※本稿は、加藤俊徳『いじめ脳 脳科学が解き明かす「メカニズム」と「対処法」』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■いじめ加害者の家庭環境はどうか
私はこれまでMRI(磁気共鳴画像)を使って、種としての「ヒト」から、個性を持った「人」の脳へと研究を進めてきました。
いじめる側もいじめられる側も「ヒト」ではなく「人」なのです。
細胞の塊でできているヒトと個性的な人格を持った人との違いの本質は、親の違い、生まれの違いなどの成育歴やその後の生活歴の違いであると考えてきました。
脳の個性がどのように創られていくのかほとんどわからなかった研究初期の頃、1歳前からヒトの脳の発達が遺伝子のレベルを超えて、経験の違いから少しずつ異なって発達していく様子を脳のMRI画像や脳血流分布の発達変化から確認しました。
乳幼児期の頃に、まったく愛情を注がれなかった子やネガティブな会話が飛び交う環境で育った子に比べて、両親だけでなく祖父母、親戚からも愛されて全く否定されることなく育った子では、その子の脳が織りなす機能としての行動や精神状態に影響があると考えるのは当然のことでしょう。
例えば、カナダのマクギール大学精神科のフリーマンらは、うつ病の親を持つ子は、9歳および10歳の時点で、報酬反応に対する大脳基底核の活動が鈍くなっていると報告しています(*2)。
■子がいじめをするのは親が悪い?
また、テキサス大学の人間発達・家族科学部ヂォゥらは、映画鑑賞中の親子の脳内の感情ネットワークの類似性が高いほど、ネガティブな感情の減少、不安の低下、自我の回復力の向上など、若者の感情の調整能力が優れているとしています(*1)。また、興味深いことに、感情における脳の働きが親子で類似するのは、家族の結束が強い場合にのみ認められ、低い家族間では優位ではありませんでした。
このように、家族関係がもたらす脳への影響の最新研究では、親子の関係性が子どもの感情だけでなく複数の脳番地への影響があることを示しています。
実際に、私のもとへ相談に来られる「いじめ加害者」からは、親の突発的な怒りや暴力的な言動、成績のよし悪しを過度に重視する学歴偏重主義による不遇な扱いなど、親の育て方に対して不信感を抱き、「それが自分の脳に影響しているのか」と問われることが少なくありません。
■ネガティブな親に育てられた子
親から子の脳への影響という点に焦点を当てると、幼少期の記憶が肯定的か否定的かによって、不測の事態への対応力は変わってきます。成長に伴ってその記憶を思い出すたびに、より幸福感に満ちた家族の記憶があるほうが、いかなる非常時でも自分の脳を落ち着かせてくれるでしょう。
要するに、否定的な過去の記憶は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に類似して幸福感とは正反対の感情とともに、気分を悪化させます。過去の成育歴を感謝の思いで繰り返して思い出し、幸福感に満たすことができたなら、その子の脳には、前向きな脳の成長のために永遠のお守りが宿っていると考えられます。
こう考えると人はすべて異なった成育歴があり、「いじめ脳」は誰にとっても無関係とは言えないのです。
このことから、親がわが子にできることは決して少なくないことがわかります。朝から家族間のネガティブな言葉にさらされ、イラつく状況を目にして登校する児童の気分が良いはずがありません。それ自体、子どもの脳からレジリエンスを奪ってしまうのです。
■レジリエンスを高めるためには
右脳と左脳の違いから考えるファミリーレジリエンスという言葉があります。家族が幸福に満たされ、前向きに生きる生存能力が高ければ、その一員の子どもの生存能力も高くなるのです。
子どもの気持ちがいつも陽気で前向きなら、いじめ脳になる時間も動機も減ると考えられます。自分の育った環境を感謝できる子どもは、他人も自分も愛することに繋がるのです。
■右脳と左脳の違いから考える
10年ほど前に、MRI脳画像診断をしていた私は、脳の成長の1つの手がかりを見つけました。それは、「感情の中枢が左脳と右脳に分かれている」事実です。
そもそも、なぜ右脳と左脳があるのか? これは脳の研究を始めた頃から抱いていた長年の疑問でした。一般的には、左脳は言語情報の処理を担い、右脳は言語処理より非言語の情報処理を担っていると考えられてきました。私は、右脳の非言語処理は、環境からの情報を収集して、成長へとつなげる「環境脳」と考えるようになりました。
■いじめ脳になってしまう原因は?
言語は他人とコミュニケーションするツールですが、もっと大事なことは、自分自身を言語化して知るツールだとも考えられます。つまり、右脳の「環境脳」に対して、左脳は「自我脳」と捉えられるのです。
この「環境脳」と「自我脳」の未熟性やアンバランスこそが、いじめ脳の元になるのではないかと考えたのです。脳全体をフレキシブルに使うことは「環境脳」と「自我脳」の両方をバランスよく成長させます。いじめ脳になる誘因は複数考えられますが、そもそも人間は「環境脳」と「自我脳」がアンバランスになりやすいもの。ヒトは脳の構造としくみによって、いじめ脳の元がすでに備わっているのです。
感情の中枢は、右脳と左脳の側頭葉の内側にある扁桃体とその周囲にあると考えられています。
たとえば一流の役者があるときは時代劇に、またあるときは未来映画に登場する様は、脳の使い方で人格が違って見えるということを示していると考えられます。
胎児から100歳以上までをMRI脳画像を通して診ていると、胎児から子どもの間は、右脳から左脳に、脳幹は後方から前方に成長していく傾向があります。
■側頭葉の発達が性格も左右する?
ところが、感情の中枢と考えられる扁桃体とその周囲は、左脳感情の発達は30歳を越えてもゆっくりで、右脳感情の発達が進まないと左脳の扁桃体とその周囲に発達が認められにくいことがわかってきました。8つの脳番地の中でも、感情系脳番地は、左脳と右脳の発達の左右差が大きくなり、HSP(Highly Sensitisve Person)になる傾向が見られます。
また、大人になっても左右ともに発達が未熟な場合には、人と目を合わせにくいという特徴が認められるのです。
このように、海馬や扁桃体が位置する側頭葉の発達は、知能の発達に強く関与しているだけでなく、性格や精神状態にも深くかかわっていることが示唆されます。
(*1)Freeman C, et.al. Family History of Depression and Neural Reward Sensitivity: Findings From the Adolescent Brain Cognitive Development Study. Biol Psychiatry Cogn. Neurosci. Neuroimaging. 2023 Jun; 8(6): 620-629. doi:10.1016/j.bpsc.2022.09.015.
(*2)Zhou Z, et.al. Family Cohesion Moderates the Relation between Parent-Child Neural Connectivity Pattern Similarity and Youth’s Emotional Adjustment. J Neurosci. 2023 Aug 16; 43(33): 5936-5943. doi: 10.1523/JNEUROSCI.0349-23.2023
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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、加藤プラチナクリニック院長
新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。
現在、「加藤プラチナクリニック」を開設し、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、得意な脳番地不得意な脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳トレ処方を行う。著書には、『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『50歳を超えても脳が若返る生き方』(講談社)など多数。
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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)

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