■日本の主要メディアが報じない「エプスタイン文書」
イランへの攻撃でトランプ大統領は一息ついたのかもしれない。彼はつい先日まで今世紀最大のスキャンダルで追い詰められていたからだ。
「エプスタイン文書」である。
なぜか日本のメディアは、この文書がどういう意味を持つのかを詳しく報じていない。エプスタインと親しかった「アンドルー元王子が逮捕された」「世界的経済学者のローレンス・サマーズが、ハーバード大学の教授職を辞任した」という単発報道ばかりで、エプスタインという人間がやっていた「犯罪行為」がいかなるものだったのかは報じていないように思う。
さらに、この文書がトランプ政権崩壊につながる可能性についても、アメリカの報道をそのまま報じるだけだ。独自取材をしようという報道機関は、私が知る限りないようである。
この国のメディアは元々、権力者に対しては弱腰である。中でも世界最強といわれるトランプ大統領に関する疑惑など報じることはできないということなのだろうか。
世界中の有力者たちを震撼させているエプスタイン文書とは何か? 彼と極めて親しかったといわれているトランプ大統領に囁かれている「疑惑」は事実なのだろうか? トランプ大統領はこの問題で辞任することはあり得るのか?
さまざまな情報から、私の考察を含めて、この謎を解いていくことにしよう。
■ビル・ゲイツとの関係
「エプスタイン文書」とは、2019年、一部報道では1200人を超えるといわれる少女たちへの「性的虐待」「人身売買」等の容疑で逮捕され、勾留中に“自殺”した謎の大富豪・ジェフリー・エプスタイン(享年66)に関する捜査資料や裁判資料をまとめた膨大なファイルのことである。
今年1月末に公開された文書は300万ページ、画像18万枚、動画2000本に及ぶ。
文書に名前が出てくるのは政界、官界、財界から芸能界まで多くの著名人たちである。
ビル・クリントン元大統領夫妻。
アル・ゴア元副大統領。ジョージ・ミッチェル元上院院内総務。エフード・バラク元イスラエル首相。
エンタメ界では映画監督のウディ・アレンの名前も。女優たちの告発によって性的虐待が明らかになり、#MeToo運動のきっかけになった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン。俳優のケヴィン・スペイシー。金融界ではゴールドマン・サックスの法務部門のトップであるキャスリン・ルムラーが、エプスタインに助言していたことが明るみに出て、辞任の意向を表明している。
最近、注目を集めているのは、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツとエプスタインとの親しい関係である。
■性病に罹ったという報道
ニューズウィーク日本版(2月17日号)で、ニューヨーク・タイムズでこの事件の調査報道に携わるデービッド・エンリッチ記者が以下のように話している。
今回の資料の中には、エプスタインがゲイツに女性を世話し、ゲイツが性病に罹って治療のための薬を入手しようとしたと示唆するものがあるという。
この疑惑について聞かれたゲイツの元妻メリンダは、「結婚生活の最もつらかった時期を思い出す」と答えたが、「そんなことは絶対なかった」とはいわなかったそうだ。
エプスタインの死後、彼とゲイツの長年の関係が明らかになり、金、女性、あるいは少女たちまで、あらゆるものが絡んでいたと見られているという。

だが、エンリッチ記者は、エプスタインが嘘をつき、話を誇張し、さらに脅しや影響力を巧みに使って、権力者から自分の望むものを引き出すことに長けていた可能性もあるといっている。
たしかに、公表された文書を丸ごと信じることはできないかもしれない。
しかし、ゲイツに関していえば、夫婦が離婚した一因は、メリンダが夫とエプスタインとの関係に抱いていた「不快感」だということは、以前から知られていたことだというのである。
■日本人メジャーリーガーにも影響
ゲイツは2月24日、「誤りを犯した」と、自身が設立した慈善団体「ゲイツ財団」の職員らに対して謝罪したと、アメリカのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えている。WSJは、ゲイツ氏が職員らと開いた会合の録音を元に報じたとしている。
朝日新聞デジタル(2月26日 5時09分)では、
ゲイツ氏は謝罪する一方、エプスタイン氏の犯罪とは関係がないとし、「私は違法なことは何もしていないし、見てもいない」と語ったという。
ゲイツ氏は会合で、2011年からエプスタイン氏と会うようになったと説明したという。エプスタイン氏が08年に、未成年者に売春を勧誘した罪で有罪を認めた後のことになり、ゲイツ氏は十分な身元調査をしなかったと弁明した。

ただ、エプスタイン氏のプライベートジェットでドイツやフランスなどに行き、面会は14年まで続いたとしている。
さらに、スポーツニッポン(2月16日付)によれば、2028年ロサンゼルス五輪・パラリンピック組織委員会のワッサーマン会長が、自分の率いる米大手代理人事務所を突然、売却してしまったそうだ。
ここにはドジャースの山本由伸やカブスの鈴木誠也、パドレスのダルビッシュ有、レイカーズの八村塁などが所属しているが、ワッサーマン会長がエプスタインの恋人で、現在逮捕されている女性(ギレーヌ・マクスウェル)とメールのやり取りをしていたことが文書で明らかになった。それが理由ではないかといわれているという。

■エプスタインの謎の素性
そして、英国ばかりではなく世界中を驚かせたのが、英国のチャールズ国王の弟、アンドルー元王子(66)の逮捕だった。
英国王室の関係者が逮捕されるのは17世紀のチャールズ1世以来だというから、異例中の異例である。
もっとも、アンドルーの疑惑が騒がれたのは2000年代からだった。アメリカの女性が、自分が未成年だった2000年前後に、エプスタインから強要され、アンドルー王子と性的関係をもたされたと訴えたのだ。
だが、アンドルー王子は疑惑を否定し、反省さえしなかったことから英国民の反感を買い、公務から退かされていた。
昨年は、中国のスパイと親密だったという疑惑も浮上し、英国王室もかばい切れなくなり、称号や勲章が剥奪されてしまっていた。
今回の逮捕は、今年1月末に公開された300万ページに及ぶ「エプスタイン文書」が関わっていることは間違いないようだ。
では、エプスタインとはどんな人物なのか。彼が紹介される時はいつも「謎の大富豪」という“肩書”がつく。
それは、彼がどのようにして巨万の富を築いたのかが、いまだに完全に明らかになっていないからである。
■なぜ大富豪になったかはわからない
彼は1953年にニューヨーク市ブルックリンで生まれたユダヤ人。高校卒業後、クーパー・ユニオン大学に入学して約2年通い、その後にニューヨーク大学(NYU)のクーラント数理科学研究所へ編入、のちに中退している。

富裕層の子弟を集めた「ドルトン・スクール」で教職に就き、数学と物理学を教えていたが、そのときの教え子に、大手投資銀行「ベアー・スターンズ」会長の息子がいたそうである。
1976年、教職を離れて「ベアー・スターンズ」に入社した(一説には彼が大学を卒業していないことがバレたため首になったという報道も)。その後わずか4年でパートナーの地位に昇進したという。
だが、その直後に退社してしまうのである。翌1982年に資産管理会社「J・エプスタイン・アンド・カンパニー」を設立している。
超富裕層の「資産管理アドバイザー」として活動していたが、その契約内容はほとんど非公開なため、報酬などはわからず、彼の会社も非上場なため内情はほとんどわかっていないといわれている。
そのため、「富裕層相手の恐喝を繰り返していた」「富裕層をターゲットにした秘密のネズミ講が原資になっている」「アメリカの諜報機関の手先として動いていた」などの噂がメディアで報じられたこともあったようだ。
大富豪としてエプスタインの名前が表に出てきたのは2000年初め頃だという。
■供給役・ギレーヌの正体
所有する資産は、6億ドル超の不動産やプライベートジェット、ニューヨークの超高級邸宅、アメリカ領バージン諸島の無人島リトル・セント・ジェームズ島、7600エーカーの広さを持つニューメキシコ州の牧場などといわれていた。
だが、他人とうまくコミュニケーションが取れるタイプではなかったため、上流階級が集う社交界では無名だったようだ。
その彼を上流階級の有名人たちと引き合わせ、社交界で有名人にしたのが、彼の愛人といわれているギレーヌ・マクスウェル(64)だった。
彼女の父親は英国の巨大メディア王だったが謎の死を遂げている。
彼女はオックスフォード大卒で社交界の華で、父親の死後アメリカに渡り、エプスタインと出会った。
エプスタインにとっては社交界で顔を売るため、彼女の人脈が必要だった一方で、金銭的に窮していたといわれるギレーヌは、エプスタインの富が目的だった。
ギレーヌは、幼い少女が好きなエプスタインの歓心を買うために、少女たちに声をかけ、次々にエプスタインに紹介する「供給役」を始めるようになったといわれている。
■「1日3回射精しなきゃいけない」
Netflix『ギレーヌ・マクスウェル:権力と背徳の影で』(2022年製作)の中で、女性作家のクリスティーナ・オクセンバーグは、ある時、ギレーヌから「私の本を書いて」と頼まれたと語っている。その理由をギレーヌは「そうすればジェフリーと結婚できる」といったそうだ。
どうやらその時期、ギレーヌはエプスタインから距離を置かれていたようだ。エプスタインは成熟した女性にはあまり関心をもっていなかったため、ギレーヌは焦っていた。
そして、こんなことまでオクセンバーグに打ち明けたという。「世界的な名医の判断によると、彼は1日3回射精しなきゃいけない」。
そのためギレーヌは1日に3人の女性を紹介しているというのだ。「私は応じきれない」ともいったそうだ。
オクセンバーグはこう続ける。

「彼女(ギレーヌ)はドライブしながら彼好みの女の子を探して交渉するの。『彼にマッサージをしたら200ドルあげる』といってね。私(オクセンバーグ)が『その子たちは何者なの?』と聞くと、その答えに彼女の本性が現れた。『何者でもない、ただのゴミよ』」
オクセンバーグはその女の子たちが未成年の少女たちだということは知らなかった。知っていれば警察に通報したと語っている。
■手帳に書かれたトランプの名前
彼女は精力が有り余るエプスタインのために、少女たちに声をかけ、エプスタインの豪邸に引き込み、エプスタインの性加害の現場にも立ち会い、自らも彼女たちに性的虐待をしていたのである。
ギレーヌはエプスタインに少女を紹介する前に、彼女たちの家庭環境や幼い頃に性的虐待を受けたことがあるか、執拗に聞いていたと、被害者の女性たちが証言している。
そうした少女たち(中には14歳の子もいた)をカネと権力で押さえつけ、性の奴隷にしていたのだ。
また、エプスタインは少女たちを知り合いの著名人たちに“斡旋”することもやっていた。
エプスタインの持っていた小さな手帳には、1571人の名前、電話番号、住所が97ページにわたって書かれていたと、アメリカの多くのメディアが報じている。その中にはトランプの名前もあったといわれている。
エプスタインの屋敷はもとより、「エプスタイン島」といわれていたバージン諸島の無人島には、いたるころにビデオカメラが設置されていたという。手帳とともに多くのビデオが金庫の中に収められていたそうだ。
■逮捕されたのにたった13カ月で出所
エプスタインは、少女たちを知人の著名人や権力者たちに紹介して、その人間たちの弱みを握ることで、極秘情報を得て資産形成に生かしたり、まさかの時、自分に有利になるよう人脈づくりをしてきたと思われる。
それが生きたのが、2008年にエプスタインが児童性愛の容疑で逮捕された時だった。エプスタインの豪邸に少女たちが出入りしていることが警察の知るところとなり、勇気ある被害女性の告発もあった(当時、ギレーヌは逮捕されていない)。
「児童性愛」は重罪である。だが、この事件の担当だったアレクサンダー・アコスタ連邦検事が、エプスタインの「売春の勧誘」と「未成年への売春の斡旋」だけを有罪にし、性犯罪者として登録するが、連邦レベルでの起訴は免れるとする特例的な「司法取引」をしてしまうのである。
エプスタインは禁錮18カ月という軽い刑を受けて刑務所に入ったが、外出自由という超特別待遇で、収監から13カ月で出所してしまう。
裏で何が行われたのか、誰が連邦警察に圧力をかけたのか、真相はわからないままだが、何人かの権力者と莫大なカネが動いたとみて間違いないだろう。
■被害女性たちの思い
だが、被害を受けた女性たちは諦めなかった。
Amazonプライム『サバイビング・ジェフリー・エプスタイン アメリカの闇』(2020年製作)の中で、多くの被害者が実名で顔を出して、「少女の時、エプスタインとギレーヌから受けた性的虐待」を語っているが、その中の1人がこういっている。「1人だけでも誰かを助けたい」。この思いが多くの被害者たちを立ち上がらせたのだ。
その熱意と証言がついに警察とFBIを動かした。
2019年7月6日、パリから自家用機で帰国したエプスタインが逮捕されたのである。容疑は、2002年から2005年までの間、マンハッタン、ニューヨーク、パームビーチの自宅、バージン諸島の島で、14歳を含む未成年の少女数十人に対する性的虐待だった。
だが、同年8月10日、勾留されていたニューヨーク州の矯正施設内で、エプスタインは首を吊って自殺してしまうのだ。
だが自殺ではなかったという見方もある。エプスタインが自殺警戒監視リストから削除されていたこと、エプスタインが著名人や権力者たちのスキャンダルを握っていたことなどから、殺されたのではないかという説もいまだに消えていない。
■エプスタインとトランプの蜜月
そのエプスタインとトランプは、いつ頃どのようにして知り合ったのだろうか?
ForbesJapan.com(2025.07.25 08:00)によると、トランプがフロリダ州パームビーチの歴史的建造物「マー・ア・ラゴ」を購入したのは1985年という。
エプスタインは90年に同地に拠点を構えており、同じパームビーチで出会ったとしている。
また、ニューヨーク・タイムズによると、トランプは1992年、マー・ア・ラゴで開いた“カレンダーガール”パーティーに、客を2人だけ招待したという。その1人がエプスタインだった。
さらにCNNが発見した写真から、1993年12月にニューヨークのプラザホテルで挙行されたトランプと2番目の妻マーラ・メイプルズの結婚式に、エプスタインが出席していたことが判明したという。
また、トランプがエプスタインのプライベート機に何度も乗っていたことも、フライトログに記録されているそうだ。
1995年には、後に性的暴行で訴え出るマリア・ファーマー(当時20代半ば)が、エプスタインからニューヨークのオフィスに呼び出されると、トランプが現れたと証言している。
トランプはファーマーにまとわりつき始めたが、エプスタインが「違う、違う。彼女はあなたのためにここにいるんじゃない」とトランプをたしなめたと、ファーマーが米連邦捜査局(FBI)に話したそうである。
■元週刊誌編集長「関係は続いていたのでは」
トランプは2002年、雑誌ニューヨーク・マガジンのインタビューで、エプスタインのことを「15年来の知り合いですごくいい奴だ」と紹介し、「彼もわたしと同じくらい、美しい女性が好きだといわれているんだ。彼の場合、若めの娘が好みらしいけれど」と語っている。
トランプ大統領とエプスタインとの親密な関係は疑いようがない。だが、トランプ大統領は、エプスタインとの関係は“20年以上前に終わった”と繰り返し主張している。
確かに、ワシントン・ポストによれば、2004年にトランプはパームビーチの邸宅の入札でエプスタインに競り勝ち、これがきっかけで二人の関係は悪化したといわれているようだ。
だが、トランプ大統領の言動を追っていくと、2人の仲は切れていなかったと見るのが真実ではないのかと思わざるを得ない。
トランプが大統領選に再出馬した選挙中、「エプスタイン文書を公開する」といっていた。だが、就任すると「公開しない」と翻してしまった。
昨年11月、連邦議会上下両院は司法省に対して、エプスタイン事件情報の全面開示を義務付ける法案を可決したが、最後までトランプ大統領は猛反対していた。
今でも、記者からこの疑惑について聞かれると、たびたびキレて記者を罵倒する。その姿が、疑惑は事実ではないかと思わせる。
■追加資料は握りつぶされたのか
さらに、先述したエプスタインと司法取引して軽い刑で済ませたアコスタである。
2018年、第1次トランプ政権で彼は労働長官に指名されているのだ。後にエプスタインとの関係が追及されて辞任したが、アコスタのことをトランプ大統領が知らなかったはずはない。
まだある。エプスタインに少女を「供給」していた愛人のギレーヌ・マクスウェルも2020年に逮捕された。未成年への勧誘、未成年に対する性的人身売買、偽証等6件の連邦犯罪で起訴されているから、有罪判決が下れば実質的に終身刑になる。
だが彼女は、「恩赦が与えられればトランプの潔白を証明する」という交換条件を出していると報じられている。もし、そうしなかったら……という意があるのは間違いないだろう。
トランプ大統領のことだから、恩赦を与えるかもしれない。そうなれば、疑惑は確信に変わるだろう。
日本経済新聞デジタル版(2月25日)はこう報じた。
【ワシントン=共同】米公共ラジオ(NPR)は24日、少女らの性的人身売買罪で起訴され自殺した富豪エプスタイン氏の資料を巡り、司法省がトランプ大統領に関連する内容の一部を公表していないと報じた。トランプ氏への批判を避けるため恣意的に公開する資料を選別しているとの疑念を生み、反発が広がる可能性がある。
司法省は1月、エプスタイン氏に関する300万ページ以上の資料を新たに開示。ブランチ司法副長官が「文書の確認作業は終了」と宣言していた。

■イラン攻撃の絶妙なタイミング
「エプスタイン文書」の残り300万ページは非公開となっているが、いずれ明るみに出るはずである。そうなれば、さらなるエプスタインとトランプ大統領の関係が明るみに出るかもしれない。トランプ大統領の辞任という事態もあり得るかもしれないのだ。どちらにしても、秋に行われる中間選挙で民主党が勝ち、共和党内からもトランプ大統領批判がさらに噴き出せば、事実上、トランプ政権は終焉を迎えることになる――。
そんな観測がされていた時期に、突如としてイランへの軍事攻撃が行われた。
イスラエルの要請やイランの核開発などを鑑みての行動とされているが、「少女売春」の疑惑隠しのタイミングとしては絶好と言える。
■ジャニーズ問題すら風化させる日本メディア
先にも書いたとおり、Netflixなど事件の真相を追ったドキュメンタリーの中で、被害女性たちは実名顔出しで、エプスタインにされた性加害の実態を赤裸々に語っている。
罪を償わずに死んだエプスタインも、それに加担した連中も絶対許さないという気迫が、女性たちからも番組の作り手たちからも伝わってくる。
翻ってこの国はどうか。
多くの少年たちに性加害していたジャニー喜多川が亡くなったのは、くしくもエプスタインと同じ2019年である。
英国のBBCがこの醜悪なスキャンダルを放送したのが2023年春。大きな問題になり、テレビ局とジャニーズ事務所との癒着構造にもメスが入るかに思われた。
だが、事務所は看板を変えただけで存続し、事件はあっという間に風化し、何もなかったかのように旧ジャニーズ事務所のタレントたちがテレビを闊歩している。
この事件の真相を追及するテレビメディアは、BBCとNHKスペシャルを除いては皆無である。
フジテレビを筆頭に、この国のテレビ局の堕落は今に始まったことではないが、情けない。
高市首相は、エプスタイン事件のことをどこまで知っているのだろうか。彼女は売春防止法を改正して「買春」した人間も罰することができるよう検討するように、法務大臣に指示したといった。
トランプ大統領の「少女買春」疑惑が囁かれる中、高市首相が今月訪米した際、トランプ大統領と嬉しそうに握手するのだろうか。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)

ジャーナリスト

1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)
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