※本稿は、深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■血液型ごとに感染リスクが異なる
近年でもっとも話題になった感染症といえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)です。世界的なパンデミックに陥ったこの感染症が私たちに教えてくれたことの1つが、「血液型による感染や重症化のリスクの違い」でした。
「O型の人は感染しにくく、重症化もしにくい」「A型の人は感染しやすく、重症化もしやすい」――くり返しになりますが、これは決して占いや性格診断の話ではありません。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの初期から、「血液型と感染しやすさ・重症化のしやすさに関係があるのではないか」と考えられ、世界じゅうで調査・研究が行われてきました。
そのなかで、この傾向が見えてきたのです。2020年に『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された研究では、呼吸不全を起こした重症患者約1900人を詳細に分析しています。その結果、A型の人はO型の人に比べて重症化リスクが約1.45倍も高く、反対にO型の人はリスクが0.65倍と低いことがわかりました。
また、複数の研究をまとめた2022年の報告では、O型の人と比較した感染しやすさを示すオッズ比(統計学で使われる、リスクの高さを表す指標)が明らかになりました。
A型で1.29倍、B型で1.15倍、AB型で1.32倍――つまり、O型を基準とすると、ほかの血液型の人たちはみな、新型コロナウイルスに感染しやすかったのです。
■AB型の意外な弱点
日本では、「コロナ制圧タスクフォース」として、全国の病院が協力して約2400人の新型コロナウイルス感染症の日本人患者データを詳細に分析しました。
すると、基本的な傾向は世界と同じ――A型の人がO型の人より感染しやすいという結果でした。しかし、酸素吸入や人工呼吸器を必要とするもっとも重篤な症状のケースを分析したところ、AB型の人の重症化リスクが、O型の人と比べて約1.84倍も高かったのです。
これは、年齢や基礎疾患など、ほかのリスク要因を考慮しても変わらない数値でした。世界的には「A型が高リスク」とされてきましたが、どうやら私たち日本人では、AB型の方が重症化しやすい可能性があるのです。
だからといって、AB型のみなさんが落ち込む必要はありません。血液型の違いは、年齢や基礎疾患といった要因ほど大きな影響は及ぼしませんし、O型の人も感染対策を怠っていいわけではありません。適切な感染対策こそが、何よりも大切なのです。
■スパイクタンパク質――ウイルスの「侵入兵器」
新型コロナウイルス感染症の感染や重症化のリスクにおいて、なぜこのような血液型による違いが生まれるのでしょうか。その謎を解くために、ウイルスの表面に注目してみましょう。
新型コロナウイルスの表面には、「スパイクタンパク質」という針状の突起があります。その名のとおり、サッカーシューズなどについているスパイクと同様に、細胞と結合する際の滑り止めとして働いています。
では、新型コロナウイルスには、スパイクタンパク質がどのように存在しているのかを見ていきましょう。
インフルエンザウイルスにもスパイクタンパク質はありますが、比較的硬く、動きに柔軟性がありません。しかし、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質には「関節」ともいえる部位が3つもあり、それを活かして自由に動き回ることができるのです。
まるで触手のように細胞表面を探り回り、複数のスパイクが協力して1つの細胞に取りつくことも可能です。
■新型コロナウイルスは「進化したウイルス」
スパイクタンパク質の構造をくわしく見てみましょう。
先端から3分の1程度が「S1サブユニット」、残りの3分の2が「S2サブユニット」です。S1サブユニットの先端には「受容体結合ドメイン(RBD)」があり、ここがヒトの細胞膜にある「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)受容体」に結合します。
また、S2サブユニットは、ウイルスと人間の細胞膜を融合させる役割を担っています。ACE2とは、2000年に発見された酵素タンパク質で、おもに血圧調節や臓器保護に関与しています。そのACE2を受け止めるのがACE2受容体です。
ACE2受容体は、喉や肺のほとんどの細胞表面に存在し、新型コロナウイルスにとっての呼吸器系の「入り口」となっています。
重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルス(SARS-COV)も、新型コロナウイルスと同じようにACE2受容体に結合しますが、新型コロナウイルスの結合力はこれよりも2~4倍も強いとされています。
■新型コロナは「A抗原が大好き」
新型コロナウイルスがRBDでACE2受容体と強力に結合すると、次の段階が始まります。呼吸器細胞の表面に大量にある「TMPRSS2」というタンパク質分解酵素を利用し、S2サブユニットの特定部位を切断するのです。
するとそこから、ウイルス内部にある疎水性アミノ酸(水を嫌う性質のアミノ酸)が露出します。これらのアミノ酸は、もっとも近くにある人間の細胞膜の中へと速やかに潜り込みます。
そして、長く伸びていたスパイクタンパク質が折り畳まれ、ウイルスと細胞膜がジッパーを閉じるように融合するのです。これが新型コロナウイルス感染の瞬間です。このような経緯で感染が起こるのですが、じつはこの時点で、血液型による違いが見られます。
B型やO型の人がもつ抗A抗体が、新型コロナウイルスのRBDとACE2受容体の結合を阻害している可能性があるのです。
一方、A型の人が感染しやすい理由も分子レベルで解明されています。研究によると、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質にあるS1サブユニットは、A型赤血球に強く結合することがわかりました。
なお、B型には中程度、O型には弱い結合しか示しません。
つまり、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は「A抗原が大好き」なのです。そのため、A抗原をもつA型(またはAB型)の人は、ウイルスにとって格好の「標的」となってしまう、というわけです。
これらを併せて考えると、やはり「新型コロナウイルスにはO型が強く、A抗原のあるA型(とAB型)が弱い」といえるのです。
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深瀬 浩一(ふかせ・こういち)
大阪大学名誉教授
1960年、岡山県生まれ。大阪大学大学院博士後期課程修了・理学博士。大阪大学大学院理学研究科教授、理学研究科長、大阪大学理事・副学長、大阪大学総長参与を歴任。2025年、大阪大学名誉教授。専門は糖質化学、有機合成化学、生体分子化学。2025年4月より、大阪大学放射線科学基盤機構特任教授として、自然免疫活性化分子・ワクチン・新規免疫療法の開発ならびにがんの核医学治療研究を進める。
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(大阪大学名誉教授 深瀬 浩一)

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