚いたそうです。親御さん自身も子どもを客観的に観察できるようになり、「以前は私の理想に沿ったかわいい子でないと、と思っていましたが、今はこの子なりに発達しているんだなぁと思っています」とおっしゃっていました。
ソウマの母親は「どうしたら、学校にまた行けると思う?」と聞いていました。頭ごなしに「学校に行きなさい」と言っているわけではないので、子どもの意思を尊重しているように見えますが、ソウマはそう感じていません。母親がいつも心配して悩んでいる様子があるからです。
■子どもを追い詰める父親がやりがちな危険発言
「早く学校に行けるようになってほしい」と願っている(つまり親は問題なく学校に行く子を「かわいい」と思っている)のが伝わってきて、プレッシャーになっているのです。
親がはっきりと言葉に出さなくても、子どもに伝わってしまうことはいろいろあります。
「学校に行かないで、将来どうするつもり?」

「本当にやりたいことは何なの?」
これらもプレッシャーになりやすい質問です。私たちが見る限り、父親は「何が原因でこうなっている? 何があれば前に進める?」というように理詰めで問題を解決しようとする傾向があるのですが、落ち込んでいるときにこういった質問をされても子どもは答えることができません。
本当に子どもの答えが聞きたいなら、子どもの気持ちに寄り添って「待つ」ことが必要です。子どもが話せそうなタイミングで、フラットに聞くようにしてください。フラットに聞くコツは、感情を入れないことです。

ネガティブな感情が入っていると子どもは必ず不安になります。人間なので怒りや悲しみの感情が湧くのは抑えられませんが、そういった感情が湧いた瞬間には言葉にせず、一呼吸置くようにしましょう。
■「学校に通う子=おりこうさん」ではない
フラットな質問を心がけること以上に大事なのは「学校にきちんと通う子がかわいい子」という価値観を外すことです。家庭での軸は「元気に生かす」です。それだけは絶対に外せないので、生活リズムを整えることには全力を尽くしてください。
今の時代はたとえ学校に行けなかったとしても、フリースクールのような場所はいくらでもありますし、家で学習機会を作ることも可能です。通信制の高校などで高卒資格を得て大学受験することもできます。私たちはアクシスでこのような「オルタナティブ(代替の)」道をたどって社会に出ていく子どもたちをたくさん経験しました。
社会に出たあとも、在宅でできる仕事も増えています。どうしても集団行動が難しい、人と関わることが難しいという場合であっても、ちゃんと学歴をつけながら社会で生きていくことは可能です。親はこういった情報収集をしつつ、「元気に生かす」の軸で大らかに構えているのが一番です。
親が好きなドラマでも見て「あはは」と笑い、楽しそうにしていれば、自室に引きこもっている子も出て来て「僕はどうしたらいいかな?」と聞いてくるものです。

■不登校でも自己肯定感を高めてあげる方法
「学校には行きたいんだけど、どうしたら行けるようになるのかな」。そう聞かれたときに指示をするのではなく、客観的に情報を伝えてあげてください。
学校に行っていない場合、朝早く起きる必要性がないため生活リズムを整えるのが難しくなります。そこでおすすめしたいのは「朝ごはんを作る」「きょうだいのお弁当を作る」などの役割を与えることです。「学校に行かないのなら、生活を頑張ってね」ということで家庭での役割をしっかりやってもらうのです。
早起きして家族の朝食作りを担当してくれれば、親は「助かるわ~。どうもありがとう」と言うことができます。感謝の言葉をもらえることは本人にとってとても重要です。「自分は役に立つ人間である」と思うことができ、自己肯定感も上がるでしょう。
親にとっても、「学校にきちんと通う子がかわいい子」という価値観を外しやすくなります。「役に立ってくれてありがたい」と本心から思えるので、子どもの人格を認める発言が増えていくのです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)

文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表

小児科医・医学博士・公認心理士。
1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。

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上岡 勇二(かみおか・ゆうじ)

公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ

公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。

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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)
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