※本稿は、中野信子『脳科学で解き明かすあの人の頭のなか』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■生まれつき記憶力のいい人と悪い人がいる
生まれつき記憶力がいい人というのは確実に存在します。
そういう人は、普通の人と遺伝子の塩基の型がたった一つだけ違うのです。
人間の遺伝子には、さまざまな情報を伝える膨大な数の塩基があります。
そのなかの一つ、ALDHという酵素の塩基の配列が違うことで、アルコール摂取によって発生するアセトアルデヒドを分解できる人とできない人に分かれます。
これと同じことが、記憶力にも起きています。記憶力がいいか悪いかは、お酒に強いか弱いかと似たようなものなのです。
■「変わった人」は脳にいろんな違いがある
自分が世の中から浮いている理由を知りたくて脳科学の道を選んだ私は、研究を進めるうちに、自分と同じような人間が一定数いると知って、安心できた経験があります。
昔はわからなかった脳内のさまざまな反応については、脳や脊髄の活動を視覚化するファンクショナルMRIの登場によって詳しく知ることができるようになりました。
その研究データを見ていくと、脳の一部の機能が未発達であったり、過剰に活動している人たちが一定数、存在します。しかし同時に、脳のほかの領域を使うように努力することで、それらを補うこともできています。
人の顔立ちや体格が違うように、人によって脳にいろいろな違いが出ていたとしても、なんら驚くことではないのです。
■血液型で人はわからない
「あいつはB型だからマイペースだよ」
「いかにもA型らしい仕事ぶりだね」
日本人は血液型の話が大好きです。
血液型によって性格を言い当てる類の書籍もたくさん出版されており、なかにはベストセラーになっているものもあります。
じつは、血液型と性格の関連性を調べるための学術的研究は、日本やアメリカを中心に、大真面目に何度も行われています。
しかしその結果、明らかになったことは「血液型と性格に関連性はない」ということです。
「いや、そんなことはない。間違いなく傾向はある」と主張する人も多いでしょう。
でも、それはもしかしたら、「あなたはO型だから」「やっぱりAB型だと思ったよ」などと言われ続けているうちに刷り込みがなされ、それらしい振る舞いをしているという一面があるのかもしれません。
無意識に血液型に性格を寄せていっているのかもしれないのです。
いずれにしても、血液型で人間を判断しようというのは、知的な態度ではありません。
■すぐもらい泣きする人は成功しやすい
人間の脳には、ミラーニューロンという神経細胞があると言われています。ミラーニューロンは「共感する脳」と言い換えることができます。
この脳が発達していれば、なにかにつけて共感しやすくなります。たとえば、なにか悲しい目に遭ったり、逆に感動したりして泣いている人を見て、もらい泣きしてしまうタイプです。
あるいは、テレビで誰かが温泉に浸かり「ああ、いい湯だな」と言っているのを聞いて、まるで自分まで温泉に入っているような気分になるということもあるでしょう。
このような傾向が強い人について、「自分のことじゃないのにバカみたい」と評する向きもありますが、これも貴重な才能と言えます。
というのも、共感能力が高いために、成功者の考え方や生き方を自分のものとすることができるからです。
成功者を目の当たりにすると、それを脳が勝手にコピーし、自己イメージに重ね合わせ、自然に行動や結果に反映されていくということが、ミラーニューロンによって起こるのです。
■浮気男にハマる女性は浮気男に似ている?
自分の遺伝子を少しでも多く残したいというのは、生命体として当然の欲求です。ボスザルが、多くのメスと性行為をするのもそのためです。
人間の場合、社会的な規制がかかり、理性も働くため、サルのような露骨な行動はとりません。代わりに、たった一人の女性と子どもをつくり、大切に育てていくという方法を多くの男性が選びます。
一方で、意識してはいないにしろ、たくさんの女性に自分の子どもを産んでほしいという動物的な欲求から浮気を重ねる男性がいます。
このとき、女性の敵とも言えるような浮気男とセックスをする女性がいるからこそ、その欲求はかなえられるわけです。
ではなぜ、そういう女性がいるのでしょうか。
じつは、男性と同じことを考えているのかもしれません。
女性の場合、妊娠・出産・子育てには長い時間がかかるため、男性のようにたくさんの遺伝子を残すことは現実的にできません。しかし、自分が産んだ息子があちこちで浮気をしてくれれば、結果的に自分の遺伝子をばらまくことになります。
そして、そういう浮気性の息子を持つためには、浮気性の男とセックスするのがいい方法なのです。
■いくら叩かれても心理的ダメージを受けない人の脳
世の中には、一般的に「とんでもないことだ」と憤慨されるような話を平気で口にする人がいます。たとえば、「3人を助けるためには、罪のない1人を殺してもいい」とためらうことなく言うような人です。
一般的には、「罪のない人を殺していいはずがない」と考えられますが、彼らにとっては、道徳的判断よりも「3人助けられる」という合理的判断こそ正しいのです。
彼らは痛みを伴う改革などをやり遂げることが得意で、合理的な結果が得られるのであれば、いくらでも人を切り捨てることができます。しかも、合理性を重視するあまり、周囲からバッシングを受ける理由が理解できません。だから、いくら叩かれてもその態度は変わることがないのです。
■身内から嫌われる経営者ほど成功する
あるドイツの研究チームは、「社会的・経済的に地位が高い人にはサイコパスが多い」という結論を導き出しています。
論文タイトル:The ‘successful psychopath’ concept: An empirical investigation of employee―coworker dyads (「成功したサイコパス」という概念:従業員と同僚のペアによる実証的調査)/著者:Gerhard Blickle, Nora Schütte, Paul J. W. Piwinger/掲載雑誌:Journal of Management(2016年)
実際に、大企業のCEOや外科医、弁護士など、世の中から尊敬される立場にある職業にはサイコパスが多いことがわかっています。
彼らは仕事上、人の意見に流されることなく大胆な判断を下す必要があり、むしろ身勝手なサイコパシー傾向が役に立っているとも言えます。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズは変わり者だったことで有名で、「彼のような人の下では二度と働きたくない」と訴える元従業員がたくさんいます。
しかし、外から見ている分には、ジョブズはとても優秀で魅力的です。
経営者がすべてそうだというわけではありませんが、身内にとって嫌なやつほど成功するとも言えるのです。
(中野信子)

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