「春は出会いの季節」
誰もが一度は耳にしたことがある言葉が、いま「死語」になりつつあります。
もちろん、今でも春になれば新入生や新社会人の姿があり、新しい顔ぶれとの出会いそのものがなくなったわけではありません。
かつて、日本の春には確かに恋愛における「出会いの春」がありました。それは職場恋愛という「社会のお膳立てシステム」が強力なインフラとして稼働していたからです。
新入社員を歓迎する社内行事、世話焼きな上司による絶妙な仲介、そして定期的な社内異動――。本人の意思にかかわらず、出会いはベルトコンベアのように運ばれてきた時代でした。企業は、人生設計や家族形成までをも、ある種の「福利厚生」としてバックアップしていたのです。
一方、現在は、そのインフラは「コンプライアンス」という強烈なブレーキによって完全に停止しています。かつて当たり前に存在していた「上司の紹介」や「職場での飲み会」は、今やハラスメントの温床として忌避されるようになりました。
にもかかわらず、かつてのインフラが消滅した更地の上で、「春になれば、自然と出会いがあるはずだ」と期待を捨てきれない人は、今もなお多いのです。
■出会いのきっかけは依然「職場」が首位
ここで、近年の出会いの傾向について少し触れたいと思います。
デジタルネイティブである20代は、マッチングアプリで効率的に出会いを探していると思われがちです。多くのメディアでも、アプリ婚こそが現代の主流であるかのように描き出されています。
しかし、実態は少し異なります。明治安田生命が発表した調査(2025年版)によると、結婚した夫婦の出会いのきっけかは3年以内に結婚した夫婦に限ればマッチングアプリが首位ですが、全体でみると依然として「職場」が首位を走っているのです。
注目すべきは、アプリ全盛期を生きる20代においても、この「職場での出会い」がアプリと同じくらい根強く支持されているという事実です。
なぜ、まだ職場による出会いは上位なのでしょうか。
そこには、アプリという「自由市場」にはない、検証済みの情報と、コミュニティが担保する圧倒的な安心感があるからです。マッチングアプリというプラットフォームは、効率的ではありますが、本質的に「情報の非対称性」という問題を抱えています。
プロフィールに書かれた年収、学歴、あるいは写真――それらが「嘘ではないか」と疑い、精査するコストは想像以上に高いのです。アプリ利用者であれば、こうした経験が一度はあるのではないでしょうか。
■タイパ重視の若者が気づいた「職場」の良さ
一方で職場は、アプリに並んでいるようなファーストステップでの「条件」や「外見」の嘘が物理的に入り込みにくい場所です。
もちろん職場に嘘が全くないというわけではありません。しかし一つの嘘がキャリアや人間関係を崩壊させかねない、強力な相互監視が働くため、「裏切り」が生まれづらい環境だといえます。
若者は、タイパを重視するからこそ、情報の真偽が不明なアプリでの消耗を避け、最も信頼できるインフラとしての職場を、戦略的に再定義しているのです。
しかし、「職場での出会いが依然優位であること」は必ずしも「何もしなくても職場で良い出会いがあること」にはつながりません。
では、令和の若者たちがどのようにして職場で将来の伴侶を見つけているのかというと、彼らは「社会のお膳立てシステム」に頼ることなく、自ら積極的な行動を起こしているのです。
■職場恋愛は自然な出会いという「贅沢な勘違い」
職場恋愛においては、よく「スペックではなく、内面を見て惹かれた」とされることが多いかと思います。しかし、これはある種の贅沢な勘違いであることを自覚すべきでしょう。
職場恋愛で「性格がいいから」と言えるのは、実はファーストステップをパスしたごく少数の通過者たちの中だけで行われる、人柄重視の「二次審査」のようなものだからです。母集団が絞られているからこそ内面を見る余裕も生まれるのです。
こうしたなかで職場恋愛は果たして「自然な出会い」と呼べるのでしょうか。
同じような知的水準、価値観、経済力を持つ人々が集まる環境に身を置けているのは、本人がそれまでの人生で勝ち取ってきた「フィルタリング権」の結果です。
つまり、パートナー探しは結婚を意識した瞬間から始まるのではなく、「どの環境に所属するか」を決めたとき、もしくはその数年前からすでに勝負が始まっているのです。
■引き止めのための社内婚活性化
かつて筆者が人材業界にいた頃、ある大手企業の担当者はこう本音を漏らしていました。
「社内結婚を活性化させたいから、採用段階で属性のバランスを重視している」
現代のコンプライアンスに照らせば危うい内容ですが、企業にとって社内結婚は、組織の離職率を下げ、メンタリティを安定させる「最強のリテンション(引き止め)策」という経営合理性に基づいた戦略でもあったのです。
私たちは自分の意思で相手を選んでいるつもりですが、実は企業という巨大なフィルターが、あらかじめ似た価値観やバックボーンを持つ人間をスクリーニングし、出会いの精度を高めてくれていたという側面があることも否定できません。
■大企業の社内婚は「確実な投資」に近い
「同じ会社の人は気まずいので避けたい」
結婚相談所のカウンセリングではよく聞かれる言葉ですが、実は大手企業の方ほど、こうした拒絶反応が比較的少ない傾向にあります。大手企業の場合、その組織の巨大さゆえに、部署が違えば日常的な接触は極めて限定的となります。同じ会社というドメインに属していながら、物理的な距離によってリスクヘッジができるのです。「大手企業の社内結婚」は、もはや恋愛というより、確実性の高い投資戦略に近いものがあります。
だからといって、現代においては受動的な「棚からぼた餅」の幸運を待っていればどうにかなるというわけでもありません。
ハラスメントのリスクを大前提とした「リスクマネジメント力」はもちろんのこと、勝算のない対象を追わないための「メタ認知による自己客観視」、周囲の視線や噂の火種を察知する「環境洞察力」、そして初期段階で相手の警戒心を解くための「パーソナルスペースを遵守した距離感の制御術」を能動的に発揮して、この職場というマーケットを使いこなすことができるのです。
■「全員に配給が届く時代」は終わった
しかし、こうした高度なスキルを使いこなすことは決して容易ではありません。また、職場には周囲からの評価という「第三者の視線」が常に介在しています。日頃の業務態度や人柄によって積み上げられた「信頼の貯金」というバックボーンがない者にとって、このマーケットは参入することすら叶わない、非常にシビアな場なのです。
もちろん、こうしたことを意識せずとも、たまたま同じ部署に気が合う相手がいたり、周囲が自然に繋いでくれたりといった形で、幸運にも結婚に繋がる人も一定数存在します。しかし、それはもはや再現性の低い奇跡を待つようなものです。
■出会いに「楽なルート」などない
他方、日本の大半を占める中小企業においては、顔ぶれが固定されやすく、失敗がコミュニティの喪失に直結するリスクが勝ります。
企業の規模を問わず、職場というインフラが機能しないと判断した人々は、必然的に別のフィールドへ活路を求めることになります。
例えば知人の紹介。自然な出会いとして今も人気ですが、紹介者という第三者の「信用」を担保にしていることを自覚しなければなりません。もし不誠実な振る舞いをすれば、自分の人間関係そのものを毀損するリスクがあります。「合わないな」と思っても、紹介者への義理で数回は会わなければならない。紹介は決して「楽なルート」ではなく、自分の社会的信用を担保に差し出して戦う場なのです。
マッチングアプリを選ぶなら、膨大な母数から「虚像」を見抜き、無慈悲な足切りを突破するための「圧倒的な素材力(スペックと外見)」という武器が必須となります。
そして、結婚相談所を選ぶなら、自分の市場価値を冷徹に認め、仲人のアドバイスを戦略的に取り入れる「柔軟さと実行力」が必要になります。
■「恥ずかしい」で動かないことが最も損をする
現代の出会いにおいては結局のところ、どのフィールドを選んでも、そこには独自のルールが存在するサバイバルがあるだけなのです。「自然に何かが起きる」ことを期待できる時代は、すでに幕を閉じました。
いま多くの人が恋人探しに及び腰なのは、「必死に動くのは恥ずかしい」という心理的なブレーキが働いているからです。マッチングアプリや結婚相談所、あるいは職場でのアプローチに対して、「自然に出会えなかった敗北感」や「がっついていると思われる格好悪さ」を感じてしまう。しかし、その「恥じらい」こそが、現代において最も大きな機会損失を招く要因です。
私たちが「恥ずかしい」と立ち止まっている間に、賢明な層はすでに学生時代から戦略的に動いてパートナーを探しています。彼らにとって能動的に動くことは恥ずべきことではなく、望む人生を手に入れるための戦略なのです。
春の陽気に誘われて「誰かいい人がいないかな」と空を眺める受動的な状態では、もはやチャンスは巡ってきません。4月の青い空の下で求められているのは、運を待つことではなく、自分がどのフィールドでどう戦うのかという「能動的な意志」の表明です。「春は出会いの季節」――その言葉が指す意味は、もう変わってしまったのです。
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平田 恵(ひらた・めぐみ)
タメニー 広報
立命館大学卒業。新卒で人材派遣会社に入社し、入社後わずか7カ月で課長に昇進。その後約5年間、高校野球のリポーターなどフリーランスとしてさまざまなメディアの現場を経験。再び人材業界の勤務を経て、2016年9月にタメニー(旧パートナーエージェント)に未経験広報として入社。
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(タメニー 広報 平田 恵)

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