※本稿は、藤田田『起業家のモノサシ』(KKベストセラーズ)の一部を再編集したものです。
■アメリカ人は、日本人より「お金にモテる」
「何か儲け話はありませんか」
目を血走らせている人をよく見かけるが、こんな人に限って、逃げる女に追いすがってピシャリと振られるモテない男のように、お金から嫌われるようだ。
遊び好きな男、あるいは遊びの上手な男のことをプレイボーイというが、プレイボーイは石部金吉さんよりよくモテる。レジャーをうまく楽しむアメリカ人が、勤勉な日本人よりお金によくモテるのも事実である。
カリフォルニアのニューポート・ビーチはすぐ目の前にリド島が眺められる風光明媚な土地だが、それよりも壮観なのは湾内につながれた何千という数にのぼる豪華なヨットである。
海岸には、ヨットの持ち主の家にふさわしい堂々たる邸宅が立ち並び、ヨットを見て家を眺めていると、日本人の金持ちなんかみんな貧乏人に見えてくる。
■「儲け方を教えてくれ」と言う人にピシャリ
このニューポート・ビーチのレストランでアメリカ人と食事をしながら、私は思わずたずねた。
「あんな家に住み、あんなヨットに乗っている連中は、一体、どんな仕事をしてる連中かね」
彼はいたずらっぽく笑って教えてくれた。
「デン、仕事をしてるヤツはここにはいないんだぜ」
つまり、儲けるだけ儲けた連中が、あとは人生を楽しむだけだ、と考えてここに集まってくるというのだ。
日本人は貧しいから死ぬまで働くが、彼らは儲けたあとでは必ず楽しむ。その楽しみがあるからこそ、稼ぐときには徹底的に稼ぐのだ。
日本人には金儲けを目的だと心得ている人が多いが、これは間違っている。金儲けは、儲けたあとそれを使って何かをやるための手段にすぎない。
「金の儲け方を教えてくれ」と尋ねてくる人は多いが、私は必ず、「教えてあげてもいいが、儲かったあと、それを何に使うのですか」と聞く。そうすると、ほとんどの人が、けげんそうな顔をして、「儲けたことがないからわかりません」と答える。
■儲けたあとの計画がない人はダメ
これではダメだ。
儲かったらアカプルコへ遊びに行きたいとか、家を買いたいとか、スポーツカーを乗りまわしたい、美人を囲ってみたい、などと、初めに詳細な目的を持っておくのが金儲けのルールである。
金の使い方も知らない人に金儲けの方法を教えても仕方がない。おそらく酒と女に浪費するのが関の山だろう。これでは教え甲斐がない。
人生には酒と女以外にやらなければならないことはたくさんある。やはり、それをやりたいという人に教えたい。
しかも、目的がわかっておれば、どれだけ儲けさせればいいか見当がつくから、そのようにコーチができる。
■無目的に金を儲けると酒と女に走る
学校でもそうだ。医者になりたい、という目的を持っている生徒はそれなら医学部へ進学しなさい、そして、そのためにはこれこれしかじかの勉強をしなさい、とアドバイスすることができる。しかし、進路の定まっていない生徒には、何のアドバイスもできない。
金儲けがしたかったら、金儲けは目的ではなく手段だ、ということに早く気がつくことが、成功するコツである。目的を定めて、そのために儲けるプランを立てることだ。やみくもに金儲けに精を出しても命を縮めるだけである。
無目的に金を儲けると酒と女に走りがちであることは、すでに指摘した通りだが、40歳を越えて目的のない金が儲かると、意外に酒と女にも浪費しないものである。
いや、酒と女に浪費しようとしても、体力と健康の問題があって、思うように体がいうことをきかないのだ。そこで、ふと、何か別のことがあるのではないか、と気づき、遅まきながら目的を作る。
■40歳までに金の使い方を知りなさい
しかし、若いときはこうはいかない。徹夜を重ねてバカ騒ぎをしても体がビクともしないから、貴重な儲けを湯水のごとく浪費して、元の木阿弥になってしまう。
気がついてホゾを噛んでも、もう遅い。浪費癖がついては、二度と儲けを手にすることは望めないのだ。
だから、40歳までに成功したいという人には、とくにこの点を強調しておきたい。40歳までに金の使い方を知りなさい。儲かったあとの目的を作りなさい、と。
人生はたとえプランを立てたところで、そのプラン通りに行くものではない。うまく行ってプラン通りであって、プラン以上にうまく行くことは絶対にありえないといってもいい。
だから、金儲けをする場合も、最低のプランがなければ、とても金など儲からないと知るべしである。
■日本人は「遊び」が下手である
日本人はボウリングがブームというとネコもシャクシもみんなボウリング熱にとりつかれ、ゴルフ・ブームだというと午前4時ごろから起きて我れ先にゴルフ場へ駆けつける。
ゴールデン・ウィークともなると、行き先はみんな同じだから、電車は満員、車は渋滞、出かけた先は人の波で、楽しいはずの行楽が大変悲惨なことになる。
これはすべて日本人が遊びベタだからにほかならない。働くことに馴らされ、遊びを忘れていた貧しい民族の哀れな習性といっても過言ではない。
そこへ行くと、欧米人は自分自身のレジャーを発見し、人生を豊かに楽しんでいる。遊びはなにも他人と同じである必要はない。自分さえ楽しければいいのだから、ブームへ飛びつくことはない。
■ケタ違いの金持ちの「ブッ飛んだ趣味」
私の知っているアメリカ人の中でも、とくに変わったレジャーを楽しんでいるのがラディック氏である。楽器にくわしい方なら、ドラム・メーカーのラディックといえばすぐにおわかりになるはずだが、そこの社長で80歳になる老人である。
このラディック氏の楽しみは、やはり“音”である。それも、そんじょそこらの“音”ではない。大砲をブッ放すのが趣味なのだ。
ラディック氏の隣家の住人であるマイコラス氏は私の友人である。私がマイコラス氏の家を訪れたとき、ラディック氏の“変わった趣味”が話題になり、マイコラス氏がラディック氏の趣味である年代ものの大砲を借りてきてブッ放してみせてくれた。
古ぼけた大砲で、南北戦争に使われたというカノン砲である。私はたかをくくっていたが、いやその音のデカいのなんの。
■毎日のようにドッカーン! ドッカーン!
ところが、ラディック氏、以前は毎日のように、ドッカーン! ドッカーン! と、やっていたのだという。たまりかねた付近の住人たちから、「ラディックの大砲をやめさせろ!」と怒鳴りこまれてからは、年間30発、4日に1発に制限されてしまったのだという。
ラディック老人の仕事は、1日中、ドラムのテストをすることである。仕事をはなれたときぐらい音を忘れればいいのに、と思うのはシロウト考えで、このデッカイ大砲の轟音を聞くのが、ラディック老人の趣味とレジャーを兼ねた精神安定法なのだという。
このラディック老のレジャーには、近所迷惑というマイナスがあるが、レジャーとは本来、個人個人にとって違うものであるべきなのだ。
他人と同じレジャーを楽しんでいるようでは、やはりその相手と同様な収入に甘んじなければならないだろう。ひとよりもうんと儲けたいならば個性的なレジャーを発見し、王侯の楽しみをひとりだけ味わうことである。
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藤田 田(ふじた・でん)
日本マクドナルド創業者
1926年大阪生まれ。旧制北野中学、松江高校を経て、1951年東大法学部を卒業。在学中GHQの通訳を務めたことがきっかけで「藤田商店」を設立、学生起業家として輸入業を手がける。
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(日本マクドナルド創業者 藤田 田)

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