米国とイスラエルがイランを軍事攻撃し、最高指導者ハメネイ師ら政権幹部を殺害した。イランはすぐさまイスラエルや周辺国米軍基地などへの報復攻撃に出ており、戦争状態が続いている。
こうした中で、革命防衛隊がホルムズ海峡の航行禁止を宣言し、ホルムズ海峡を通過して運ばれる湾岸諸国の原油輸出が不可能になることから、日本を含む世界各国の経済への影響が懸念されている。原油価格は緊張が高まる前の1バレル=60ドル前後から、一気に75ドルに跳ね上がった。専門家の中には100ドル以上への値上がりを予想する向きもある。
日本は原油輸入量のうちの74%をホルムズ海峡経由の原油に依存している。政府は、日本には254日分の原油・石油製品備蓄があるので、すぐに石油不足に陥ることはないとしているが、価格が上昇すれば、ガソリン代のみならず、様々な製品価格を押し上げる要因になる。物価上昇の抑制が最大の政策課題になっている現在、石油価格の上昇は日本の政治・経済に大打撃を与えかねない。
■2011年までは「原子力発電へのシフト」を目指していた
ホルムズ海峡経由を含め、原油の9割以上を中東に依存している日本は、以前からエネルギー源の分散を目指してきた。2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故までは、原子力発電へのシフトが政策の柱で、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源として原発が重視されていた。
これは自民党だけでなく野党も同じで、民主党政権時には原発を14基新設する計画などが検討されていた。ところが東日本大震災による深刻な原発事故で方針を一転させ、「原発への依存度をできる限り低減させる」こととなった。
民主党政権時の2012年9月に同党は提言をまとめ、「原発ゼロ社会を目指す」として、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」としたが、「原発を即時に止めることは現実的ではない」といった異論もあり、閣議決定はできなかった。それでも具体的な原則として、(1)運転後、40年たった原発の運転制限を徹底する(2)原子力規制委員会が安全確認した原発のみ再稼働する(3)新増設は認めない――ことを打ち出した。
■「安全神話」が崩れ「反原発」に
原発は安全だとした「神話」が大きく崩れたことで、事故後の世論は一気に「反原発」に傾いた。2012年3月末からは、毎週金曜日に首相官邸前で原発再稼働反対の抗議行動が繰り広げられていた。当時の官僚のひとりは「官邸の中まで反対運動の太鼓の音が響いた。国民の側に立った政権だという気持ちがあった我々はいたたまれない思いだった」と当時語っていた。原発ゼロという長期的な方針は、こうした国民世論に押されてのことだった。
その年の12月に解散総選挙が行われ、安倍晋三自民党が圧勝、民主党は政権を失った。「古い自民党には戻らない」とした安倍首相は、原発問題を争点にすることを極力避けた。「世界一厳しい安全基準」に合格した原発だけを再稼働させるとしたが、再稼働には時間を要した。
政府は定期的に国のエネルギー源のあり方などについて方針をまとめる「エネルギー基本計画」を公表している。自民党が政権を取り戻すと、2014年の改訂を目指して議論が始まった。
■60年を超えて運転できるようにした
結局、2014年に閣議決定された第4次エネルギー基本計画では、それまでの基本方針だった、「安定供給」「経済効率性」「環境適合」に加え、「安全性」を最優先事項として定めた。その上で、「原子力発電への依存度を可能な限り低減する」ことを目的とすると明示した。
安倍首相は選挙で勝ち続け、高い支持率を維持したが、こと原発に関しては国民的な議論を巻き起こすことは避け続けた。議論をすれば国論を二分することになり、原発廃止の方向に動いていくと読んでいたのかもしれない。
だが、水面下では原発の利用促進がジワジワと復活しつつあった。事故から10年目の2021年にまとまった第6次エネルギー基本計画には、「原子力の社会的信頼の獲得と、安全確保を大前提として原子力の安定的な利用の推進」といった文言が盛り込まれた。さらに2023年5月には「GX脱炭素電源法」が成立、原則40年としてきた原発の運転期間を実質的に延長し、60年を超えて運転できるように2025年6月から法律が施行された。民主党政権時に打ち出した「運転後、40年たった原発の運転制限を徹底する」という「原則」を10年の時を経て反故にしたのだ。
■「安全神話」を作り上げるための不正
さらに、石破茂内閣が2025年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025」では、「新増設は認めない」というもうひとつの原則も反故になった。骨太の方針にはこう記された。
「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替え等の具体化を進める」
いわゆる「リプレース」を認めるとしたのだ。廃炉にした分を新設するわけで、これを認めることによって「原発ゼロ」を目指すことは無くなったと言って良い。
まもなく福島第一原発事故から15年。
最近も、中部電力が浜岡原発(静岡県)の再稼働審査において、地震データを故意に操作して揺れを過小評価する不正を行っていた疑いが2026年1月に発覚した。原子力規制委員会の立入調査では「計算過程の記録が残っていない」ことも判明。捏造の疑いが強まり、中部電力社長の林欣吾氏は電気事業連合会の会長を辞任に追い込まれた。
■国民的議論がほとんど行われてこなかった
こうした不正や隠蔽、改竄は、他の原発でも繰り返し表面化。到底、国民の信頼回復ができたとは言い難い。再稼働ありきの姿勢を見ていると、事故以来「安全が最優先」と言い続けている政府の方針が虚しく聞こえる。
ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルのガザ攻撃、イスラエル・米国とイランの戦争によって、地政学的リスクがいよいよ大きくなり、日本のエネルギー確保が安全保障上の大きな問題になってきた。原油への依存を下げることを考えれば、経済効率が高いという理由で原発を重要視するのはわからないではない。だが、そのための、国民的な議論はこの15年、ほとんどと言って良いほど行われてこなかった。なし崩し的に再稼働が進み、60年を超える稼働やリプレースへと突き進んでいる。
■「最新の技術の原発の方が安全性が高いのは当然」
だが、原発推進を主張する経済産業省のOBですら、40年以上前に建設された古い原発よりも、最新の技術の原発の方が安全性が高いのは当然だと語る。つまり、古い原発を60年を超えて使い続けるのはリスクが高いのは明らかなのだ。
また、原発から出る核廃棄物の処分場所はいまだに決まっていない。昨今の地震の頻発もあり、万が一にも予想外の断層が動いた場合、原発は無事でいられるのかも不安である。
さらに、地政学的不安定さは東アジアも変わらない。核開発に関する限り、イランよりも北朝鮮の方が深刻で、すでに核を保有しているとみられる上、ロケット発射も繰り返している。日本海を挟んで向き合っている東京電力柏崎刈羽原発には7基の原子炉が並んでいる。それをロケットで狙われた場合、甚大な被害に結び付く懸念も現実のものになってきた。原発をゼロにするのではなく、使い続けていくのなら、今ある発電所の立地内で建て替えるのではなく、より安全な立地を含めて再検討するべきではないのか。
いずれにせよ、これだけ国や国民にとって重要な課題にもかかわらず、国民的な議論が無さすぎるように思う。
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磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。
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(経済ジャーナリスト 磯山 友幸)

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