子どもを健全に育てるにはどうしたら良いのか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二さんの共著『その「習慣」が子どもの才能をダメにする』から、5歳までの子には食事やお風呂よりも睡眠を優先すべき理由を紹介する――。
(第5回)
※本稿は、成田奈緒子、上岡勇二『その「習慣」が子どもの才能をダメにする』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■夕飯やお風呂をサボってでも大切にしたい習慣
×どんなに疲れていても、夕飯・お風呂・読み聞かせの時間を大事にする
○睡眠時間優先で、その他はサボってもいい
【エピソード】

ヒナタの母親は、忙しい平日も「夕飯・お風呂・読み聞かせ」の時間を大事にしています。仕事が終わると保育園にお迎えに行き、家に着くのは18時半頃。朝に下ごしらえしておいた食材を使って急いで食事を作り、夕飯を食べたらお風呂につかって、コミュニケーションタイムです。そして、どんなに疲れていても欠かさず絵本の読み聞かせをします。

すべてこなすと寝るのは21時を過ぎてしまうのですが、ヒナタもそれに慣れていて「眠くない」と言います。ただ朝起こすときが大変です。機嫌が悪くて「保育園に行きたくない」と言う日が多く、困っています。

ヒナタの母親のように、忙しくても手作りの食事にこだわり、シャワーではなく湯船につかり、絵本の読み聞かせに力を入れて頑張っている親御さんは多いと思います。もちろん、それができるのなら、素晴らしいことです。しかし、5歳までの子どもにとって、もっとも大切なのは「からだの脳」を育てること。
■20時までに寝かせるための戦略
早寝早起きのリズムを作り、しっかり睡眠をとることこそ最優先です。
手作りの食事にこだわり、湯船につかることにこだわり、絵本の読み聞かせにこだわった結果、寝る時刻が遅くなってしまっては元も子もないのです。
成田家では、娘が生後50日の頃から保育園に預けて両親とも仕事をしていました。どうしても忙しいときには19時半頃まで預かってもらい、家に到着するのは19時45分です。それでも20時には寝かせるようにしていました。20時就寝はマストなので、夕飯・お風呂・読み聞かせにこだわっていられません。
「あと15分しかないから、今日はお風呂はちょっと無理だね。体ふきふきしよっか!」と言って蒸しタオルで体を拭き、パジャマを着る間に冷凍ご飯をあたためておいて、「納豆ご飯は美味しいね、最高だね」と言いながら食べさせ、歯磨きをちゃちゃっとすませて布団に入ります。
そして電気を消して、「今日は桃太郎の話にしようかな。むかしむかしあるところに……」と適当に語り聞かせ。「どんぶらこ、どんぶらことスイカが流れてきました。いや、桃か」なんて言っていると娘の寝息が聞こえ、私も寝落ちして夜中に起きるというパターンでした。
■食事の栄養は1週間単位で見れば問題ない
大人は夜中3時に目覚めても、7時間ほど眠れていますから大丈夫です。
そこから前日の食器を片づけたり洗濯をしたり、ぐちゃぐちゃになっていた家の中を整えて、作れるときはおかずを作って冷蔵庫に準備をしておきます。子どもの脳を育てる責任があると思っていたので、いかにして20時に寝かせるか、必死でした。
「帰りが遅いので、どうしても子どもを寝かせるのが遅くなってしまう」という方がいますが、寝る時刻以外のことは多少サボっても大丈夫です。食事も1週間のトータルで見てバランスがとれていればいいですし、お風呂に入れなくても体を拭いて清潔を保てれば問題ありません。
絵本の読み聞かせは、夜寝る前でなくてもいいのです。時間があれば朝に読んでもいいですし、休日にゆっくり時間をとってもいいでしょう。なぜか「寝る前には絵本の読み聞かせをしなければ」と義務のように思っている人もいるのですが、睡眠のほうが大事です。
■睡眠を疎かにすると暴力的な子に育つ可能性も
5歳までの子を持つ親御さんには、「からだの脳」を育てることに本気になってほしいと思います。
「からだの脳」が育つ時期は0~5歳ですが、その時期を過ぎたとしても、「もう遅い」ということはありません。これまで睡眠時間を軽視してきてしまったと思う方は、今からでも生活リズムを整えるようにしてみてください。
小学校高学年で不登校になってしまったり、暴力・暴言があって困っていたりする子も、しっかり寝かせるようにしたら次第に落ち着き、前向きな言動が増えた、というケースはいくらでもあります。
ただ、5歳までの子なら親が一緒に布団に入って寝かしつければなんとかなっても、成長するに従い、「早く寝かせようとしても寝ない」という問題があるでしょう。

10歳頃からは前頭葉が発達し、親が正論を言ったところで、子どもの側がそれを鵜呑みにすることもだんだんと少なくなっていきます。思春期には反抗的にもなりますから、単に「早く寝なさい」と言っても子どもは聞きません。
伝え方に工夫が必要です。
■子どもに「早く寝なさい」は効果がない
一つは「ロジックで伝える」。
科学的根拠とともに、なぜ睡眠が大事なのかを伝えます。本書で説明している「からだの脳」→「おりこうさんの脳」→「こころの脳」という脳の発達のプロセス、「からだの脳」がしっかりしていないと「おりこうさんの脳」もうまく育っていかないことを説明してあげてください。
脳がきちんと機能するためには、睡眠を軽視してはいけないのです。子ども自身が納得できれば、行動を変えることもできるはずです。
もう一つは、「早起きするメリットを作る」。
遅い時刻に寝る生活パターンができてしまっていると、早く寝ようとしてもなかなか寝付けません。寝付けないから結局いつも通りの時刻に寝て、早起きもできない。
このパターンを断ち切るためには、とにかくいったん早起きする必要があります。
早起きして活動すれば、その日は早めに眠くなるでしょう。
早起きするメリットとして、ゲームが好きな子なら「朝の時間ならいくらでもゲームをしていい」ということにするのもアリです。朝の時間に楽しみを作って、早起きするところから始めてみてください。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)

文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表

小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。

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上岡 勇二(かみおか・ゆうじ)

公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ

公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。

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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)
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