取引先への催促の連絡は気を使う。相手に不快感を与えない伝え方はあるのか。
コミュニケーション講師の深谷百合子さんは「催促の目的は『遅れていることを指摘すること』ではなく、『相手に気持ちよく動いてもらうこと』だと意識するといい」という――。
※本稿は、深谷百合子『「この型」を使って○○をわかりやすく説明してください。』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■気を使う「催促の連絡」
Q.1 「期限が過ぎても依頼した資料の提出がない」ため、催促の連絡をしてください
取引先に依頼した資料が、期限が過ぎても提出されていません。あなたは催促の連絡をしようとしています。どのように連絡しますか。まずは実際に考えてみましょう。
一度連絡した内容を、相手に再度連絡するケースはいろいろあります。重要な会議やイベントの開催が迫ってきたとき、資料の提出期限が迫ってきたとき、商談の予定日が近づいてきたときなどです。「うっかり忘れていた」「日にちを勘違いしていた」ということのないように、再確認の連絡をするのは大切ですよね。こうした再確認の連絡のなかで、最も気を使うのが「催促の連絡」ではないでしょうか。
次のような催促は、相手を不快にさせてしまう可能性があります。

相手を不快にさせてしまう催促の例
先日お願いしました資料の件、提出期日が過ぎましたが、まだ届いていません。

いつ頃ご提出いただけますでしょうか。

■相手を立てながらこちらの要望を伝える
このように直接的な表現で連絡してしまうと、相手は責められているように感じます。たとえ相手に非があったとしても、相手が不快な思いをしてしまったら、今後の関係性にも影響を及ぼしかねません。今後も良い関係を保てるよう、相手を立てながらこちらの要望を伝える工夫が必要です。
そのときに使えるのが「用件→状況→要望→配慮」の型です。
「用件→状況→要望→配慮」の型を使って催促の連絡をした例
【用件】【再確認のお願い】□□に関する資料の件について
先日お願いしました資料提出の件で、再確認のお願いです。
【状況】○月○日の時点で、まだ届いていないようです。
【要望】○月中に社内決裁を進めてまいりたく、○月△日までにご提出いただけると助かります。
【配慮】なお、本メールと行き違いになっておりましたら、ご容赦くださいませ。
お忙しいところ恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

まずは何の用件なのかを伝えます。
メールで送る場合は、件名でわかるようにしておきましょう。最初に伝えることで、相手に思い出してもらいます。
■相手に配慮した表現で締めくくる
その後、現在の状況を「事実」ベースで伝えます。ポイントは2つあります。
1 主語を「受け取りたいもの」にする
「(私は)まだ受け取っていない」「(あなたは)まだ送っていない」という表現より、「(資料が)まだ届いていないようです」のように、「受け取りたいもの」を主語にすると、相手を責めているような印象にならずにすみます。
2 断定的な表現にしない
「届いていない」というより、「届いていないようです」と推量の表現にすることで、催促のニュアンスが和らぎます。
そのうえで、こちらの要望を「お願い」という形で明確に伝えます。
最後に、行き違いになっている可能性も考慮して、相手に配慮した表現で締めくくります。
催促の目的は「遅れていることを指摘すること」ではなく、「相手に気持ちよく動いてもらうこと」です。そのためにも、「相手の立場を尊重した言葉づかい」「お願いしたいこと」「相手を配慮したひと言」を意識して連絡しましょう。
■「顔」「体温」を感じられる依頼
Q.2 面識のない相手に「講演の依頼」をする連絡をしてください
今まで連絡したことのない人に依頼をするのは、緊張するものです。関係性がまだできていない相手に依頼する場合には、こちらの伝えたい内容を伝える前に「なぜあなたなのか」という理由を説明する必要があります。

事務的に感じられる依頼の例
初めてメールを差し上げます。

○○会社の□□と申します。

このたび、当社の社内研修で講演をお願いできないかと思い、ご連絡いたしました。

概要は下記のとおりです。

ご検討のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

このままでも講演を依頼したいことは伝わります。言葉づかいも丁寧で、失礼な印象も与えません。ただ、これから関係を構築していこうとするのですから、依頼する側の「顔」や「体温」を感じられるほうが、相手に安心してもらえます。
そんなときに使えるのが「用件→理由→依頼内容」の型です。
■相手の不安を先に取り除く
「用件→理由→依頼内容」の型を使って依頼した例
初めてメールを差し上げます。

○○会社の□□と申します。
【用件】このたび、当社の社内研修で講演をお願いできないかと思い、ご連絡いたしました。

【理由】△△様のご著書『○○○○○』を拝読し、「現場の声に寄り添ったリーダー育成」のお考えに深く共感しました。
当社では現場力の強化を重点課題に掲げ、取り組みを進めております。そこで、△△様にご講演をお願いし、現場リーダーの指導力アップにつなげたいと思った次第です。
【依頼内容】お願いしたい内容は下記のとおりです。
※日時、場所、対象者などの情報と相手にお願いしたいことを整理して伝える。

ポイントは「なぜあなたにお願いしたいのか」を自分の言葉で伝えることです。そのためには、相手のことを下調べしておく必要があります。
面識のない人から依頼を受けた相手は、「なぜ自分なのか」「どこで自分のことを知ったのか」と不安に思うものです。その不安を先に取り除くことで、相手も心を開き、「この人の話なら聴いてみよう」と思ってくれるようになります。
■「断られた経験」から学んだ
私も面識のない会社へ取材の申し込みをすることがあります。その際には、「どこに興味があって取材したいと思ったのか」「取材で何を伝えたいのか」を具体的に伝えるようにしています。また、「相手が不安に思うこと」も最初の依頼の時点で伝えています。

たとえば、「取材記事が掲載されるのは、どのような媒体なのか」「記事の内容を事前にチェックできるのか」「金銭のやりとりはあるのか」といった内容です。これは、取材を始めたころ、「断られた経験」から学んだことです。
「あなたにお願いしたい」と思った理由をしっかり伝えておくと、「血の通った」やりとりになるように感じます。そして、実際に顔を合わせたときには、もう関係性ができている状態になっています。

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深谷 百合子(ふかや・ゆりこ)

合同会社グーウェン代表

大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープで技術者・管理職として工場の環境保全業務を行う。専門用語を噛み砕いて説明できることが評価され、工場の見学者に環境対策の説明や、テレビや新聞からの取材に対応する業務を任されるようになる。その後、中国国有企業に転職。100名を超える中国人部下の育成を任される。2020年独立。コミュニケーションをテーマに、各種メディアで活動中。

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(合同会社グーウェン代表 深谷 百合子)
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