■マンガワン騒動で対応を誤った小学館
小学館が運営する漫画アプリ「マンガワン」で、「山本章一」名義で連載していた原作者が、未成年女性への性加害で逮捕・略式起訴され連載中止になったにもかかわらず、その後「一路一」へとペンネームを変えて別の漫画『』の原作者として再起用されていたことが判明し、物議を醸している。被害者との示談交渉に小学館の担当編集が関与していたことも明らかになり、問題が深刻化している。
また時を同じくして、強制わいせつの罪で有罪判決を受け、集英社『週刊少年ジャンプ』の連載を打ち切りになった原作者が、マンガワンで『星霜の心理士』の原作をペンネームを変えて担当していたことも明らかになった。
小学館は自前の調査委員会を立ち上げる予定だったが、新たな事案の発覚を受けて、第三者委員会の形式を取ることを発表した。
こうした当初の小学館の対応に不信感を抱いた多くの漫画家が作品をマンガワンから引き上げたことで多くの作品が配信停止となり、計画していたイベントが相次いで中止になるなど、依然として事態は収束する気配はなく、小学館は大きなダメージを被るに至っている。
■「フジ中居騒動」以上の深刻さ
本件は、タレント・中居正広氏と女性のトラブルに端を発するフジテレビの不祥事と類似している。今後の成り行き次第では、小学館は昨年フジテレビが陥ったのと同様かそれ以上の深刻な危機を迎える可能性もある。
小学館の件では、被害者が未成年であり、かつ加害者側が略式命令により罰金を支払っていること、民事訴訟でも加害者側に1100万円の損害賠償の支払いが命じられたことを考えると、起きた問題の深刻さで言えば、フジテレビの事案以上といって良い。
小学館がフジテレビのような危機的状況に陥らないためには、ここから適切な対応を迅速に講じていく必要がある。
■ペンネームの変更が「隠蔽」と捉えられた
新たに明らかになった『星霜の心理士』原作者の再起用については、小学館側の発表によると、十分な期間を置き、本人の反省の姿勢等を踏まえて慎重に行われたもののようだ。こちらに関しては擁護的な意見も少なくない。
漫画の世界に限らず、問題を起こした人物の復帰を支援することは、むしろ好ましいこととして捉えることもできるだろう。しかしながら、今回は発覚したタイミングが悪すぎたし、ペンネームを変えて起用したことは悪手であったように思う。
小学館はペンネームを変えたことに対して、「被害者への配慮だ」と説明しているが、真意はさておき、「隠蔽を図った」と捉えられてもやむを得ないし、読者を欺く行為だったと言って過言ではないと思う。
ペンネームを変えるのであれば、そのことを事前に説明した上で復帰させるべきであったと思うし、被害者に配慮するのであれば、ゴーストライターのような形で、完全に表に出ない形での復帰も考えるべきだっただろう。
いずれにしても、「被害者への配慮」だったはずが、かえって目立ってしまい、逆効果になってしまった。
フジテレビ―中居正広氏、あるいは日本テレビ―国分太一氏の問題を思い出してもらうとわかると思うが、プライバシーの配慮を理由に情報を公開しないと「隠蔽している」との誹りは免れない。一方で、公開したらしたで、二次加害が起きてしまう可能性があると同時に、「配慮が足りない」と批判されてしまう。
小学館も同様のジレンマに陥ってしまったと言えるだろう。今後、小学館には関係者のプライバシーに配慮しながら説明責任を果たす――という難しいかじ取りが求められることになる。
■「CM総取り下げ」を招いたフジの姿勢
小学館にとって説明が求められるのは、加害―被害の具体的な中身ではなく、担当編集者、および会社がどのように今回の事案に関与していたのかという点だ。
フジテレビ―中居正広氏の問題でフジテレビが「ほぼ全てのCM取り下げ」という危機的な状況に陥った一方で、日本テレビ―国分太一氏の問題では、日本テレビは批判こそ浴びたが、危機に陥ることはなかった。
この違いは初動対応の是非による部分も大きいが、会社としての事案への関わりも大きい。
■「組織ぐるみ」でなくても「組織レベルの問題」にはなり得る
小学館の場合はどうだろうか? 「週刊文春」の報道に反論する形で、小学館が表明を出している。
それによると、
● ペンネームを変えて連載を開始したことは会社として認識していなかった
● 会社ぐるみの関与はなく、被害者への和解協議に対しても担当編集者から法務部に相談があった際に「弁護士への委任を山本章一氏(原作者)に促すよう指示していた」
とのことだ。
詳細は第三者委員会で調査されることになるはずだが、小学館の発表内容が第三者委員会の報告で裏付けられれば、「組織ぐるみ」ということまではならず、経営危機に陥るところまではいかないのではないかと思う。
しかしながら、編集長レベルまで把握していたということであれば、「組織ぐるみ」とは言えなくても「組織レベルの不祥事」と見なすことができる。さらに、編集者レベルで行われていたことだとしても、会社がそれを把握できていなかったことは、やはり「組織レベルの問題」と見なさざるを得ない。
この点において、小学館はこれから十分な説明責任を果たす必要がある。
■小学館は記者会見を開くべきだった
すでにマンガワンから多くの作品の配信が停止になっていたり、小学館関連のイベントが中止になったりと、広範な影響が出ている。また、被害者の女性が週刊誌の取材に答えるなど、騒動は収まりそうにない。
第三者委員会の調査は、短くとも3カ月程度の期間を要する。その間は、調査への影響を考慮して、会社側が独自に調査を行ったり、情報発信したりすることは難しくなる。
小学館は文書レベルでの情報発信を行っているが、SNSやメディアで飛び交っている情報に対して十分な説明ができているとは言いがたいし、何よりもSNSやメディアの情報量にのまれて、自社からの情報が埋もれてしまっている。
第三者委員会の立ち上げの発表時にでも、小学館は記者会見なりを開催してしっかり説明をしたほうがよかったように思う。
小学館に限らず、出版社は社長をはじめとする経営陣が直接説明をする機会が少ない。いまの時代、経営者自らが発信しないと「責任を果たしていない」「逃げている」と言われかねない。特に、不祥事が起きた場合は、経営陣が矢面に立って事態と向き合うことが重要だ。
■フジテレビ以上の「危機」が起きてもおかしくない
これから、小学館に求められることは以下の2点である。
● 第三者委員会の報告が出るまでの関係各所に説明を行い、理解を得ること
● 第三者委員会の結果を受けて、経営責任を果たし、再発防止策を徹底すること
第三者委員会の報告が出るまでにはしばらく時間がかかるが、各所からの風当たりは強まっている。
フジテレビの場合は、メディア報道が過熱し、スポンサー企業が離反し、アクティビストの投資家からさまざまな要求を出され――という順番で組織が追い込まれていった。
小学館の場合は、SNSでの疑念の提示から、メディア報道の過熱と漫画家の離反が起きている。今のところは一部漫画家によるマンガワンからの作品引き上げに収まっているが、この先対応に失敗すると、漫画やアニメ事業がさらなるダメージを受け、『少年サンデー』『スピリッツ』といった同社のメディアから作品ばかりではなく広告も引き上げられる――といった事態も起きかねない。
現段階では考えにくいが、小学館に大きな問題があることが確認でき、同社が根本的な対応を取らない場合は、書店やコンビニから同社の書籍や雑誌が引き上げられてしまうということも起るかもしれない。
小学館には第三者委員会の報告を待たずして、ステークホルダー(利害関係者)としっかりと向き合い、説明責任を果たしていくことが短期的には求められる。
また長期的には、第三者委員会の調査結果を問わず、企業の体質改善と再発防止の徹底が求められることは言うまでもない。
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西山 守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。
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(マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授 西山 守)

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