※本稿は、深瀬浩一『血液型でわかる 病気とケガのリスク』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■O型の「重症化しにくさ」の理由
「O型は新型コロナウイルス感染症に強い」と述べてきました。
O型には新型コロウイルスの「感染のしにくさ」以外にも、「感染症で重症化しにくい」という特徴があります。そこには、「O型の血栓のできにくさ」が関わっています。
新型コロナウイルス感染症による重症化では、血管内に血栓(血の塊)ができることで脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓といった、血栓が血管を塞ぐことで起こる「血栓症」を引き起こしやすいことがわかっています。
実際、重症患者の約3割に、血栓症が見られるという報告もあるほどです。
血栓症が起こる要因の1つに「サイトカインストーム」があります。サイトカインとは、おもに免疫細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を担います。現在、数百種類のサイトカインが発見されていますが、いずれも微量で強力な効果を発揮するのが特徴です。
通常、ウイルスに感染すると、免疫システムは特定のサイトカインを分泌して脳の発熱中枢を刺激します。すると皮膚の血管が収縮して汗腺が閉じ、体の熱が外に逃げずに体内にこもるようになります。
つまり、発熱するのです。
■免疫の暴走が起こり、血栓が形成される
しかし、免疫システムがウイルスを抑えきれないと、サイトカインが過剰に分泌され、「サイトカインストーム」という免疫の暴走が起こります。
サイトカインのなかでも「炎症性サイトカイン」は、患部の炎症を促して免疫細胞を活性化させますが、必要以上に分泌が続くと炎症が止まらず、身体に深刻なダメージを与えます。また、サイトカインストームが起こると、血液の凝固異常が発生し、血栓が形成されます。
その結果、心筋梗塞や肺塞栓、脳梗塞、下肢動脈塞栓などの血栓症が生じるのです。
2020年にイギリスの医学雑誌『ランセット』に掲載された仮説では、新型コロナウイルス感染症の感染初期の時点で、ウイルスが肺を通じて血液内に入り、血管を直接攻撃して血栓をつくる可能性が指摘されています。
これが事実なら、サイトカインストームが起きていない軽症段階でも、血栓による心筋梗塞や脳梗塞が起こり得るのです。
■血栓ができないと出血が止まらない
ここまでの説明だと、血栓は「とても悪いもの」に思えるかもしれませんが、じつはそうとは言い切れないのです。もともと血栓は、出血した際に止血をするうえで欠かせないものの1つであり、血栓ができないと出血が止まらなくなってしまう可能性があります。
たとえば、血管が切れたり傷ついたりすると、血液中の「フィブリノーゲン」というタンパク質が反応し、「フィブリン」という糸状の物質に変化します。ここに血小板や赤血球が絡みついて血栓ができ、血管を塞ぎます。
つまり、血管の傷をカバーするために生じるのが血栓ということです。
一方で、血栓が不要になったあとには、フィブリンの糸を溶かして分解し、血流を元に戻すしくみが働きます。そして通常は、この「固める力」と「溶かす力」が、絶妙なバランスを保っているのです。
ここまでであれば、血栓は「よい働き」をしているのですが、血栓が何らかの原因で大きくなったり、血栓が剥がれて細い血管へと流れていったりすると、血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気を引き起こしてしまいます。
■「O型の血栓のできにくさ」の正体
ヒトの身体のしくみとして欠かせない血栓の形成には、先ほどの説明で挙げたフィブリノーゲン以外にも、多くのタンパク質が関係しています。これらは「血液凝固因子」と呼ばれ、現在では12種類が確認されています。
加えて、血液中に含まれる「フォン・ヴィルブランド因子(vWF)」というタンパク質も、止血に関係しています。vWFは、けがなどで血管が傷ついたときに、まず血管の内側に付着し、そこに血小板を集めて血栓をつくる働きをします。
じつはこのvWFは、血栓のできやすさに大きく関わるものなのです。一般的に、vWFの量が多いと血栓ができやすく、逆に少ないと血栓のリスクが下がることが知られています。
そして、O型の人は、このvWFの量がほかの血液型の人よりも少ないのです。平均すると、O型はほかの血液型(A型・B型・AB型)に比べて、vWFの血中濃度が25%程度低いとされています。
さらに最近の研究で、vWFの分解速度が血液型によって異なることもわかってきました。O型の血液中では、vWFが比較的早く分解されてしまうのに対し、A型・B型・AB型の人では分解されるスピードが遅くなります。
出血によって血栓ができたとしても、O型の人においては止血後すみやかにvWFが分解され、血栓が解消される、ということになります。さらに、vWFの合成スピードには血液型による差がないため、結果的にO型の人はvWFの量が相対的に少なくなるのです。
これに加え、O型の人は、先述した血液凝固因子の1つである「第Ⅷ因子」も、ほかの血液型と比べてやや少ないことが知られています。
ほかの血液型の血液に比べ、O型の血液では、第Ⅷ因子の量が70~80%程度とされ、こちらについても血液の凝固しにくさに影響している可能性があります。
血栓がつくられにくければ、たとえ新型コロナウイルス感染症に感染したとしても、血栓症になりにくい――つまり、重症化しにくいということです。これがO型の重症化リスクの低さの大きな理由といえるでしょう。
■遺伝子レベルで判明した血液型の影響
新型コロナウイルス感染症における血液型ごとの傾向は、じつは遺伝子解析でも裏づけられています。
ドイツの研究チームは、感染が深刻だったイタリアとスペインの7つの病院で大規模な調査を行いました。2020年に発表された研究では、呼吸不全を起こすほど重症化した1980人の患者の遺伝子情報について、「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」を実施しました。
このGWASとは、人間の全ゲノム(遺伝情報全体)を対象に、特定の病気や体質に関連する遺伝子領域を探し出す手法です。この解析の結果、「3q21.31」と「9q 34.2」という2つの遺伝子領域が、重症化リスクに関係していることが明らかになりました。
このうち、「9q 34.2」は「血液型を決める遺伝子のある場所(遺伝子座)」そのものです。つまり、重症化リスクを左右する遺伝子の一部が、血液型と深く結びついていたのです。
この研究では、A型の人はほかの血液型よりも重症化しやすく(リスク1.45倍)、O型の人は重症化しにくい(リスク0.6倍)と、血液型によってリスクが違うことが示されました。
この結果から、新型コロナウイルス感染症に関しては、遺伝子レベル――つまり、生まれつきといえるレベルで「かかりやすさ」「重症化しやすさ」が決まっているのではないか、と考えられるのです。
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深瀬 浩一(ふかせ・こういち)
大阪大学名誉教授
1960年、岡山県生まれ。大阪大学大学院博士後期課程修了・理学博士。大阪大学大学院理学研究科教授、理学研究科長、大阪大学理事・副学長、大阪大学総長参与を歴任。2025年、大阪大学名誉教授。専門は糖質化学、有機合成化学、生体分子化学。2025年4月より、大阪大学放射線科学基盤機構特任教授として、自然免疫活性化分子・ワクチン・新規免疫療法の開発ならびにがんの核医学治療研究を進める。
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(大阪大学名誉教授 深瀬 浩一)

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