米国とイスラエルから空爆を受けたイランが、ホルムズ海峡を封鎖した。その結果、世界の原油価格やガス価格は急騰を余儀なくされている。
長期化のリスクに鑑みたとき、欧州と日本はそれぞれ、大きな課題に直面する。欧州の場合、エネルギーの脱ロシア化を本当に今後も進めるのかという経済安全保障戦略の再考が求められる。より大胆に言えば、ロシアとの関係をこのまま大きな亀裂が入ったままにしていていいのかということだ。ウクライナを見捨てろと言うわけではない。
米国にロシアとウクライナの停戦協議の仲介役を期待するのはもう無理だろう。ロシアとウクライナを停戦に誘導するために、EUにはより主体的な行動が求められる。同時に、欧州はロシアとの関係の改善を模索する必要がある。この点に関しては、欧州の実質的なリーダーであるフランスのエマニュエル・マクロン大統領も認めるところだ。
■「脱ロシア」の欧州、「円安放置」の日本
そもそも欧州には、1970年代の中東発のエネルギーショックを経て、エネルギー調達の多様化を図る観点からロシア(当時の旧ソ連)に接近した経緯がある。友好関係が維持されていれば、地理的に最も近い産油国であるロシアからエネルギーを調達することは経済的には合理的な判断だった。
仮にロシアとの関係を上手くマネジメントできていれば、欧州はロシア発のエネルギーショックの悪影響を、あれほど強く被ることはなかっただろう。今回のイラン発のショックを受けても、エネルギー価格の上昇は抑制されたはずだ。言い換えれば、欧州は一段のエネルギー高を受け入れてまでエネルギーの脱ロシア化を進めるのだろうか。
対する日本だ。一部のエコノミストは、インフレに影響するのは円安よりも資源高だと説明する。確かに、輸入物価指数の変動を要因分解すると、為替よりも化石燃料価格の動きに左右される。とはいえ、輸入物価指数が金額規模の大きい化石燃料に左右されることは統計の作成法から言って当然で、円安の影響を軽視する理由にはならない。
それに、化石燃料、つまりエネルギーの価格は、少なくとも供給サイドに関しては日本がコントロールできない外生変数である。要するに、イランで発生したショックに基づくエネルギー高の悪影響を、日本が自らの手で和らげるには、通貨高に誘導してエネルギーの輸入価格の上昇を抑制する以外に、一義的な方法は存在しないのである。
■悪影響は“円高”で抑制できるのに…
一方、通貨と物価の番人である日銀は、物価目標を達成してすでに3年以上が経過しているのに、利上げに慎重な姿勢を堅持する。政府もまた、高市首相のハト派志向が強いことで知られる。
それどころか、仮に世界的な高インフレの再燃を受けて欧米が利上げに回帰した場合、日本がスローな利上げに終始すれば、円安がさらに進むことになる。ただ、日本が欧米並みのテンポで利上げを進めたとしても、現在の1ドル160円前後の、1ユーロ185円前後の水準をどう守るかという、極めて厳しい現実が待っていると考えられる。
それでも、今の水準を維持できれば、エネルギー高の悪影響は増幅されない。しかし景気を優先する名目で利上げを回避し、円安を放置すれば、エネルギー高の悪影響が増幅されるため、結局のところ景気は悪くなる。それでも日本は、コストプッシュ型のインフレなのだから追加利上げは不要だとの論理に基づいて、円安を放置するのか。
■外部環境の変化に脆弱なままでいいのか
欧州は経済安全保障の問題であり、日本はマクロ経済運営の問題であるため、同列で議論することは不適当だという意見もあるだろう。ポイントは、欧州も日本も、基本的にはエネルギーの純輸入国だということにある。外生的なエネルギーショックが生じたとき、それを抑制するための政策手段を持つ必要があるという点で共通している。
イラン発のエネルギーショックが長期化しても、欧州がロシアとのパイプを維持していたら、エネルギー価格の上昇をある程度は抑制できただろう。また日本が円高誘導に努めることができれば、エネルギー価格の上昇に伴う悪影響を軽減できる。
この話は、外部環境が劇的に変化した場合、それに対応できる余地をどう担保しておくかという戦術論でもある。様々な方向との間でバランスを取っていれば、一つの方向からショックを受けても、その悪影響を緩和することができる。そもそも貿易の多角化とは、そうした外生的なショックから身を守るためのバランス戦術だったわけだ。
それに外生的なエネルギーショックが生じたとき、通貨高に誘導できれば、その悪影響を緩和できる。ところが日本は、円安の是正には消極的である。政策運営の時間軸の違いはともかくとして、外部環境の変化に伴う悪影響の緩和に努めず、国民生活に強い負担を押し付けるという点においては、欧州と日本は同じ穴の狢だと言えよう。
■円安放置が日本の“余地”を狭めている
さて以上は、イラン発のエネルギーショックが長期に及んだ場合に懸念される事項だ。基本的に、今回のエネルギーショックは短期で収束すると考えられるため、懸念は杞憂となろう。ただし、今後も外生的なエネルギーショックが生じるたび、エネルギーの純輸入国は同様の懸念に晒される。政策対応の余地は大きいに越したことはない。
一方、特定の方向に偏った経済運営に終始すれば、外生的なエネルギーショックに対して、それを和らげる適切な対応が取れない。
気がかりな点として、ハメネイ師の後継の体制が、イランという難しい国を適切に統治できるかということがある。言い換えれば、イランが中長期にわたって不安定化することで、中東発のエネルギーショックが蒸し返されるリスクがあるということだ。外生的なショックの緩和という観点から、経済運営の在り方が問い直されるべきである。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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土田 陽介(つちだ・ようすけ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。
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(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 土田 陽介)

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