脳をいい状態に保つにはどうすればいいか。脳内科医の加藤俊徳さんは「何かを深く考え続けていると、脳の切り替えができないことが表情に出て、自然と笑わないで近寄りがたい人になる。
このようなときに、自分でできる簡単な脳コンディショニングがある」という――。
※本稿は、加藤俊徳『脳は右から若返る』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■悩み事で一晩中脳が刺激されて疲れる
あなたにも経験があるのではないでしょうか。会社でいやなことがあった、仕事がうまくいっていない、恋人から別れ話を切り出されたなど、悩み事を抱えていると悶々として、深い睡眠ができません。
そうすると当然、朝を新鮮な気持ちで迎えることはできません。それは睡眠中でも思考がオフにならない、つまり脳の働きを止められず、一晩中、脳が刺激されて疲れているからです。
前日までの出来事記憶がいったん整理されリフレッシュした状態でないと、朝を気持ちよく迎えられません。
夜、深く眠ることによって脳の作業記憶の働きが遮断され、1度オフになります。このオフがうまくできないと、気持ちよく眠れません。オンとオフ、つまり1日のメリハリがつかないと、脳は疲れてしまうのです。
睡眠によって外部刺激や外部情報からシャットダウンされた脳は、その間に昼間取り込んだ情報の整理をしたり休んだりしています。そうしないと、起きているときに脳がうまく機能しなくなるのです。

■何かを深く考え続けると近寄りがたい人に
ですから、朝が気持ちよく迎えられないのは、感情系、記憶系が活性化しすぎて、思考系の働きが止まらなかったためで、その部分のコンディショニングが必要なのです。
また、このオンとオフの切り替えがうまくいかないと、人間関係がギクシャクすることがあります。
以前、机に向かって難しいことを長い時間考えていたあとに、友人と待ち合わせしたときのことです。
とても険しい顔をしていたようで、
「そんな恐い顔をして、何かあったの?」
と、まるではれものに触るように話しかけられたことがありました。何かを深く考え続けていると、自然と笑わない人、そして、近寄りがたい人になっていきます。
つまり、それ以前にしていた脳の使い方に影響されて、脳の切り替えができていないことが、表情に出てしまうわけです。
このようなときは、「自分で自分に笑いかける時間をつくる」ことで切り替えが可能です。笑うことも立派な脳コンディショニングなのです。
■脳は使うだけでなく、休ませるのが重要
脳を休めることは重要です。たとえば、思いっきり歯を食いしばってみてください。何秒続きますか? おそらく、5秒くらいで徐々に力が弱くなっていくでしょう。これは、口を動かす運動系脳番地が疲れることで生じるものなのです。
ですから、少し休めば、再びしっかり噛めるようになります。
プロのアスリートが激しいトレーニングのあとにストレッチやマッサージをしているように、脳のコンディショニングは運動後の整理体操のようなものだと考えています。筋肉と同じで、脳も使うばかりではよくありません。要はメリハリが大切です。
筋肉や関節は、多くの人が積極的に休めたほうがいいという意識をもっていますが、脳に対してはあまり意識していない人が多いのが現状です。
筋肉と同じで、脳も使うばかりではよくありません。要はメリハリが大切です。よいパフォーマンスを発揮するために、使ったら十分休めることにフォーカスしてください。
1日の仕事のなかで、集中度合いが高いほど脳(特に思考系)を強く使うので、理想としてはその都度、脳を休めることができれば、より良好な状態を維持できます。
■理解できないことには必ず腹を立てる
あなたは最近、いつ怒りましたか? 怒ったとしたら、何に対して、どうして怒ったか思い出してみてください。
「何言ってんの?」

「わけ、わかんない!」

「意味わかんない!」

「信じられない!」
おそらく、怒ったときにこのような言葉が頭に浮かんだり、口にしたりしたのではないでしょうか。これらの言葉に共通しているのは、相手の言っていること、やっていることが理解できない、という意味でしょう。

理解系脳番地と感情系脳番地はリンクしているため、人は理解できないことに対しては必ず腹を立てます。白熱した討論でも路上の小競り合いでも放たれる、「何言ってんだ!」という「怒りの言葉」が、そのことを端的にあらわしています。
では、「理解」とはなんでしょう? たとえば耳が遠くなると「何言ってんだ!」という反応をします。ということは、頭が悪くて理解できないというだけではなく、入力系が十分に働かないとストレスになり、怒りの原因になるわけです。
また、歯が痛い、腰が痛いなどというときに出席した会議。そんなときに自分の意見と異なる意見を聞くと、怒りやすくなります。
その理由は、自分の思考系脳番地がすでにほかのこと(痛み)で占められているからです。会議で建設的な発言をしようとしているのに、思考系の9割が「歯が痛い」とか「頭痛がする」などで満たされてしまいます。「歯が痛くて考えに集中できない」という経験をした方も多いのではないでしょうか。
つまり、じっくりゆっくり考えるスペースが脳内にないと怒りやすくなるともいえるでしょう。
■怒り=頭の悪い状態
見方を変えると、怒っているときは、すでに思考系脳番地に余計な酸素消費が起こり、実際に働くべき理解系脳番地を効率よく使えない状態です。
つまり、脳の酸素効率が悪くなっている状態といえます。
頭が適切に働いていない状態、頭が悪くなっている状態です。
ですから、怒ったら「自分は今、頭が悪くなっている」と考えましょう。
自分の体調などによって、頭のいい状態と悪い状態が存在するということです。脳のバランスがとれていない状態・怒りやすい状態=頭の悪い状態なのです。
その最たるものが、いつも怒って人の話を聞かない人です。年を取ると怒りっぽくなるといいますが、それは自分で自分を頭の悪い状態にしているということになります。
そういう意味での「頭の悪い人」はいるわけですが、それは厳密にいうと「頭が悪い状態」ということです。
頭がいいと思われる人でも、怒りのために無駄に酸素を浪費して、頭が悪い状態になることもあるわけです。実際に、怒りを抱えている人の脳を計測すると酸素消費が思考系脳番地で増加して、脳の使い方のクオリティが悪くなっていることがわかります。
一方、笑いでは、思考系脳番地に酸素が充満しているので、柔軟な対応ができる思考の準備が整っていることがわかります。
頭をいい状態に保てないのは、認知症が進行している場合もありますが、忙しい、疲れている場合などは、自分でコンディショニングできるはずです。
ですから、私たちは頭のいい状態にしておくよう心がけることが大事です。
頭をいい状態にするために必要なのが、脳のコンディショニングです。
そうすれば、頭のいい状態でテストに臨むこともできますし、頭がいい状態で物事を考えればいい仕事もできるようになるでしょう。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、加藤プラチナクリニック院長

新潟県生まれ。医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。
ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後、帰国後、慶應義塾大学、東京大学などで脳研究に従事し、「脳の学校」(https://www.nonogakko.com/)を創業。
現在、「加藤プラチナクリニック」を開設し、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、脳の成長段階、得意な脳番地不得意な脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳トレ処方を行う。著書には、『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『50歳を超えても脳が若返る生き方』(講談社)など多数。

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(脳内科医、加藤プラチナクリニック院長 加藤 俊徳)
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