■「大ヤンキー展」に令和人が心酔する理由
「ほら、ウンコ座りはこうやるんだぞ」
「え~お父さんダサい~」
さいたま市の大宮マルイで2月半ばまで開催された「大ヤンキー展」の会場は、想像以上に賑わっていました。中には元ヤンキーのオーラを漂わせるファミリーも。父親に誘導されて、フォトスポットでヤンキーのウンコ座りポーズをとった小学校低学年の息子に対し、「ヤンキーはピースしないから」と、お母さんの指導が入ります。それを見て、1970~80年代に盛り上がりを見せたヤンキーカルチャーが、令和の今も連綿と続いていることに不思議な感動を覚えました。
昨今のヤンキーはマイルド化していると言われますが、それだけ裾野が広がり、日本人のヤンキー率は潜在的にかなり高いのでは、と思わされます。
現に映画やドラマなどヤンキーコンテンツは一定の需要があり、最近ではMEGUMIプロデュースの恋愛リアリティ番組『ラヴ上等』がNetflixの視聴者ランキングのトップを独走。早くもシーズン2の制作も決定しています。
元ヤンだったというMEGUMIが「感情の表現や伝え方、日頃のコミュニケーションが複雑化する現代、ド直球なキャラクターが必要」という思いを込めてプロデュース。
ヤンキーの男女が共同生活し、お互い威嚇し合いながら恋愛ドラマを繰り広げます。ちょっと目が合っただけで喧嘩が勃発したり、「日本刀ある?」といった地上波では流せない物騒な言動が飛び出したり、タトゥーや刺青アピールが激しかったり、理性やモラルを超越した展開が刺激的です。
コンプライアンスやハラスメントまみれで息苦しい現代、自由でワイルドで本能的に生きる彼らに憧れが集まっているようです。
炎上しないように、コンプラに抵触しないように、当たり障りのない言動を心がけている現代人に喝を入れる内容です。ちなみに会場には『ラヴ上等』出演者で上半身のタトゥーの「おとさん」こと乙葉のサインもあり、彼女のSNSを見て来たという女性客もいたようです。
■昭和女性をエンパワーメントしていた
「大ヤンキー展」の会場が大宮というのがまた絶妙でしたが、郊外出身で昭和生まれで一瞬ヤンキーに憧れたことがある人は実は多いのではないでしょうか。
私の小学校時代も、イケてる人、目立っている人はヤンキーから声がかかっていて、茶髪で後ろ髪が長めの小学生男子や、小学生なのに色っぽい不良系女子がかっこよく感じられました。通っていた埼玉の公立小学校は、一つ上の女番長が仕切っていると噂でした。
この大ヤンキー展でもスケバンという存在に触れていましたが、レディースの総長や女番長が普通に君臨していたことを思うと、ヤンキー文化はジェンダー差別がなく、女性をエンパワーメントしているように思います。
展示には「『ヤンキー』の軌跡~反骨と美学の変遷~」と題された年表も掲示されており、充実していました。日本の不良文化のルーツは明治・大正の「バンカラ」にあり、1970年代、「硬派なバンカラスタイル」「洗練されたロックスタイル」の2つの潮流に分かれ、それが混ざり合いながら後のヤンキー文化に発展したそうです。
80年代「ツッパリブーム」を経て、厳しい管理教育への反発エネルギーが爆発。「ヤンキー」という言葉が広がりました。そして『積木くずし』『爆発!暴走族』『不良少女とよばれて』『スクール★ウォーズ』『ビー・バップ・ハイスクール』『湘南暴走族』『ホットロード』『魁‼男塾』『今日から俺は‼』など数々の名作ドラマや映画、小説、漫画がヒット。
■「我が魔暴露死よ永遠に…」
会場には、ボンタンや潰しカバン、学生服の改造裏ボタン、ロングスカートなどのヤンキーアレンジの制服コーナーに続いて、『ラヴ上等』で暴走族の元総長たちが着ていたような特攻服の展示もありました。
「生きて死んでいるより死ぬまで熱く生きてみたい」
「たとえ我身が散ろうとも 男は死して名を残す 我が魔暴露死よ永遠に…」
「だまって俺についてこい」
といった熱い詩が刺繍されていました。ダサいが一周回ってクールに見えてきます。
単車展示コーナーは埠頭をイメージした照明の演出で、刹那的な雰囲気が盛り上がります。そして昭和のヤンキーの部屋を完全再現したコーナーもかなりリアルで来場者が見入っていました。
和室に、renomaやBudweiserのロゴ入りクッション、パイプベッド、微妙なセンスののれんや掛け軸、コカコーラのケースに置かれたブラウン管のテレビ、カセットテープケース、金属バット、灰皿やお酒の缶などが雑然と置かれていました。
ヤンキー道を突き進んでいる住人の姿が目に浮かびます。スマホもネットもなかった時代に、これだけディープな世界観を確立していたヤンキーのスタイルに圧倒されます。
■阿離我妬、陀異守鬼、摩武駄致、頼美魔洲…
会場には、
「先入観や世間のイメージという『色』は、入り口で外してしまいましょう。目の前にあるそノを、ありのままに見て、感じて、笑ってください。
というヤンキー愛のこもったメッセージも掲げられていました。
ヤンキーの暴力や犯罪行為は肯定できませんが、当時は怖かった不良やヤンキーの文化を、こうしてツッコミを入れたり、笑ったり、懐かしみながら鑑賞できるのは感慨深いです。それでも会場に元ヤンっぽいお客さんがいると、目を合わさないように、あまり失礼な言動はしないようにと気を遣ってしまいますが……。
制服のアレンジや特攻服のポエム、インテリアなど、ヤンキーのクリエイティビティには改めて驚かされました。中でも「愛羅武勇」「仏恥義理」などの当て字のセンスに痺れました。ちなみにこのイベントで一番売れたグッズはこうした当て字入りのステッカーやライターでした。
「ヤンキー漢字ドリル」コーナーもありましたが、「摩武駄致(まぶだち)」「阿離我妬(ありがとう)」「鬼魔愚零(きまぐれ)」「陀異守鬼(だいすき)」「頼美魔洲(たのみます)」「愚怒(グッド)」「巣魅魔戦(すみません)」「巣愚威苦(すぐいく)」など、ChatGPTでも生成できなさそうなボキャブラリーの数々に圧倒されました。
何より、これだけの漢字を書けるというのもすごいです。スマホ変換が当たり前の現代人はおそらく書けない難しい漢字だらけです。生命力、個性、本気度、強さ、情熱、さらに漢字能力など、今の人が失いつつあるものを持っているヤンキーへのリスペクトが高まります。
今回のような展示やドラマの効果で、ヤンキーに憧れる人が増え、ヤンキーはいつまでも滅ばないで一定数を保っていくのでしょう。
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辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)
漫画家/コラムニスト
武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。
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(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)

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