※本稿は、和田秀樹『60歳で離れる人、60歳からつきあう人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■不足栄養素をサプリで。薬の服用には注意
年齢を重ねると、体力や気力が少しずつ衰えていくのは自然なことです。
だからこそ、60代以降も元気でいるために自分でできることは積極的に試してみてほしいと思います。たとえば、無理に我慢せずに自分の楽しみを大事にすることや、ストレスになる人間関係は思い切って手放すこと。元気があるなら働いてみるのもいいし、ワクワクすることや新しいことに挑戦するのも大事です。
また、しっかり栄養をとることも大事です。食事はもちろん、サプリメントなどを活用してもいいでしょう。サプリメントは薬とは違い、足りない栄養を補うことで健康維持に役立つものです。外食が続いていたり、苦手な食べ物があったりして栄養が気になるという場合は、サプリもひとつのサポートになるでしょう。
その一方で、薬の服用には注意が必要です。
薬にはどんなものでも副作用のリスクがあります。とくに複数の薬を同時に服用する「多剤併用」は、思わぬ副作用を引き起こしやすくなります。高齢者によく見られる副作用のひとつが、ふらつきや転倒です。
■薬が1種類増えるだけで、転倒リスクが2倍
東大病院老年病科の調査では、薬を4種類飲んでいる人のうち約20%の人が、1年以内にふらつきや意識がぼんやりすることによる転倒といった事例を経験しています。薬の数が5種類になると、その割合はおよそ40%に跳ね上がります。
薬が1種類増えるだけで、転倒リスクが2倍になるのです。転倒から骨折、寝たきり、認知症へとつながるケースも決して少なくありません。
ですから、60代以降にまずするべき「断捨離」は薬です。
日本の高齢者は、世界的に見ても多くの薬を日常的に服用しています。まさに「薬漬け医療」と言ってもいい状況です。
しかも、日本では2700種以上の薬が「運転に支障をきたす恐れがある薬(運転禁止薬)」に分類されています。
たとえば、血糖値を下げる薬は低血糖による意識障害を、高血圧の薬は血圧が下がりすぎることで、ふらつきや意識低下を引き起こすことがあります。
実際、私自身も高血圧と糖尿病の持病があり、血圧を下げる薬を飲んでいましたが、その薬を飲むと頭がぼーっとしてしまい、調子が悪くなっていました。そこで、今は薬を減らし、正常値(医学的基準値)よりもやや高めの血圧数値でコントロールするようにしています。
■納得できるまで説明を求め、遠慮せずに相談
本来は、「薬で血圧が下がると、意識がぼんやりすることがある」などの説明が必要ですが、医師のなかには数値だけを見て薬を出し、患者に詳しい説明をしない人もいます。
高齢になると肝臓や腎臓の機能が落ち、薬の代謝や排泄が遅くなっていますから、薬が体内に長く残って副作用が出やすくなるのです。
アメリカの大規模な統計によると、高齢者の重大事故の約80%は、運転に影響を与える薬の服用が関係しているそうです。
もし、処方された薬を飲んで具合が悪くなる、ふらつくといった症状が出たときは、「薬だから仕方がない」と我慢して飲み続ける必要はありません。そんなときこそ、遠慮せずに医師に相談し、「本当にこの薬が自分に必要なのか」を確認してみてください。
医師の説明が難しい、あるいは十分に教えてくれないと感じた場合は、こちらがメモをとったり、スマホで録音する姿勢を見せたりするだけでも、医師がわかりやすく説明し直してくれることも案外多いものです。不安や疑問をそのままにせず、納得できるまで確認する姿勢が大切です。
それでも、十分な説明のないまま医師が薬を見直してくれないようだったら、病院を変えてもいいでしょう。医師や病院とのつきあい方も、受け身のままではよくありません。
「我慢するのが当たり前」とは思い込まず、納得できるまで説明を求め、遠慮せずに相談する姿勢が大切です。自分が飲む薬や治療について医師任せにせず、納得のいくものを自分自身で選んでいくこと。それが、これから先の健康を守るために必要な心構えです。
■免許返納より先に薬を見直せ
なお、運転禁止薬のリストは、インターネットで「運転禁止薬リスト」と検索すれば、確認できます。
最近では、「高齢者は免許を返納すべきだ」という声が大きくなっていますが、私はむしろ薬の副作用こそが重大事故の原因になっているのではないかと考えています。薬を服用していない高齢者は、むしろ若者より事故が少ない、もしくは同程度であるというデータもあるのです。
地方では車が生活の足ですから、安易な免許返納は社会とのつながりを断つことにもなりかねません。実際に、運転免許を返納してから、6年以内に要介護状態になるリスクは2.2倍にも跳ね上がります。
車の運転を続けたいなら、まずは薬を見直すこと。それこそが自立した老後を送る第一歩になるのです。
■健康長寿のカギはストレスとのつきあい方
もうひとつ、60代以降の方にぜひ気をつけていただきたいのが「ストレスとのつきあい方」です。よく知られているように、日本人の死因のトップはがんです。このがんを防ぐためにもっとも大切なのは、免疫機能をしっかり維持すること。
私たちの体には、体内でできたがん細胞やウイルスに感染した細胞を見つけ次第退治してくれる、「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」という免疫細胞があります。NK細胞の活性が高いと、がんになるリスクが低くなることがわかっています。
ところが、このNK細胞の力は年をとればとるほど、どんどん落ちていくのです。具体的には、40代では20代の半分、70代になると約10分の1にまで低下してしまうといわれています。
さらに厄介なのは、NK細胞はストレスに弱いということです。ストレスや精神的な抑圧が加わると、NK細胞の活性は著しく低下してしまいます。
つまり、年をとればとるほど免疫力が落ちる上に、我慢や不安などが重なってストレスが増えると、免疫力はさらに低下し、がんや感染症のリスクが一気に高まるということです。
だからこそ私は、年をとったら頑張りすぎなくていい、無理をしなくていいと言い続けているのです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。
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(精神科医 和田 秀樹)

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