※本稿は、藤田田『起業家のモノサシ』(KKベストセラーズ)の一部を再編集したものです。
■生ぬるい「清潔さ」では我慢ができない
マクドナルドには「Q・S・C」という三本柱がある。
「Q」は“QUALITY”(クオリティ)、つまり品質である。いい品を売ることを私たちは「バリュー(価値)を売る」と言うが、その価値あるいい品こそ、誰にも誇れるクオリティがあるものなのだ。ハンバーガーも、まずクオリティに価値があることが要求される。
「S」は“SERVICE”(サービス)。これは文字通り、お客さまに気持のよいサービスを提供することである。そして、三本目の柱が「C」、つまり“CLEANLINESS”(クレンリネス)、清潔さなのである。
マクドナルドでは、とくに「清潔さ」に関しては万全を期している。食品衛生法では一定の基準があって、ごく微量の大腸菌は容認しているが、私は常に「ゼロ」を要求し、また事実、マクドナルドでは大腸菌ゼロを誇りにしている。
許容範囲内、などという生ぬるい「清潔さ」では我慢ができないのだ。
■銀座のホステスがマクドナルドをほめたワケ
マクドナルドでは手の洗い方にもマニュアルがある。
手を洗う場合、水道の水だと10秒間洗わなければ、バイ菌がきれいに落ちない。しかも、バイ菌がもっとも多くつくのは、爪の間である。そこで、マクドナルドは従業員に爪の洗い方から手の洗い方、逆性石鹸の使い方まで教え、その通りに洗うようにきびしく要求している。
医師は手術前に手を消毒すると、決して手術器具以外はつかもうとしない。口に入れる物を販売する者は、この医師のやり方を見習うべきで、商品以外にはさわってはならない。
あるとき、銀座のクラブで飲んでいると、そこのホステスから、「マクドナルドは非常にいい」とほめられた。
私の家は大井町で、職業上、いつも帰宅は夜中だけど、何時に帰っても駅前のマクドナルドはあかあかと電気をつけて掃除をしているの。あれはとても気持がいいわ」と言うのである。
日本のレストランは、終業時間が来ると、さっさと店を閉めて帰ってしまうが、マクドナルドでは終業後に清掃マンが二人一組で出勤して、夜通し清掃をするのである。あかあかと電気をつけて清掃をするのは、決して演出ではないが、これを見た人は、必ずといっていいほどマクドナルドに信頼感を抱いてくれる。
この清掃もマクドナルド商法の一貫したシステムのひとつである。
■「スマイル」こそ、金儲けの原理原則
「マクドナルドの店員さんは実に愛想がよろしい」というおほめの言葉をいただくことが多い。レストランや食堂の従業員がつっけんどんになっている昨今だけに、マクドナルドの従業員の笑顔での応対は、ことさらにお客の心をとらえるようだ。
経営者としては、鼻が高い。じつは、これにも仕掛けがある。マクドナルドの各店のキャッシュ・レジスターの下には、必ず、「スマイル」と書いてある。
従業員が売上げ金をレジスターに入れたり、釣銭を出すとき、いやでもこの文字が目に入るようになっている。そこで、従業員も自動的に笑顔で「ありがとうございます」という。
この方法は、マネージャーが、「お客さんにはニッコリしなさい」と百万遍教育するよりは効果がある。おそらく、マクドナルド以外のレストランや小売店で、キャッシュ・レジスターに「スマイル」と書いてある店は日本には一軒もないだろう。
■笑顔に誘われて、つい買ってしまう
笑顔で商売をすれば、必ず客はふえる。好感を持たれるからだ。健全なる肉体に健全なる精神が宿るように、笑顔の店には金が宿る。
マクドナルドでは、ちょっとでも店の前に通行人が立ちどまると、若い女性の従業員がニッコリ笑って、「おひとついかがですか」とすすめる。
すすめられた客は笑顔に誘われて、ついふらふらと買ってしまう。これも笑顔の勝利である。その笑顔は、マクドナルドのハンバーガーに従業員一人ひとりが絶対の自信を持っているから、ごく自然に出てくる。
彼女たちは、こんなに安くてこんなにうまいものを食べなければ損だと心から思っているから、優しく笑顔ですすめるのだ。
■「日本人は英語に弱い」コンプレックスをつく
ハンバーガーを買いにくるお客さんは全部が全部店頭で立ち食いする人ばかりとは限らない。
中にはお持ち帰りになる人もいる。そのために、焼き上がったものはその場で包んでお客さんに渡すようにしている。焼き手と包む店員はそれぞれ作業を分担しているが、マクドナルドの従業員は「できたぞ、包んでくれ」と日本語では言わない。
「ラップ・アップ・プリーズ!」と叫ぶ。つまり、英語を使うのだ。私は店員同士のやりとりは、すべて英語でやるように、と教育している。
若い女性客などは、店員同士の英語のやりとりを、うっとりした目で聞いているのだ。それだけで、外国へ来たような気分になるのである。こうした効果を考えて、私は、あえて従業員に英語を使うことを要求している。
というのも、日本人は、元来、英語に弱い。語学コンプレックスは、とりもなおさず、外国人コンプレックスにつながる。そうすると、奇妙なことに、外国人の食っているものは、うまそうに思われてくる。
■日本人にとってもプラスになる
マクドナルドのハンバーガーは、もともと外国人の食物であるが、それだけに日本人の外国人コンプレックスをつくとよく売れる。従業員に使わせる英語は、日本人の外国人コンプレックスをつく小道具なのだ。
事実、マクドナルドにやってくる外国人客は多く、それがまたとない宣伝になって、つりこまれて日本人が買うケースも多い。
「英語を使え」と私が店員に要求するのは、つまり、日本人のコンプレックスをつけ、ということである。コンプレックスをつけば儲かるのである。
それも、ただ、私だけが儲かるのではない。私は儲かるが、ハンバーガーに馴れることで、お客さんは外国人の食べものに馴れていく。ハンバーガーという外国人と同じものを食べ続けることで、外国人コンプレックスが薄れていく。
これは日本にとっても、お客さん自身にとってもたいへんなプラスになる。外国人コンプレックスから抜け出すことで視野も広くなるだろうし、考え方にも柔軟性が出てくる。発想法も島国的なものから国際的なものへと飛躍していくだろう。
そうした国民全体の大きな利益の前には私の儲けなどは微々たるものである。私は冗談でこんなことを言っているのではない。真面目も真面目、大真面目である。私は国民の利益向上を信じて、ハンバーガーを売りまくっているのである。
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藤田 田(ふじた・でん)
日本マクドナルド創業者
1926年大阪生まれ。旧制北野中学、松江高校を経て、1951年東大法学部を卒業。在学中GHQの通訳を務めたことがきっかけで「藤田商店」を設立、学生起業家として輸入業を手がける。1971年、米国マクドナルド社と50:50の出資比率で「日本マクドナルド(株)」を設立。同年7月、銀座三越1階に第1号店をオープン。そこからハンバーガー旋風を巻き起こし日本人の食生活を変えていく。「価格破壊」など革新的な手法を次々と展開した。のちに「日本トイザらス」も設立。2004年没。孫正義氏、柳井正氏ら、日本を代表する企業を率いる経営者たちに影響を与えたとされる。『ユダヤの商法』『勝てば官軍』など著作多数。
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(日本マクドナルド創業者 藤田 田)

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