カフェインを摂取する際には、どんなことに気をつけたらいいのか。広島大学大学院医系科学研究科の田原優准教授は「摂り方によっては毒にも薬にもなる。
日頃から砂糖入りのコーヒーを飲む人はもちろんだが、お茶割りやエナジードリンク割りを好む人はより注意が必要だ」という――。(第6回)
※本稿は、田原優『集中力を爆上げするカフェインの教科書』(日本能率協会)の一部を再編集したものです。
■カフェインは化学的に作れる
みなさんは「自然由来のカフェイン」「天然カフェイン」といった言葉を見聞きすることはありませんか? カフェインはコーヒー豆やカカオ豆、茶葉などの植物に含まれるのに、あえて「自然由来」とうたうのはなぜでしょうか。
これは逆にいえば、カフェインは化学的にも作れるということ。人工甘味料や人工調味料があるように、人工カフェインもあるのです。
カフェインを人工的につくる方法は1895年、ドイツのエミール・フィッシャーという化学者が発見しました。尿素という化学物質から合成していくことで、人工カフェインができあがります。フィッシャーはこれ以外にもさまざまな功績を残し、1902年にノーベル化学賞を受賞しています。
化学的にいえば、カフェイン自体の構造は天然でも人工でも変わらないため、効果もほぼ同じだといわれます。ただ、食品ラベルなどにはカフェインの製造方法までは基本的に書かれていないので、人工的なものが気になる方にとってはちょっと厄介かもしれません。
本書でお伝えしていますが、カフェイン量の表示は義務ではないですし、製造方法の記載も求められてはいないからです。
■「無水カフェイン」は飲料や薬に入っている
また「無水カフェイン」というものもあります。
名前のとおり、カフェインから水分を除いたものでパウダー状などになっています。こちらは化学的に合成されているとは限りません。天然カフェインでも人工カフェインでも水分を除いたものが無水カフェインです。
たとえばリポビタンDやアリナミンVには無水カフェインが入っています。他にも同様のカフェイン入り飲料はたくさんあります。
無水カフェインは薬品の成分としても登録されています。ですから、眠気覚ましや片頭痛の薬、かぜ薬や鼻炎薬、さらには乗物酔い止めの薬に入っていたりもします。
カフェインは食品から摂れる一方で、このように薬の成分として入れられていることもあります。それだけ私たちの生活に浸透しているともいえるでしょう。
カフェイン習慣は、カフェイン入り飲料そのものだけに目を向ければいいわけでもありません。たとえばコーヒーに砂糖を入れる方も少なくないと思います。砂糖を入れると苦みが和らぎ、飲みやすくなりますよね。

この感覚は、マウスも同じようです。一つ、私たちのグループが行った、ある研究での裏話から紹介しましょう。
■実験マウスは“砂糖入り”なら飲んでくれた
そのとき私は、カフェインが体内時計に与える影響を調べるために、マウスを用いた実験を考えていました。具体的には、カフェイン入りの水をマウスに与える。そして、活動の変化を観察するというものです。
ところが、実験の最初からつまずきました。カフェインは苦味があるので、マウスが飲みたがらなかったんですね。
「マウスがカフェイン水を飲んでくれなくて……」
私のぼやきに、研究仲間がぼそっとつぶやきました。
「砂糖を混ぜてみたら?」
なるほどなと思いました。たしかに私たち人間もコーヒーに砂糖を入れて飲んでいる。エナジードリンクには甘味がつけられている。そこで甘いカフェイン水をマウスに与えるという研究方法をとることにしました。
砂糖、または人工甘味料で甘味をつけ、マウスに一定期間与えました。
するとどうでしょう。甘いカフェインを与えたマウスは体内時計が遅れ、夜行性だった行動が昼行性へと逆転していくという結果が表れました。(図表1)
「甘味のあるカフェインが体内時計の針を動かしたのではないか」ということです。ただし実験では、甘味によってマウスが飲むカフェイン水が増えたわけではありませんでした。飲みやすくはなったけれど、飲む量は変化しなかった。ですからカフェインと甘味が合わさったことでの作用とも考えられます。
■「甘いカフェイン飲料」は昼夜逆転を引き起こす
そもそも私たちのグループではすでに、カフェインだけでも体内時計に影響があることを論文で発表していました。カフェインだけをマウスに与えても、1日の長さが延びました。
(Seira Narishige et al.(2014).Effects of caffeine on circadian phase,amplitude and period evaluated in cells in vitro and peripheral organs in vivo in PER2::LUCIFERASE mice.British Journal of Pharmacology,171,Issue24,5858-5869.)
そして、これに加え、甘味を合わせるとその効果が一気に強く現れるとわかったというのが、この研究でした。
この研究から得た「甘味のあるカフェイン入り飲料は昼夜逆転を引き起こすのではないか」という発表は、メディアやSNSなどで多くの方にとり上げていただきました。なんとなく「そうなのかもな」というイメージがみなさんの中にあったから、話題にしていただいたのかもしれません。

(Yu Tahara et al.(2024).Sweetened caffeine drinking revealed behavioral rhythm independent of the central circadian clock in male mice.npj Science of Food,8,51.)
これは体内時計への影響の例ですが、甘味料とカフェインを一緒に摂るときの注意は他にもあります。
砂糖などの甘味料はドーパミン神経を活性化させます。ドーパミンが快感や多幸感を与えることは本書でも触れました。甘味料も同じです。甘いものを摂ると幸せな気持ちになるのには理由があるのです。甘いものを欲することで、加糖コーヒーやエナジードリンクを飲む量が増えれば、結果的にカフェインの摂取量も増えます。さらに砂糖の場合、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクも高まります。
もちろん「砂糖が絶対にNG」というわけではありません。むやみにたくさん飲むというのは避けたほうがいいという話です。いつも甘いカフェイン入り飲料を選ぶという方は気をつけてみてください。
■「お茶×アルコール」は酔いが回りづらくなる
アルコールとカフェインの関係についても実は注意が必要です。
ある懇親会に参加したときのことです。
「ジャスミンハイ、おかわり」と何杯も頼む方がいらっしゃいました。「最近これにハマっていてね」とニコニコしながら。焼酎をジャスミン茶で割ったジャスミンハイ。これ以外にもウーロンハイや緑茶割りなど、お茶とアルコールの組み合わせは、一定の市民権を得ているようです。
また、世界にはコーヒーにお酒を入れる文化もあります。コーヒーとアルコールを組み合わせたカクテルやコーヒーを原料に使ったコーヒーリキュールもあります。これらに含まれるカフェインについて意識している方は少ないのではないでしょうか?
ではカフェインとアルコールを同時に摂ると、どうなるのか?
この場合、カフェインによる覚醒効果によって、アルコールの酔いが回りづらくなります。先ほど紹介したエピソードのように、人によっては何杯もおかわりする方も出てきます。ですが、カフェインとアルコールを同時に摂ると、酔いづらくはなっても、それらが相殺されてなくなるわけではありません。微量でもカフェインを摂ることになりますし、アルコールはアルコールで体に吸収されていきます。すると気づかないうちにアルコールを摂りすぎてしまうリスクがあります。
■「エナドリ割り」は注意が必要

写真=iStock.com/bauwimauwi
※写真はイメージです
他にも、お酒をエナジードリンクで割る飲み方には注意が必要です。
2018年にはカナダ保健省が、飲みすぎることでアルコール依存症やアルコール関連の傷害や死亡事故につながる可能性もあるとして注意喚起しました。日本でも注意喚起され、近年では2024年に農林水産省がXの公式アカウントから注意を促しています。
お酒もカフェインも嗜好品。たしなむ程度がベストです。「カフェイン入りのお酒は1杯まで」と決めるなど、両方を一緒に摂りすぎないように意識しましょう。
お酒を飲む習慣について「休肝日を設けましょうね」という注意はよく聞くと思います。
厚生労働省は2024年に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表しました。この中に「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」という留意があります。飲酒の習慣はアルコールへの耐性を強めます。飲酒量が増えれば、依存や中毒にならないとも限りません。
公益社団法人アルコール健康医学協会では具体的に「週に2日は肝臓を休める」ことを勧めています。またポイントは週5日の飲酒の後に2日続けて休むのではなく、2~3日飲んだら1日休むということ。こまめな休肝日が体への負担を和らげ、依存症を防ぐことにつながります。
■カフェインは「1週間で耐性がつく」
これはカフェインにも応用ができると思います。
アメリカのある研究チームが行った実験には、カフェインの耐性について興味深い結果が挙げられています。実験では、健康な成人男性12人に1日3回400mgのカフェインを摂ってもらいました。すると酸素消費量が上がり、代謝機能が向上したそうです。
(M.H.Bonnet,D.L.Arand.(1992).Caffeine use as a model of acute and chronic insomnia.Sleep,15(6),526-536.)
と、ここまでは前段です。興味深いのは、実験を続ける中で「カフェインによる代謝機能の増加が小さくなった」ということです。カフェインの耐性がついたのですね、それも1週間で。
コーヒーを毎日飲み続ける実験です。「そんな量では耐性もつくだろうなあ」と思わないでもありませんが、それにしても「1週間で耐性がつく」とは見逃せないポイントでしょう。個人差はあっても、思うよりもすぐにカフェインの効果が発揮されなくなる可能性があります。耐性をつけないことは、摂取量の増加を防ぐ第一原則のようなもの。そこで「休肝日」です。カフェインと仕事が結びついている場合は、平日は毎日飲んでいるかもしれません。ならば、たとえば「水曜と、土曜はカフェインレスに変える」と決めてみる。カフェイン習慣を見直してみてください。
■不必要におそれず、上手に使いこなす
本稿や第5回では、カフェインに関する少しこわい話を紹介してきました。ご自身を顧みて考えるところがあった方もいるのではないでしょうか。
でもこれは他のものでも同じです。使い方を間違えれば、どんなによいものでもリスクはありますよね。車だってルールを守らなければ事故につながります。けれど、ちゃんと使えばとても便利なものです。
カフェインも上手に使いこなせば、おそれることはありません。もしも間違いがあれば、直せばいいのですから。不用心に用いず、不必要におそれず。上手な付き合い方で、仕事も生活も豊かにさせていきましょう。

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田原 優(たはら・ゆう)

広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授

1985年生まれ。早稲田大学理工学部、同大学大学院先進理工学研究科修了。博士(理学)。2015年より早稲田大学高等研究所助教、17年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部助教、19年より早稲田大学理工学術院准教授を経て、22年より現職。研究開始当時より体内時計の研究を継続。発光イメージングによるマウス体内時計測定、食・運動・ストレスによる体内時計の調節などの成果を発表。新しい研究分野として時間栄養学の立ち上げに関わる。
現在は、時間健康科学として、個人に合わせた健康管理システムの創出を目指し、企業と連携しながら日常行動の最適なタイミングについて研究を進めている。著書に『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法』(共著、杏林書院)などがある。

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(広島大学大学院 医系科学研究科 公衆衛生学 准教授 田原 優)
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