※本稿は、田原優『集中力を爆上げするカフェインの教科書』(日本能率協会)の一部を再編集したものです。
■コーヒーを飲むとトイレが近くなる理由
みなさんはコーヒーやお茶を飲むとトイレが近くなった経験はありませんか? これはカフェインとアデノシンの関わりによるものです。
アデノシンは腎臓でも働きます。腎臓の働きは、血液中の不要な水分や老廃物をろ過して、体の外に尿として排出することです。腎臓のアデノシンは血管を収縮させる役割を持っています。ところがカフェインを摂り入れると、それがブロックされる。アデノシン受容体阻害作用ですね。血管の収縮がなくなるのです。
また腎臓に入ったすべてが尿として排出されるわけではありません。必要な水分や栄養素などをもう一度体内に戻します。再吸収と呼ばれる腎臓の役割です。
アデノシンはこの再吸収にも関わっているんですね。ところがカフェインが入ることで、再吸収が抑えられます。血流量が増え、さらに水分や栄養素などが再吸収されにくくなる。だから「カフェインには利尿作用がある」というわけです。
ただし付け加えておくと、トイレが近くなることはわるいともいえません。むくみの予防という意味では、逆によい作用だったりもします。一方で、研究によってはコーヒー摂取は、水の摂取と同等の水分補給効果があるため、水分補給として適量のコーヒーを飲むことも脱水予防には大事という意見もあります。
利尿作用にも個人差があるので、自分のカフェインに対する応答を見極めるといいですね。
■「ゆるやかに幸せな気分に」なる
アデノシンには、脳をリラックスさせ、ドーパミンの働きを抑える作用もあります。ドーパミンとは快感や多幸感を得たり、やる気を出させたり、運動や学習にも関与する脳内ホルモンです。
たとえば覚醒剤はドーパミンに影響を及ぼす薬物です。
一方でカフェインの効き方は、覚醒剤とは違っています。
繰り返しますが、カフェインはアデノシンの働きをブロックします。つまり「ドーパミンの抑制」を抑制することに。結果としてドーパミンの効果は間接的に高まります。ゆるやかに、幸せな気分にさせてくれるわけです。カフェイン入り飲料の多くが嗜好品として親しまれている理由がわかりますよね。
さらにカフェインには消化器官を刺激し、胃酸の分泌を促す効果もあります。そのため、空腹時に飲むと胃酸過多で胃が荒れるという可能性があります。ただ、これも良し悪しで、食後であれば直前に食べたものの消化を助けてくれます。「食後のコーヒー」「食後のお茶」というのは、この意味で理にかなっているといえるでしょう。
■「ドーピング」とみなされた過去もあった
本書では「アスリートがカフェインを用いる」という話を紹介しました。
カフェインは過去にはドーピングとみなされていました。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)がカフェインを禁止物質としていたんですね。2004年からは認められるようになりましたが、今でもモニタリングは続けられているという状況です。
ただカフェインはドーパミンの効果を高めることに加えて、インスリンやアドレナリンの分泌も増やします。また、カフェインの基本的な作用である「疲労感がなくなる」ことはアスリートには大きなメリットでしょう。
一方で多量のカフェインを日常的に摂り続けていればリスクもあります。手足のふるえや頭痛などが起これば、もう競技どころではないですよね。これはアスリートでなくとも同じことです。
つまり、いい面もあれば、わるい面もある。カフェインにおいても付き合い方が大事だということです。
■脂肪燃焼作用も期待できる
運動の話ついでに、ダイエット効果にも触れておきましょう。
交感神経は心拍数や血圧を高めるなど、身体の「アクセル」役です。これは「ブレーキ」役となる副交感神経とともに働いています。副交感神経=リラックスさせるものということを知っている方も多いのではないでしょうか。
交感神経がカフェインにより活性化されると、ホルモン感受性リパーゼという酵素も活性化されます。この酵素が脂肪燃焼作用を発揮すると考えられているのです。
ダイエットはこの本のテーマではないのですが、これも時間を効率的に使うという点でタメになるのではと思います。実は体内時計を知ると、さらに効率的なダイエット法も見えてきます。本書で触れていますので、気になる方はご覧ください。
カフェインについては疫学からも多くの効果が示されています。疫学とは、いつどこでどんな人がどんな病気にかかるのか、その原因や影響を多くの人への調査をもとに研究し、病気の予防や健康に役立てる学問です。
カフェインの健康効果についても、何千、何万もの診断データをもとにいろいろなことがわかっています。
■コーヒーを飲んでいる人ほど「死亡」リスク減
最初に紹介するのは「カフェインで長生きする」という研究です。
大阪大学や東北大学などの研究者が2019年にアメリカの学術誌へ発表した論文によれば、コーヒーを飲んでいる人ほど死亡リスクが低いというデータが出ています。
(Junya Sado et al.(2009).Coffee Consumption and All-Cause and Cardiovascular Mortality ―Three-Prefecture Cohort in Japan―.Circulation Journal, 83, Issue 4,757-766.)
調査では、大阪府・京都府・宮城県の男女8万2809人(40~79歳)を対象に摂取頻度などを質問。「まったく飲まない」「ときどきは飲む」「1日に1~2杯飲む」「1日に3~4杯飲む」「1日に5杯以上飲む」の5段階で回答してもらい、長期にわたる追跡調査を行いました。するとコーヒーをより多く飲む人ほど死亡リスクは低い傾向に。特に男性では脳卒中、女性では心疾患による死亡リスクが低いというデータが表れました。
また、イギリスのUKバイオバンクでは、約39.5万人に対して同様の調査を行っています。これによれば、コーヒーを多く飲んでいる人は心臓病や糖尿病、また消化器系の疾患リスクが低いという結果だったそうです。
(Can Hou et al. (2022). Medical conditions associated with coffee consumption: Disease-trajectory and comorbidity network analyses of a prospective cohort study in UK Biobank. The American Journal of Clinical Nutrition, 116, Issue 3, 730-740.)
さらにアメリカの国立がん研究所(NCI)の研究チームは、同じくUKバイオバンクのデータベースを活用し「1日2杯以上の紅茶を飲む人はそうでない人に比べて、あらゆる原因による死亡リスクが低い」という調査結果を発表しています。
(Maki Inoue-Choi et al. (2022). Tea Consumption and All-Cause and Cause-Specific Mortality in the UK Biobank. Annals of Internal Medicine, 175, Number 9.)
■コーヒー1日3杯以上で「認知症」「パーキンソン病」リスク減
次は高齢社会に対する朗報です。「カフェインは認知症やパーキンソン病のリスクを下げる」という研究結果を紹介しましょう。
中国の研究者や複数の大学・病院が先ほどのUKバイオバンクの約20万人を対象にした調査です。
(Tingjing Zhang et al. (2024). Associations between different coffee types, neurodegenerative diseases, and related mortality: findings from a large prospective cohort study. American Journal of Clinical Nutrition, 120(4), 918-926.)
この研究では、コーヒーを「砂糖入り」「人工甘味料入り」「無糖」「カフェイン入り」「カフェインレス」と種類別に分け、認知症やパーキンソン病などとの関連を調べました。
その結果、無糖のカフェイン入りコーヒーを1日3杯以上飲む人は、コーヒーを飲まない人と比べ、認知症とパーキンソン病のリスクが低かったという結果が出ています。
同様に日本の国立がん研究センターは、日本人1155人を20年間追跡した結果を発表しています。この研究では緑茶、コーヒーの摂取頻度についてアンケートを行い、調査対象者の認知機能について調べたところ、「緑茶を1日2~3杯飲んでいる人は1日1杯以下と比較し、認知機能障害のリスクが44%低下」「53歳以上で比較した場合、コーヒーを1日1杯以上飲んでいる人は認知機能障害のリスクが46%低下」という結果が表れました。
(Akihiro Koreki et al.(2025). A longitudinal cohort study demonstrating the beneficial effect of moderate consumption of green tea and coffee on the prevention of dementia:The JPHC Saku Mental Health Study. Journal of Alzheimer’s Disease,103,Issue 2.)
■“ヨボヨボ防止”にも効果的
最後に紹介するのは、体の機能を保つのにカフェインが効くという研究です。
みなさんはフレイルという言葉を聞いたことはありますか? フレイルとは、年をとることで起こる心身の衰えを指します。具体的には、筋力や気力の低下などで、基準はさまざまです。
実は、このフレイルの予防や軽減にもカフェインが効果を発揮するという研究があるのです。
この研究は、オランダで行われたものです。55歳以上の1161人を対象に、コーヒーの摂取頻度とフレイルの程度を調査したところ、「習慣的なコーヒー摂取量が多い人ほどフレイルの発症リスクが低い」という結果が示されました。
(Mette van der Linden et al.(2025).Habitual coffee consumption and risk of frailty in later life: the Longitudinal Aging Study Amsterdam.European Journal of Nutrition,64(164).)
またスイスやシンガポールなどの研究チームは、コーヒー豆に多く含まれるトリゴネリンという成分が筋肉の健康や機能改善に役立つという調査結果を発表しています。
いずれもカフェインそのものずばりの影響を明らかにしたわけではありません。ですが、コーヒーやお茶などを飲む習慣が健康につながるという多くのデータは、やはりカフェインの大きな力を示しているといえるのではないでしょうか。
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田原 優(たはら・ゆう)
広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授
1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学研究科修了。博士(理学)。2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部助教、19年より早稲田大学理工学術院准教授を経て、22年より現職。研究開始当時より体内時計の研究を継続。発光イメージングによるマウス体内時計測定、食・運動・ストレスによる体内時計の調節などの成果を発表。新しい研究分野として時間栄養学の立ち上げに関わる。
現在は、時間健康科学として、個人に合わせた健康管理システムの創出を目指し、企業と連携しながら日常行動の最適なタイミングについて研究を進めている。著書に『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法』(共著、杏林書院)などがある。
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(広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授 田原 優)

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