■カジュアル化で「革靴」を履く人が激減
仕事と趣味を兼ねて、移動中に人々の服装を眺めていると、マストレンドがぼんやりとわかってきます。そのマストレンドの一つとして最近ひしひしと感じるのが、ビジネスマンの服装のカジュアル化です。
2005年にクールビズが始まってから、男性のビジネススタイルはカジュアル化し始めました。2020年代に入るとコロナ禍による在宅ワークの増加によってビジネススタイルはさらにカジュアルになりました。
クールビズ以前の男性のビジネススタイルは、スーツにワイシャツ、ネクタイ、それから革靴(正確には革製ドレスシューズ)が一般的でした。クールビズ以降は、ノーネクタイのワイシャツスタイルが増え、徐々にスーツではなくテーラードジャケットと綿パンも定着しました。
2020年代になり在宅ワークが定着すると、Tシャツにジャケットスタイルも珍しくなくなりました。銀行の営業担当者のような「お固い仕事」と呼ばれるような人々でもワイシャツ・ノーネクタイが珍しくなくなっています。その流れを汲んでか、足元を革靴で固めている人も随分と少なくなり、スニーカーを履いている人や、革靴っぽいスニーカーを履いている人が大幅に増えたと感じます。
これは相当に革靴需要が減っているだろうなと思わずにはいられません。
■革靴は疲れる、メンテナンスが必要で面倒くさい
かくいう筆者自身も長らくスニーカー履きメインの生活スタイルになっています。
もはや説明するまでもありませんが、なぜスニーカー履きの生活になるかというと、革靴と比べると圧倒的に楽だからです。
アッパー素材が主に本革や合皮で作られている革靴は、繊維素材のスニーカーと比べて硬く、また靴幅が狭いことも相まって、履き心地、歩き心地の観点から劣ります。靴底も皮底はもちろんのこと、価格帯によってはゴム底のものもありますが、そのゴム底でさえクッション性ではスニーカーにまったく太刀打ちできません。革靴とスニーカーとで、一日立ちっぱなし、歩きっぱなしの日の足の疲労度は段違いです。
さらにいえば本革を使用した革靴は定期的なメンテナンスが必要で、ブラシで汚れを落としてクリームを塗らないとひび割れたりカビが生えたりする一方で、スニーカーは水洗いできるものが当たり前で、中には洗濯機に入れられるものもあります。
普段使いする「履物」において、楽なほうに流れるのは極めて当たり前の選択です。
■「リーガル」が子会社の解散を決定
このビジネスマンの革靴離れを象徴するような発表が先日ありました。
「REGAL」のブランドで知られるリーガルコーポレーション(千葉県浦安市)が、連結対象子会社で靴製造を担当するチヨダシューズの操業を停止し、解散を決定したのです。チヨダシューズは新潟県加茂市に工場があり、グッドイヤーウエルト製法やマッケイ製法を得意として高級ラインを手掛けていました。
解散理由は、街行くビジネスマンの服装が象徴しているように、革靴需要が減ったためと説明されています。リーガルはチヨダシューズの他に持つ製造会社2社の操業は続けるとのことですが、革靴市場全体の苦境は察するに余りあります。
リーガルは、1万円台から3万円台くらいのシューズを展開しています。比較的買いやすい価格帯の割にはしっかりした物作りをしているという評価の高いブランドで、今の40~70代が若い頃には、就職活動用や就職後の最初の1足として買われたものでした。アウトレットモールなどにも出店しており、今でも愛用している人も多いのではないかと思います。
■厳しさが続くリーガルの決算
そんなリーガルも近年の決算内容は当然厳しく、今回のリストラにつながっているわけですが、2026年3月期第3四半期連結決算は
売上高 158億2800万円(対前年同期比4.3%減)
営業損失 6億6200万円
経常損失 4億8000万円
当期損失 5400万円
と減収赤字になっています。
通期見通しも
売上高 229億円(同2.8%減)
営業利益 5000万円(同87.4%減)
経常利益 2億1000万円(同57.8%減)
当期利益 3億6000万円(同48.6%減)
と減収大幅減益となっています。
個人的には、この通期見通しすら達成できないのではないかと見ています。理由は、4分の3が終わった時点での営業損失が6億6200万円もあるからです。ここから営業赤字を埋め合わせて5000万円の営業黒字に引き上げるには、残る3カ月で7億1000万円強の営業利益が必要となります。達成するのは相当に厳しいのではないでしょうか。
■コロナ禍以降続く「革靴離れ」
11年前の2015年3月期と比べると、リーガルコーポレーションが売上高も営業利益も大きく落としていることがわかります。
2015年3月期の売上高は360億3000万円で、営業利益は20億7700万円となっています。これと比較すると2026年3月期見通しは売上高が36.4%減、営業利益に至っては97.5%減と大きく落ち込んでいることがわかります。
売上高が300億円台を割り込んだのは20年3月期からですが、20年3月末の時点ではまだコロナ自粛は本格化しなかったので、すでに経営悪化の兆候が表れていたといえます。21年3月期以降の大幅減収は明らかにコロナ自粛に拠るものでしょう。ただ、注目すべきはコロナ自粛が解除された24年3月期、25年3月期も売上高は300億円まで回復せず、微増にとどまっています。これは完全に革靴の需要自体が減少していることを表しています。
その最大の原因は先述した「ビジネスマンの革靴離れ」と、スニーカーへの切り替えにあるといえます。
■靴市場の半分以上を占めるスポーツシューズ
ここで、靴市場全体の推移についても見てみたいと思います。
矢野経済研究所の靴・履物小売市場規模統計によると、国内の市場規模は2015年度の1兆4150億円をピークに徐々に下がり始めています。
コロナ自粛が原因で激減した2020年度以後、22年度まではその影響が強く出て市場規模は低迷しています。自粛解禁となった23年度は1兆2265億円まで回復しますが、24年度、25年度はほぼ横ばいに終わっています。ここ数年の物価上昇率を考慮すると、売り上げ規模が横ばいになるのは、相当に売れ行きが鈍いと考えられます。
このように靴・履物全体の市場規模は低空横ばいを続けているわけですが、内訳を見るとすべての靴・履物の売れ行きが落ちているわけではありません。
調査では、紳士靴・婦人靴・スポーツシューズ・子供靴・その他の5つに分類され、メンズビジネスシューズは紳士靴に含まれています。
2019年に紳士靴の売上高は1677億円(前年比8.5%減)、スポーツシューズは6827億円(同1.5%増)で最大の売り上げ規模でした。ちなみに婦人靴は2581億円(同9.0%減)、子供靴が952億円(増減なし)、その他1330億円(同0.2%減)と、スポーツシューズの売り上げ規模が全体の半分以上を占めており、この頃から群を抜いて大きいことがわかります。
■コロナ禍でもスニーカー需要は底堅かった
構成比で見ると、スポーツシューズの構成比はコロナ自粛が始まった2020年度でも上がっており、それ以降毎年度上昇し続けています。2020年度のスポーツシューズの売上高は前年比16.0%減の5735億円と大きく減っていますが、売り上げ構成比は53.7%と、前年の51.1%から2.6ポイント高まっています。
紳士靴は前年比29.0%減の1191億円、構成比はわずかに11.1%とすさまじい落ち込みを見せています。コロナ自粛の状況においてもいかにスニーカー需要が底堅かったかがうかがえます。
そして、昨年11月に発表された2024年度の市場規模統計によると、紳士靴売上高は前年比0.5%増の1361億円(構成比11.0%)と微増の回復を見せていますが、スポーツシューズは売上高が前年比1.4%増の7137億円と伸びており、構成比は58.0%にまで高まっています。スポーツシューズの24年度売上高がコロナ前の19年度を上回っているのに対して、紳士靴は19年度を300億円以上下回ったままです。
24年度の市場総額が1兆2367億円と19年度の1兆3367億円を大きく下回ったままなので、いかにビジネスマンの「革靴離れ」が顕著で、彼らが代わりにスニーカーを履くようになったかがわかるでしょう。スポーツシューズの構成比は近い将来60%を必ず超えると考えられます。
■革靴はマニアの「趣味の逸品」に……
これらのデータからも明らかなように、靴市場全体と紳士靴、ひいてはメンズビジネス靴(通称:革靴)の売上高が縮んでいるにもかかわらず、スニーカーの売上高は増え続けています。
今後、服務規程やライフスタイルの回帰でも起こらない限り、従来型のメンズ革靴の需要が回復する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。完全消滅することはないでしょうが、縮小均衡で落ち着くでしょう。
ビジネススタイルのカジュアル化がますます浸透し、スニーカー着用者は増え続ける流れは止まりそうにありません。最近では、従来型革靴を着用するシチュエーションでも、見た目は従来型の革靴なのに高いクッション性などの機能性を備えた「革靴型高機能商品」を選ぶ人が増えています。
アシックス商事が展開している「テクシーリュクス」などがその一例として挙げられます。そのアシックスは他にも、「オニツカタイガー」やランニングシューズの好調が奏功し過去最高の売上高を更新しています。業界全体のシュリンクなどどこ吹く風です。
今後、従来型の革靴はコアなファン層が愛でる趣味の逸品として細々と命脈をつなぐのではないかと見ています。
----------
南 充浩(みなみ・みつひろ)
ライター
繊維業界新聞記者として、ジーンズ業界を担当。紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを取材してきた。
----------
(ライター 南 充浩)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
