現在、高校生の約2人に1人が「年内入試」で合格を手にしている。追手門学院大学客員教授で学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長の西田浩史さんは「総合型選抜で近年台頭してきた新しい『上位大学』や、ここ10年で人気・難易度を伸ばすと予想される大学がある」という――。

※本稿は、西田浩史『総合型選抜は何を評価するのか いますぐ知っておきたい新しい大学入試のリアル』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■ここ10年で人気・難易度を伸ばす大学は
大学の序列は、ブランド力や実績によって左右されます。
次の図を見てください。全国300塾の関係者に10年後の大学序列を予想してもらった結果を私がまとめた“完全オリジナルの図”です(図表1)。
たとえば、東京大学や京都大学を含む旧帝国大学グループや、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学といった私立難関校のブランドは、10年程度では揺らぎにくいものです。
保護者世代が受験生だったころから現在まで、日本のトップ10大学の顔ぶれは大きく変わっていません。
関東では、GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、芝浦工業大学の中で明治大学が、ここ10年で人気・難易度を伸ばし、10年後もやや頭一つ抜けています。
芝浦工業大学の台頭で、「SMARCH」という新しい大学のグループが登場しつつあります。このあたりの上位校は基本的に今と同じような序列を維持すると考えられます。
■保護者世代が知らない「上位大学」
しかし、他のエリアに目を向けると、大学間の順位は意外に流動的です。
たとえば地方の国公立大学。首都圏や関西圏の大学志向の高まりにより、かつてほど受験生が集まらず入試難度が相対的に下がっているという指摘があります。
保護者の世代よりも確実に合格しやすくなっています。
これは、少子化が著しい、北海道、九州にある旧七帝大の一角、北海道大学や九州大学も他人事ではありません。
地域間で学生の奪い合いが起これば、大学序列にも変化が生じるでしょう。実はその変化はネガティブなものばかりではありません。中堅私大や地方大学の中には、この10年で偏差値や人気度を下げた大学があるのは事実ですが、一方、上げた大学もあります。つまり、二極化しているということです。
「勝ち組」は、近畿大学、東洋大学、千葉工業大学。
とりわけ近畿大学は、積極的な広報戦略やユニークな研究(クロマグロの完全養殖成功など)が話題となり、志願者数全国一(2025年は、千葉工業大学が全国一)を謳った時期もありました。
また、新設校や新興大学が台頭する可能性もあります。
公立の国際教養大学(秋田県)や、私立の大和大学、立命館アジア太平洋大学、また、京都橘大学、武蔵野大学、武庫川女子大学、常葉大学など独自の教育方針によって高い就職実績や学生満足度を誇る大学も出てきています。
ちなみに、京都橘大学、武蔵野大学はいわゆる「老舗」ですが、かつて共学校に衣替えした大学です。武庫川女子大学も2027年度に共学化(武庫川大学)予定です。

このように保護者世代には「上位大学」というイメージがなかった大学にもアンテナを張ることが、とても大切なポイントなのです。
■「看板学部」と「著名な教授陣」
さらに、この「上位大学」の内部での変化も注目ポイントです。近年、大学間の競争が激化しているからです。その競争は大学が持つ研究力や、教育の特色の分野で起こっています。
大学間の競争の激化は、受験生にとってはメリットだらけです。なぜそう言えるのでしょうか? 何のための競争か? を考えればすぐわかります。この競争は大学全体のブランド力を上げるための競争です。受験生に選んでもらうために大学は知恵を絞るわけです。ですから、ブランド力を上げるために大学がどんな取り組みをしているかを確認することはとても重要です。
ポイントは「看板学部」「著名な教授陣」の存在です。
大学内に全国的にも評価が高い学部・学科があれば、それが大学全体のブランド力を引き上げる効果があります。
産業界で著名な実績を持つ、プロフェッショナル人材を教授に迎える大学が増えています。
そのような教授が指導する研究室は、学生にとって大きな魅力となります。
たとえば、ある理系私大ではソニーパナソニックなどで長年活躍した技術者を教授として招き、最新設備の研究室を新設しました。
その研究室で最新の技術を学ぶことで、卒業後に有力企業へ就職できるチャンスも広がるでしょう。
実際、AI(人工知能)など新しい分野では、企業の第一線で活躍した専門家が大学教員(実務家教員)となって講義を行うケースが増えています。
そうした最先端の学びが得られる大学は、たとえ、いわゆる「難関大学」でなくても「この分野ならこの大学のこの学部が強い」という評価で存在感が増すでしょう。
このような大学に入学した結果、企業が求める実践的スキルを身につけることができた例は多数あります。
横浜市にある中堅大学である関東学院大学理工学部に進学した子の話です。
研究室で教授から一目置かれ、その教授の伝手でアメリカの大学院に進学。就職活動時にソニー、日立製作所、楽天など大手企業から引く手数多ということでした。
大学選びにおいては単純な序列表だけでなく、大学ごとの強みに目を向けることも一つの手です。
志望校の候補が決まったら、それぞれの大学に「強い学部があるか」「どんな研究で知られているか」「著名な教授や卒業生はいるか」などを調べましょう。
それらが将来的にその大学の価値を左右するポイントになるからです。

■グローバルという視点
大学入学後、留学や海外の大学院進学など海外を意識しているなら、留学制度の充実度、キャンパス内の留学生比率、海外大学とのダブルディグリー(学位取得)制度の有無、英語で提供される授業科目の数などは必ずチェックしてください。
海外で働きたい、交流したいという意識が強いなら、それを実現できそうな大学を選ぶことで在学中から準備を始めることができます。
たとえば、千葉県の幕張にある神田外語大学は外国人の講師の数が全国トップレベルです。それら講師陣が海外に関するさまざまな最新事情を知っているため、グローバル関連の就職や進学に有利と話す塾関係者は多いです。
とりわけ大使館への就職も多いことはよく耳にします。
また英語以外に、タイ語、スペイン語などの言語を学ぶことができます。首都圏の大学では貴重な存在と言えるでしょう。ここまで贅沢な環境ですが難易度は中堅に位置します。
ちなみに、塾関係者の間では、外国語系で注目の大学として明治学院大学、獨協大学とともに神田外語大学が「外国語系私立大学・新御三家」として語られることもあります。このような大学に進学できれば、卒業後に海外大学院を考える場合、アドバンテージになるはずです。
また、必ずしも海外に行く予定がなくとも、国内にいながら多様なバックグラウンドを持つ学生と切磋琢磨できる環境は、自分の視野を広げてくれるはずです。
これも塾関係者への取材で得た情報ですが、グローバル分野に強い大学はたいてい、学生寮や、外国人と会話できるコモンスペースやサークルが充実しています。
「自分が成長できる環境を選択する」を大学選びの視点に加えてみるのはいかがでしょうか。
なお、大学進学の選択肢として海外の大学に目を向ける高校生も増えてきました。
くわしくは書籍内で述べていますが、英語圏を中心に日本の高校から直接海外大学へ進学する例も珍しくありません。海外の大学は、日本にはない最先端の教育環境やグローバルな人脈を提供してくれる反面、言語の壁や高額な学費といった課題もあります。
学費の面で難しいなら、英語圏ではありませんが、欧米より安価な台湾や韓国などアジアの先進国の大学への留学もおすすめです。治安もよく、日本人の受け入れも慣れている国々です。
いずれにせよ、国内の大学で学びつつ大学院から海外に挑戦するなど、自分に合った形でグローバルな経験を積む道を検討する方法もありますから、このような選択肢があることを頭に入れておくのもいいでしょう。

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西田 浩史(にしだ・ひろふみ)

追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長

大学入試、とくに総合型選抜に関する研究と報道に長年取り組み、全国5000を超える学習塾、2万人超の教育関係者への独自取材を通して、日本の入試制度の変化と現場のリアルを数値化して記録してきた。大学関係者との人的ネットワークを活かし、一般には出回らない総合型選抜の内部資料・運用実態を分析。各大学の選抜基準や選考フロー、面接・事前課題の傾向までを網羅的に調査・可視化し、実践的なアドバイスを行っている。「総合型選抜の裏側まで知る唯一の教育ジャーナリスト」として、受験生・保護者・塾関係者から高い信頼を得る。2016年よりダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者、教育業界専門誌編集者を経て、2019年追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員。
現在は東洋経済オンラインにて「アカデミックシフト-社会人から大学教授になる方法」連載中。メディア寄稿は「デイリー新潮」「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」「サンデー毎日」「現代ビジネス」など多数。著書に『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(ダイヤモンド社、共著、いずれも「週刊ダイヤモンド特集BOOKS」)がある。

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(追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長 西田 浩史)
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