※本稿は、和田秀樹『65歳からは戦略的ちょいデブ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■70代をすぎてのダイエットはこんなに危険
「最近、お腹が出てきたから少しやせなきゃ……」
もしあなたが60代後半、あるいは70代でそう考えているなら、今すぐその考えを捨ててください。
病気の治療で医師から厳格な食事制限を指示されている場合は別ですが、健康のため、あるいは見た目のために自ら食事を減らしてダイエットをすることは、高齢期においては「百害あって一利なし」どころか、一気に老化を加速させる自滅行為になりかねません。
私たち日本人の頭にはメタボへの恐怖が深く刷り込まれています。国を挙げて行われている特定健診(メタボ健診)では腹囲を測定し、少しでも基準を超えれば「保健指導」の対象となります。
「お腹が出ている=不健康」という図式は、中年期までは正しいかもしれません。しかし、それをそのまま高齢期に当てはめてしまうことこそが、日本人の健康寿命を縮めかねない大きな誤解なのです。
■「やせ」は認知症への近道
やせることのリスクは、高齢者が最も恐れる認知症にもおよびます。
山梨大学や愛知県が2010年から約6年間行った高齢者追跡調査(約4000人対象)において、男女ともに「やせている人(BMI18.5未満)ほど認知症の発症率が高い」という結果が出ているのです。
その理由は低栄養にあります。食が細くなり栄養が不足すると、脳に必要なエネルギーや、神経伝達物質の材料(たんぱく質や脂質)が届かなくなります。
●栄養不足で脳がガス欠になる
●体力が落ちて活動量が減り、脳がサボりだす
やせている人は、この二重のリスクによって認知機能の低下を招きやすいのです。逆に、見た目が実年齢より10歳も20歳も若く見える人は、肌がツヤツヤしたふっくら体型の人が多いです。しっかり食べているためたんぱく質が充足しており、肌の張りもよく、免疫力も高く保たれています。
高齢者がダイエットで体重を落とすことは、認知症のリスクを自ら招き寄せる行為なのです。
■ダイエットより“安定体重”を目指す
65歳をすぎたら、体重管理で目指すべきは減量ではなく、「安定」です。
具体的には、今の体重が「ちょいデブ(BMI25~30)」の範囲にあるなら、それをキープすることが最大のミッションです。もし今、あなたがやせ型であるなら、少しでも増やしてちょいデブに近づけることが目標になります。
一番怖いのは体重が乱高下すること、特に急激に減ることです。毎朝体重計に乗り、グラフが右肩下がりになっていないかを確認しましょう。
もし減っていたら、「昨日は動いた割に食べていなかったな」と反省し、その日の食事を増やす。逆に、少し増えすぎて体が重いと感じたら、翌日の炭水化物を少し控えて調整する。
このように、体重計の数値を常に確認して微調整を繰り返しながら、ベストなちょいデブ状態を維持するようにしてください。
■便秘の特効薬は食物繊維より白米
体重の増減に大きくかかわるのが便通です。年齢を重ねると腸の動きが悪くなり、食事量が減って便の材料が不足するため、便秘に悩む男性が増えてきます。
そこで「もっと野菜を食べなきゃ」とサラダばかり食べる人がいますが、実はもっと効果的なものがご飯(白米)です。お米にはレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という成分が含まれており、これが食物繊維と同じような働きをして便のかさを増やし、腸を刺激してくれます。
炭水化物を抜いて野菜ばかり食べるのは一見いいことのようですが、実は便秘に悩まされている人も多いのです。
しっかりご飯を食べると快便になり、毒素が排出され、肌もきれいになる。快食・快便こそが、シニアにとっての健康のバロメーターです。薬などに頼る前に、まずはお茶碗一杯のご飯を食べてみてください。
■体重減少は病気のサインの可能性も
60代をすぎてからの意図しない体重減少は、体が発しているSOSサインである可能性もあります。
私たちの体は、加齢とともに消化吸収の能力が自然と落ちていきます。その中で体重が減るのは、体に必要な栄養が足りずに自分の筋肉や骨をエネルギー源としている状態、いわば身を削って生きている状態かもしれません。
また、急激な体重減少には、胃腸の病気や糖尿病、甲状腺の病気などが隠れていることもあります。やせて喜ぶのではなく、「おや、エネルギー漏れが起きているな」と、冷静に体のメンテナンスをしてください。
早期に気づくことができれば、食事の内容を変えるだけで、また元の活力ある体に戻すことができます。体重が減ることはこれから老化が進んでいくという合図かもしれません。早めに対策をするようにしましょう。
■「やせているのに糖尿病」の落とし穴
「私はやせているから、糖尿病とは無縁だ」
そう思っているなら、少し注意が必要です。実は日本人の場合、太っていないのに糖尿病、あるいは予備軍である人が非常に多いのです。
欧米人の糖尿病は、その多くが肥満によってインスリンが効かなくなることが原因です。しかし、日本人は遺伝的にインスリンを分泌する能力が欧米人に比べて弱いため、それほど太っていなくても血糖値が上がりやすい傾向にあります。
ここで問題なのは、「やせているから大丈夫」と油断して、栄養不足のまま放置してしまうことです。
私がかつて勤務していた高齢者専門の浴風会病院におけるデータや、福岡県久山町の研究データを見ると、非常に興味深い事実が浮かび上がってきます。
それは、糖尿病の治療を厳格に行いすぎると、かえってアルツハイマー型認知症のリスクが高まる可能性があるというパラドックスです。
脳のエネルギー源はブドウ糖です。血糖値を薬で無理やり下げたり、食事を極端に制限してやせてしまったりすると、脳はガス欠を起こします。
「やせているのに糖尿病」の人がさらに食事制限をすると、脳も体も栄養失調になり、認知症やフレイルへと進んでしまいます。
ですから数値だけに囚われてはいけません。多少血糖値が高くても、しっかり食べて筋肉と脂肪を保っているほうが、脳も体も元気に保てることが多いのです。
■脂肪は悪ではなく“備蓄エネルギー”
脂肪というと、どうしても「邪魔者」「万病の元」というイメージがつきまといます。お腹の肉をつまんでは、「これさえなければ」とため息をついている方もいるでしょう。
高齢になると、ちょっとした風邪や下痢、あるいは歯科治療などで、数日間まともに食事がとれない事態が起こり得ます。若いころならすぐ回復しますが、高齢者の場合、この絶食がきっかけで老化が一気に進んでしまうこともあります。
そんなとき、体に蓄えられた脂肪が生命維持のエネルギーとして使われます。つまり、脂肪は災害時に備えた非常食の役割を果たしているのです。
災害が起きてから食料を買いに走っても遅いように、病気になってから太ろうとしても間に合いません。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)

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