「仕事ができる人」は何が違うのか。言語化コンサルタントの木暮太一さんは「業務効率化や生産性向上を理由に、他人に業務を任せようとする人がいるが、こういう人はむしろ仕事ができないと思われる」という――。

※本稿は木暮太一『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■先輩たちがみんな超人に見えた日々
ぼくが社会人1年目だったときの話です。
ぼく自身は周囲が驚くほどダメ人材でしたが、それでもなんとか「成果」を出そうと長時間労働を自主的にしていました。できることが少ないので長時間労働でカバーしようとしていたんです。
一方で、同じ部署の先輩たちは、仕事ができて、かつものすごく忙しく動き回っていました。当時のぼくからは、みんなが超人に見えました。そして、どれだけ業務を効率化させているんだろうか? どんな仕組みを持っているんだろうか? なんでそんなに結果が出せるんだろうか? と考えていました。
当時読んでいた仕事術の本には、「自分ができることは自分でやり、他人に任せられることはどんどんまわりに任せていこう」と書いてあったので、ぼくも人に任せて効率化させよう、無駄な業務を見極め排除しよう、などと考えていました。
でも、これがいけなかった。このときぼくがやっていたのは本当に「筋違い」だったんです。
あるとき、超優秀な先輩のHさんが、「仕事術」の理論と真逆のことをやっているのを目にしたんです。そのHさんは、毎日朝7時前には出社し、終電まで会社にいる超ハードワーカーです。
しかも、ものすごく優秀で、部内の全員から信頼されていました。こなしている仕事の量は、少なく見積もっても当時のぼくの20倍程度あったように思います。大げさではなく、それくらいスーパーマンな方でした。
■なぜ猛烈に忙しい人が若手を手伝うのか
でもある日、Hさんが会議資料をファイリングする手伝いをしていたんです。資料作りではなく、出力した資料に穴をあけ、ファイリングする雑務です。言葉を選ばずに言えば、ファイリングなんてぼくのような下っ端にやらせておけばいいタスクです。そして実際、入社1年目~3年目のメンバーが呼ばれてファイリングをするように指示を受けていました。
そこに、ものすごく忙しかったであろうHさんも来て、一緒に作業をしてくれたんです。
「Hさんは一体なにを考えているんだろう……?」
ぼくは不思議で仕方がありませんでした。仕事術の理論で言えば、これはHさんがやるべきことではありません。しかし、彼は率先して手伝っていたんです。
実は、ここに「仕事ができる人」の本質がありました。
しかし残念ながら、ぼくはその意味に気づくことができませんでした。
■「相手の負荷を減らす」という意識
業務効率化や時短、生産性向上の視点で考えると、どうしても単純作業や人に任せられる仕事は誰か他の人に任せるという発想になりがちです。たしかにそれも必要かもしれません。でも、単に仕事を人に任せれば「仕事ができる人」になるかというと、そうではありません。むしろ逆です。
実際、仕事を右から左に受け流しているだけの人は、仕事ができる人とは思われないでしょう。自分は何もせず人に任せてばかりの人は反感を食らい、逆に評価を下げてしまうと思います。
ここに仕事ができる人が共通して持っていた、重要な認識があります。
結論を言うと、「仕事ができる人」とは、「相手の負荷を減らせる人」です。ぼくは3万人以上のビジネスパーソンを見てきました。業界はさまざまですが、仕事ができる人は例外なく「相手の負荷を減らすこと」を考えている人でした。
「相手の負荷を減らす」には、大きく分けて二つあります。

一つ目は「相手の脳内ストレスを減らすこと」、そして二つ目は「相手のタスクを肩代わりすること」です。
■相手の「考えなきゃいけない」を減らせる人
まずは、相手の脳内ストレスを減らせれば、「仕事ができる」と評価されます。脳内ストレスとは「考えなきゃいけない」「理解しなければいけない」「覚えておかなければいけない」「伝えなければいけない」など、仕事をするうえで脳にかかる負荷のことです。
嫌な思いをしているわけではないですが、考える・相手の話を理解する・大事なことを忘れずに覚えておくなどは、それなりに大変でエネルギーが必要です。この脳にかかるストレスを減らしてくれる人は「仕事ができる」と評価されるのです。
話をわかりやすく整理して伝えたり、相手が動きやすいように整えたりしてあげられれば、相手の脳内ストレスが減ります。また、あなたが締め切りを守り、段取りよく仕事を進めれば、相手はスケジュールどおりに進めることができ余計な気を遣わずに済みます。これも相手の脳内ストレスを減らすことになります。
■本来は「相手のタスク」であっても…
忙しい人であればあるほど「考える」「気を遣う」「心配する」など労力がかかることを減らしたいと感じています。あなたがそれを減らせれば相手の負荷は減ることになります。
逆に、延々と論点がズレた話をしたり、何度も同じ指摘をされてしまったり、言われないと行動できない人は、相手の脳内ストレスを増やしていることになります。
だから「仕事ができない人」と思われてしまうわけです。

そのうえで、本来相手がするべきタスクを肩代わりしてあげることが相手の負荷を減らすことになります。
本来、相手が考えてやらなければいけないことを先回りしてお膳立てしてあげられれば、相手の負荷は減ります。特に相手が面倒だと感じていることを代わりにやってあげられれば、ものすごく感謝されます。本来は相手のタスクですから、あなたは別にやらなくてもかまいません。
しかし、だからこそこれができる人は「仕事ができる」と評価されるのです。
■仕事ができる人は「仕事を奪う」
本来、相手がするべきタスクを肩代わりして、相手の負荷を軽くしてあげることを、本書では「相手の仕事を奪う」と表現します。
少し乱暴な言い回しに聞こえるかもしれませんが、自分から率先して肩代わりするという意味合いを込めて「奪う」と表現します。
逆の立場で考えてみてください。
あなたが「この人がいてくれてよかった!」と実感するのは、
・あなたのストレスを減らしてくれる人

・あなたがやらなきゃいけないことを、先回りしてやってくれる人
ではないでしょうか?
あなたの負荷を減らしてくれる人を「仕事ができる!」と評価すると思うのです。
では、ぼくらは誰の仕事を奪えばいいのでしょうか?
それは、ぼくらにタスクを依頼した人です。
会社同士で考えれば取引先企業ですし、部署単位で考えれば「相手の部署」、個々人で考えれば「上司・チームメンバー」です。
■チームのメンバーを「クライアント」と考える
仕事ができる人の頭のなか』では、これらのタスクを依頼してきた人をまとめて「クライアント」と呼びます。
取引先企業もクライアントですし、上司もクライアントです。仮にそれが同じ部署の後輩であっても、一緒に仕事を進めているのであれば「クライアント」です。
結論として、仕事ができる人は「クライアントの脳内ストレスを軽減させ、仕事を奪い、負荷を減らせる人」です。ぼくが接してきた仕事ができる人は、みんなそれを理解していました。
先ほどのHさんは、ぼくら若手メンバーがやるべき仕事を「奪って(手伝って)」、ぼくらの負荷を減らしていました。ぼくらが依頼したわけではありませんが、Hさんが状況を察して「負荷を減らしに来てくれた」わけです。だからぼくらが「Hさん、すごい……。頼りになる」と感じたわけです。
そしてHさんは、彼の上司が本来考えるべきタスクも自ら率先して巻き取り、実施していました。だから上司や部署全体から「彼は仕事ができる」と評価されていたのです。
■頭が良くても「仕事のできない人」は何が問題か
Hさんは抜群に頭がいい人でした。ですが、頭がいいからHさんを「仕事ができる人」と思っていたわけではないと思います。
Hさんがいるおかげで、いろんな人たちの負荷が減って助かるから「すごい」んです。
すごく頭がよくても、パワハラ、モラハラなどをしてまわりの負荷(ストレス・余計なタスク)を増やしている人もいます。
その人たちは「仕事ができる人」とは評価されません。あくまでも、自分の能力を「相手の負荷を減らすこと」に使っている人、そして負荷を減らせている人が「仕事ができる人」です。もちろんHさんもチームメンバーに仕事を振ることはあります。しかしそれは自分の負荷を減らすためではなく、チーム全体として誰か他の人の負荷を減らすためにしていることなんです。
「仕事が早い人=優秀」というイメージがあるのは、その人が早く仕事を終わらせることで、周囲が助かるからです。その人が早く帰れるからではなく、その人がタスクを早く仕上げることで、周囲がよりスムーズに仕事を進められるからです。
逆に「仕事が遅い人」が嫌がられるのは、その人が終わるまでまわりが待っていなければいけないから、まわりの負担が増えるから、なのです。
■若い日の自分が勘違いしていたこと
振り返ってみると、なぜ当時のぼくがどれだけがんばっても仕事ができる人になれなかったのかがよくわかります。
ぼくは英語の勉強をしていました。海外経験はありませんが帰国子女クラスに入れるくらいに上達していました。でも、その英語力を誰かの負荷を減らすために使ってはいませんでした。
簿記も勉強しました。でも、ぼくが簿記の知識を身につけても、誰の負荷も減らせはしませんでした。
経営者マインドを身につけるために、MBA理論を勉強したり、プレゼンを勉強したりしました。でも、それは自分を賢そうに見せるためで、「誰かのために」とは考えていませんでした。
むしろ逆に、「できるだけ人に任せよう」「仕組化させよう」など、自分の負荷を減らすことを考えていたんです。これでは、いつまでたっても「仕事ができる人」にならないんです。

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木暮 太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント、作家

一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事。14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。『リーダーの言語化』『すごい言語化』(ともにダイヤモンド社)ほか、著書68冊、累計195万部。

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(言語化コンサルタント、作家 木暮 太一)
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