健康維持にいい炭水化物の摂り方は何か。医師の牧田善二さんは「同じ量の糖質を摂るにしても、食べ方一つで脳をダメにする血糖値の上昇は異なる。
たとえば、二郎系ラーメンを食べるなら、いきなり麺から食べてはいけない」という――。
※本稿は、牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■糖質制限がうまくいく工夫
糖質制限食の目的は、なるべく血糖値を上げないようにすることです。血糖値があまり上がらなければ、脳をダメにする血糖値スパイクが起こりにくくなるし、全身を老化させ認知症のリスクを上げるAGEの生成も防止できます。
この目的を考えたときに、あなたにできることが、さらにいくつかあります。同じ量の糖質を摂るにしても、できるだけ血糖値が上がりにくい「食べ方」をすればいいのです。
血糖値を上げにくい食べ方のひとつが、「糖質は単体で食べない」というもの。なるべく糖質は摂らないほうがいいですが、食べるときには「単体で食べない」を守ってください。
たとえば、茶碗1杯の白米があるとしましょう。
これを、塩でも振って白米だけで食べたときと、具だくさんのチャーハンにしたときでは、後者のほうが血糖値は上がりにくくなります。
白米だけでは、ほぼ全部が糖質なので、どんどんブドウ糖になって吸収され、血糖値が爆上がりします。一方で、チャーハンなら、具や炒めるときの油に、タンパク質や脂質が含まれており、それらの消化に時間がかかります。

結果的に、糖質がブドウ糖に分解されるのも遅れ、急激な血糖値上昇が避けられます。
■白米よりチャーハンのほうが太らない理由
同様に、薬味とつゆ以外には何もない素麺より、二郎系のガツンとしたラーメンや、チャーシューメン、タンメンなど具がたくさん入っているほうが、血糖値は上がりにくくなります。
胃での消化にかかる時間は、ごはんの場合、2~3時間です。それに対して、肉は4~5時間、肉の脂は7~8時間を要します。
だから、糖質だけでなく、タンパク質や脂質と一緒に食べることで、糖質の消化・吸収もゆっくりとなり、血糖値が急上昇しにくいのです。
血糖値があまり上がらないということは、太りにくいということでもあります。
白米だけの状態よりも、チャーハンのほうがカロリーは高いですが太らない。要するに、「カロリーが高いものを食べれば太る」というのは大間違いなのです。
■炭水化物は「最後に食べる」が正解
では、おかずに対して主食として食べる米飯やパンなどの炭水化物はどうしたらいいでしょうか。
たとえば、ランチタイムに注文した焼き魚定食の白米や、ハンバーグ定食のパンを、おかずと混ぜて食べるのはちょっと無理がありますね。
そんなときは、順番に気をつければ大丈夫です。
白米好きな人は、味噌汁をひと口飲んですぐに白米を食べたりします。
しかし、炭水化物は最後に回すのが正解です。
具体的には、まず、タンパク質や脂質が豊富なメインのおかずを食べ、次いで食物繊維が豊富な野菜の小鉢やサラダなどを食べ、胃での消化に時間がかかる状態にしておきます。
その状態で、白米やパンを食べると、一気に血糖値が上がるような事態は避けられます。
この方法は、麺類や丼物にも生かせます。
たとえば、二郎系ラーメンを食べるにしても、いきなり麺から食べずに、先にチャーシューや野菜を平らげて最後に麺を食べれば血糖値の上昇が緩やかになります。
また、炭水化物以外の具材を先にゆっくり良く噛んで食べていると、脳の満腹中枢に「もう十分に食べたよ」というシグナルが届き、血糖値を上げる原因である炭水化物を「残す」ことが可能になります。
■同じ量なら分けて回数多く食べる
「同じ量なら分けて回数多く食べる」というのも、血糖値の上昇を緩やかにする方法のひとつです。ここでは、わかりやすいようにちょっと極端なケースで説明します。
たとえば、あなたがある1日に、お弁当を3個配られたとしましょう。これを全部平らげると考えた場合、たいてい朝昼晩にお弁当を1つずつ食べていくはずです。
そのときに、前項までの知識を得ていれば、なるべく白米を最後に食べるようにするかもしれませんね。
それに加えて、お弁当を半分ずつに分けて、1日6食にしたら、もっと血糖値は安定します。
つまり、同じ量を食べるなら、回数多くちょこちょこ食べたほうがいいのです。
だから、「1日に摂取する全体量は増やさない」という前提での話ですが、空腹を我慢しておいてドカンと食べるよりは、小腹が空いたときにおやつを食べることをおすすめします。
このときのおやつは、菓子類ではなく、ナッツ類、サラダチキン、サバ缶など糖質の少ないものを選ぶとなおいいでしょう。
ちなみに、これを逆から考えると、1日2食という人は、血糖値を上げやすく脳の働きも悪くなりがちです。
ときどき、「朝ごはんを抜いたほうが体調がいい」とか「1日2食くらいのほうが頭が冴える」という人がいます。しかし、こういう人は、たいてい夕飯を食べ過ぎており、朝は食欲がないだけです。
そして、結果的に食事のリズムが狂い、昼頃にドカ食いして血糖値スパイクを起こしやすい状況になっています。
「朝食を抜くから昼には強い空腹感がある」→「ランチでドカ食いする」→「ランチの消化が遅れ夕食の時間が遅くなる」→「朝は胃もたれして食欲がない」という、脳に悪い負の連鎖が起きているのです。
■同じ1杯の牛丼でも食べる速さで差が出る
「会社勤めをするようになって、学生時代よりも食べるスピードが速くなった」という声をよく聞きます。
仕事の合間の限られた時間内にランチを終えなくてはならないし、そういう状況に慣れた先輩たちについていこうと、新入社員もやがて早食いになってしまうのでしょう。
こうした現状には同情を禁じえませんが、それでも、できる限り早食いは避けてください。早食いがクセになると、急ぐ必要のないところでもあっという間に平らげてしまいます。

同じ1杯の牛丼であっても、良く噛みながら20分かけて食べるのと、10分でかき込んでしまうのでは、血糖値の上がり方が違います。また、ゆっくり食べていれば、脳に「もう十分食べました」というシグナルが届き、適切な満腹感が得られます。
逆に、早食いするとそれが遅れ、たくさん食べているのに「まだ足りない」と脳が判断します。そして、脳の指令に従って大盛りご飯を食べ尽くしたり、おかわりしたりしてしまうのです。
■炭水化物は「冷まして」食べる
米飯や麺類などの炭水化物は、できる限り摂取量を減らしていきたいですが、食べるときは「冷まして」を心がけるといいでしょう。
これまで述べてきたように、炭水化物は最終的に1個1個のブドウ糖に分解されます。このとき、途中段階でまだいくつかのブドウ糖がくっついている状態のものを「デンプン」と言います。
それが、くっついたままブドウ糖にばらけないことがあり、それは「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」と呼ばれます。
ブドウ糖に分解されなかったレジスタントスターチは、小腸で吸収されることなく大腸へ届きます。つまり、レジスタントスターチが多ければ、小腸で吸収されるブドウ糖が減り、血糖値が上がりにくくなります。
また、レジスタントスターチは、大腸で腸内細菌のエサとなり腸内環境を整えることにも寄与します。
この優れたレジスタントスターチは、炭水化物が「冷める」過程で増えることがわかっています。

すなわち、米飯は炊きたてホカホカではなく、おにぎりのように冷えてから食べたほうがいいし、麺も茹でたてではなく冷製パスタのように冷たくして食べるといいのです。
とはいえ、冷やせばすべての炭水化物がレジスタントスターチになるわけではありません。あくまで少量にとどめるようにしてください。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)

AGE牧田クリニック院長

1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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