■王者に挑み続けた代償
半世紀以上の歴史があるハンバーガーチェーン「ロッテリア」が、全店で「ゼッテリア」に看板を掛け替え、2026年3月末までに消滅することになった。
ロッテリアは全盛期の2009年には500店を突破し、店舗数でマクドナルド・モスバーガーに次いで3番手につけていた。しかし近年は店舗網も縮小傾向にあり、「すき家」「はま寿司」などを傘下に持つ「ゼンショーホールディングス」(以下:ゼンショーHD)合併後も赤字を出すなど経営再建に苦心し、店舗数も273店まで減少している。
ロッテリアはなぜ、半世紀以上も続いたブランド名を脱却しなければいけないほどの経営不振に喘いでいたのか? その原因は「マクドナルド『サンキューセット・59円バーガー』対抗の余波」「不屈のディスカウンターであったが故の“自滅”」にある。
「ロッテリア」「ゼッテリア」の運営を担う「株主会社ロッテリア」(2月16日より「株式会社バーガー・ワン」に社名変更)の売上を見る限り、2021年3月期は「売上175億円・赤字4億5000万円」、2023年3月期は「売上195億円・赤字2億400万円」と、2度の赤字を記録している。
特に、ファストフード各社がテイクアウト・宅配需要に助けられた2021年ですら大幅赤字という事実からも、ロッテリアだけがトレンドに乗り切れていない「一人負け」感が伺える。
50年も支持を受けてきた「ロッテリア」ブランドの消滅は、これまでの顧客を離反させかねない賭けでもある。なぜ、このような決断に至ったのか? まずは「ロッテリア」誕生の背景と、運命を変えた「マクドナルド・59円バーガー投入」から“自滅”に至るまでの「ロッテリア・50年史」を辿ってみよう。
■「カフェテリア」で500店まで駆け上がった
製菓会社である「ロッテ」が1972年に創業した「ロッテリア」の原点は「ロッテ(の商品)+カフェテリア」。自社のアイスクリームや冷菓を提供しつつ、ゆったりくつろげるカフェ(カフェテリア)業態を、ロッテが自ら作り上げたのだ。
折しも、1970年に開催された大阪万博でハンバーガーがブームになっており、「マクドナルド」「ドムドムバーガー」だけでなく、「森永ラブ」「サンテオレ(明治製菓)」「グリコア(グリコ)」など、製菓会社のアンテナショップ的な役割も兼ねたハンバーガーショップが、数多く誕生している。
ロッテリアの創業当時の広告には「ファミリーレストラン」と記されており、マクドナルドよりお高目な180円~300円のハンバーガーや「ロッテシェーキ」などのアイス商品を武器に、都内の一等地にも躊躇なく出店を果たしていった。
その後は1977年に「エビバーガー」、1984年に「リブサンド」といったヒット商品も飛び出し、2009年の500店突破まで、順調に成長していく。
■「10円安く」から始まった泥沼
そんなロッテリアの運命を狂わせたのが、ロッテリアの前年に創業した「マクドナルド」との2度にわたる価格競争、ディスカウントだ。
まず1987年、マクドナルドは通常なら520円の「バーガー+ポテトS+ドリンクS」を390円に設定。「サンキューセット」として販売したところ、この年の「新語・流行語大賞」にノミネートされるほどの、爆発的なヒットを記録したのだ。
既に多店舗展開していたモスバーガーは対:マクドナルドで大きな打撃を受け、各社とも「わが社は素材重視」「安易に安売りに走らない」といった宣言とともに、競合を避けた。
その中でロッテリアは、マクドナルドとまったく同内容のセットを「サンパチトリオ」として、マクドナルドより10円安い380円で販売、真っ向からの勝負に出た。すると、マクドナルドが360円の「サブロクセット」販売でロッテリアに対抗……おにぎり1個が300円を悠々と超える令和の価値観では、とても考えられないディスカウントぶりだ。
こうして2社の競争は果てしなく続き、次回来店を促すクーポンも、現場の判断でどんどんバラ撒かれた。当時は、王者・マクドナルドとの価格競争に食らいつく存在として、ロッテリアを支持する人々も、それなりにいたのだ。
2002年にマクドナルドが「ハンバーガー59円」という業界最安値を打ち出した際にも、ロッテリアは先に述べた「サンパチトリオ」を300円に値下げして対抗し、ファンの喝采を浴びた。
しかし、このイメージがロッテリアを苦しめるようになった。
■安売りで客を掴み、安売りで失った
ハンバーガーショップの客層の傾向として、サンキューセットや59円バーガーを支持する「ディスカウント支持層」と、高単価でも満足のいく逸品を求める「グルメバーガー支持層」が存在する。
前者は「利益を削った奉仕販売」後者は「満足できる食体験」を周囲に伝えるインフルエンサー的な役割を果たすため、集客と安定経営を両立させるには「ディスカウント支持層」と、高単価でも満足のいく逸品を求める「グルメバーガー支持層」を、両立する必要があるのだ。
マクドナルドは激安商品も定期的に世に出していたが、同時に「クオーターパウンダー」「メガマック」などプレミア感がある高単価商品を世に出し、グルメバーガー支持層にも応えていた。
しかし、ロッテリアはディスカウント層の支持にこそ全力で応えたものの、「エビバーガー」「絶品チーズバーガー」以上のヒット商品を出せず、グルメバーガー支持層を動かすことができなかった。
いわば“片肺飛行”ともいえる支持層の偏りが、ロッテリアを苦しめていく。
ロッテリア内部でも「安売り依存」への危機感は持っていたようで、マクドナルドとの価格競争のあとに重光昭夫副社長(当時)が「ディスカウント路線の撤回」を明言していた。にもかかわらず、その後の消費税増税のタイミングで「(逆に)30円値下げ」を実施するなど、緩やかに方針がブレていたのは否めない。
こうなるとロッテリアは「不屈のディスカウンター」イメージだけが先行してしまい、「むかし安かった店」として、あっさり顧客に忘れられてしまった。当然のことだが、「ディスカウント支持層」は、ディスカウントしないと支持してくれないのだ。
■安い店にもくつろげる店にもなれなかった
さらにロッテリアは、高単価商品をゆっくり味わえる店内環境を整える「カフェ化」のトレンドにも乗り遅れた。
こうなると、先にカフェ化を進めたマクドナルド・モスバーガーとの差が開くだけでなく、顧客を掴んでいた「ドーナツ100円セール」を中止してでも店舗のカフェ化を優先させた「ミスタードーナツ」、フードを充実させたカフェ「ドトール」「スタバ」との競合も生じ、選ばれなくなるのは、必然の話だ。
対:マクドナルドとのディスカウント競争で燃え尽きたロッテリアは「ただ安いだけ、店内の居心地がいまひとつなチェーンストア」になり、500店以上もあった店舗は、いまや「バーガー・ワン」傘下で273店舗にまで縮小してしまった。これが、マクドナルドを相手に「不屈のディスカウンター」を演じたロッテリアが歩んだ「自滅」へのストーリーだ。
■マックは「戦略」ロッテリアは「やせ我慢」
マクドナルドとロッテリア、2度にわたる価格競争には、実はウラがある。
「サンキューセット」が発売となった1987年は、いわゆる「プラザ合意」で極度の円高が進み、輸入食材が多いマクドナルドは莫大な差益を手にしていた。さらに、「59円バーガー」が発売となった2002年はBSE(狂牛病)で牛肉への信頼が揺らいでいたころでもあり、牛肉パティの消費に寄与したマクドナルドは、輸入業者・畜産業者に莫大な“貸し”を作ることができた。
マクドナルドのディスカウントは2度とも今後の戦略を重視したもので、必ずしも利益を獲る必要がなかったのだ。
一方でロッテリアの値下げ実現の原資は「企業努力」、ひとことで言い換えると「気合」であった。マクドナルドvsロッテリアの価格競争は「戦略的値下げvsやせ我慢」とも言えるもので、無理のある値下げにロッテリアが踏み切った時点で、勝負は決していたのだ。
こうして年月が経ち、マクドナルドは王者の余裕で「ディスカウント支持層」「グルメバーガー支持層」を総取りし、値下げに追従しなかった「モスバーガー」は商品力で生き残り、大手ではロッテリアだけが独り負けした。
「サンキューセット」「59円バーガー」に端を発した価格競争から教訓を得るとすれば、「ディスカウント支持層は、ブランド支持を表明していてもすぐ逸走する」「対抗措置も取ろうにも、企業体力を失っては元も子もない」「何だかんだで、結局は商品力(美味しくてバリューがあるかどうか)」といったところか。
■「グルメバーガー」のヒット商品づくりが急務
ロッテリアは、「絶品バーガー」「ゼ」を頭文字にとった「ゼッテリア」への転換とともにソース、パン、肉などの具材をことごとく見直し、「グルメバーガー化」を図っていくようだ。
もちろん、1兆円企業・ゼンショーHDのもとで、食材仕入れ・調達能力も磨き上げていく。なにぶん、「コメ」「肉」などのカテゴリごとに専任業者を立ち上げるほど仕入れコスト管理にこだわるゼンショーなら、ゼッテリア(バーガー・ワン)の企業体力を損ねることなく、それなりの原価を維持できるだろう。
なお、マクドナルドも2月25日からハンバーガーを含む6品の値上げを発表しており、もはや安売り競争を仕掛けてくることもなさそうだ。
ゼッテリアは、「ロッテ」の看板をおろす転機とともに「ロッテリア」ブランドの負の部分を拭い去る必要がある。まずは、高単価でプレミアム感がある「グルメバーガー」カテゴリでのヒット商品づくりが急務となる。実現できなければ、「ゼッテリア」が「第二のロッテリア」になることは、必然だ。
その先導を担うのは、従来のロッテリアにはあまりなかった「和」要素を重視した期間限定商品「大葉タルタル絶品たまてりバーガー」販売に力を注ぐという。食材を一新した「絶品バーガー」をまず知ってもらい、ロッテリアを抜いて店舗数3位に躍り出た「バーガーキング」などのグルメバーガーと比べてもらうことが、「ロッテリア」を引き継いだ「ゼッテリア」再生の入り口となる。
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宮武 和多哉(みやたけ・わたや)
フリーライター
大阪・横浜・四国の3拠点で活動するライター。執筆範囲は外食・流通企業から交通問題まで、元・中小企業の会社役員の目線で掘り下げていく。
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(フリーライター 宮武 和多哉)

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