活力の維持に効果的な食べ物は何か。医師の和田秀樹さんは「肌や髪のツヤを維持できる男性ホルモンを増やすためにはコレステロールが必要だ。
もう一つ、重要な栄養素があり、これが不足すると味覚障害や貧血だけでなく、抜け毛、免疫力低下、そして認知機能の低下まで招く」という――。
※本稿は、和田秀樹『65歳からは戦略的ちょいデブ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■年齢を重ねてもツヤを失わない方法
「会社を辞めてから、急に家でゴロゴロするようになった」

「最近、家から出るのがおっくうだ」
シニアの男性がこのようになってしまうのは、実は性格の問題でも老化のせいでもなく、多くの場合「男性ホルモン(テストステロン)」の減少が原因です。
60代をすぎて、70代になると男性ホルモンの減少は顕著になります。テストステロンは性機能だけでなく筋肉の維持、記憶力、そして社会的な意欲、冒険心、公共性などを司る、いわば「男の活力の源」です。
これが枯渇すると人づき合いが面倒になり、他人への関心が薄れ、結果として家の中に閉じこもるようになります。
女性の場合、60代、70代になっても友達同士でランチに行き、新しい習い事を始め、実に生き生きとしている姿をよく見かけます。
女性は閉経後に女性ホルモンが減る一方で、男性ホルモンの絶対量が少し増えることがわかっています。その結果、活動的で社交的になり、外に出ていくエネルギーがわいてくるのです。
スポーツクラブがシニア女性であふれているのに対して、男性が家でしょぼくれている。この残酷なコントラストは、まさにホルモンバランスの仕業です。
■「精がつく食べ物」は医学的に正しい
では、どうすれば男性ホルモンを維持し、ツヤを維持できるのか。
ここで再び、ちょいデブの優位性が登場します。男性ホルモンを増やすために絶対に必要な材料、それがコレステロールです。
コレステロールを悪者にして肉を避け、粗食を続けていると、テストステロンをつくるための材料が入ってきません。これでは、どんなに気力を振り絞ろうとしても、燃料切れの車と同じようになってしまうのです。
しっかり食べて、少し小太りくらいの人のほうが精力的に見えるのは、体内にホルモンの材料が備蓄されているからです。
もう一つ、重要な栄養素が亜鉛です。亜鉛はテストステロンを活性化させ、筋肉や骨をつくる働きがあります。これが不足すると、味覚障害や貧血だけでなく、抜け毛、免疫力低下、そして認知機能の低下まで招きます。
亜鉛を多く含む食材といえば牡蠣、うなぎ、レバー、赤身肉、カシューナッツなどです。昔から精がつくといわれてきたこれらの食べ物は、迷信でも何でもなく、男性ホルモンをチャージするという意味で、極めて医学的に正しい「先人の知恵」だったのです。
■ホルモン補充という選択肢もある
食事や生活習慣を変えても、「どうもやる気が出ない」「筋肉が落ちてきた」という場合、医学の力を借りるのも一つの手です。
泌尿器科などで検査して男性ホルモンの値が基準より低ければ、保険適用でホルモン補充療法(注射)を受けることができます。

日本の医療はマイナスをゼロにする(病気を治す)ことには熱心ですが、「ゼロをプラスにする(より元気にする)」という発想が弱い傾向にあります。
「もう年だから仕方ない」と諦める医者もいますが、私はそうは考えません。栄養状態を少しよくして、不足しているホルモンを補充してあげるだけで、見違えるように元気になる人もいます。うつ状態が改善したり、認知症だと思っていた物忘れが治ったりするのもよくある光景です。
足りないものを補うのは、けっして恥ずかしいことではありません。栄養、運動、そしてときには医学の力も借りてホルモンを補充し、貪欲に元気を追求する。それが、65歳からの戦略的な生き方なのです。
■性に対する興味は抑圧しなくていい
日本のシニア男性が元気を失ってしまう隠れた原因に、性に対する罪悪感があります。女性に対して心が動いたり、性的な欲求を感じたりしても、「いい年なのに色気づいて」「年甲斐もなく」などという世間の定型句を思い出し、自分で自分を律してしまう方が非常に多いのです。
しかし、医学的な見地からいえば、これは非常にもったいない。むしろ、異性への興味を失わないことこそが、長生きと活力の源泉だからです。
たとえば、きれいな女性を見て「いいな」と思ったり、ときにはエロティックな動画を見たりすることを不謹慎だと思わないでください。
こうした性的な刺激は脳を強力に活性化させて、男性ホルモン(テストステロン)の分泌を促します。
実際、射精をしない人は前立腺がんのリスクが高まるという研究データもあります。性に対する興味を持ち続けるのは生物として当たり前のことで、心身の若さを保つための特効薬なのです。
歴史を見ても、いわゆる「スケベ」な人のほうがだいたい長生きで元気です。
たとえば新一万円札の顔となった渋沢栄一。彼は幕末から明治・大正・昭和を91歳まで生き抜きましたが、68歳で子どもをつくっています。
最後までめかけが10人近くいたともいわれており、同時に死ぬまで現役の事業家として日本経済を牽引し続けました。
「英雄色を好む」といいますが、どちらが先かといえば、やはり男性ホルモンが多いからこそ色気もあり、仕事への意欲もわいてくるのです。
■心のときめきが食欲を呼び覚ます
「最近、どうも食欲がわかない」と感じている場合、もしかしたら胃腸の問題ではなく、心のときめきが不足しているのかもしれません。
医学的に見ると、食欲と性欲、そして生きる意欲は、脳の非常に近い場所でコントロールされています。ですから、何かにときめくことや興奮することは、ダイレクトに食欲を刺激するのです。
老人ホームでも、ヨボヨボだったおじいさんに気に入った異性ができると急に身なりを気にし始め、ご飯をしっかり食べるようになり、肌にツヤが出るということはよくあります。

「いい年をして」なんて思う必要はありません。アイドルを応援する「推し活」でも、行きつけの店で店員さんと会話するのでも、心がウキウキすることを見つけてください。そのときめきがあなたの胃袋を動かしてくれるのです。
■「禁欲の日本」と「開放のスウェーデン」
広い視点で見ても、興味深いデータがあります。かつて世界トップクラスだった日本人男性の平均寿命は、2024年には世界6位まで順位を下げました。代わって1位になったのがスウェーデンです。
スウェーデンといえば、1968年に世界に先駆けてポルノを解禁した国です。意図的かどうかはともかく、国として男性ホルモンを解放する土壌があったわけです。さらにコロナ禍でも過度な自粛を行わず、「みんなで歩こう」と活動を止めませんでした。
薬漬けで禁欲的な生活を送っている日本人より、自由で開放的なスウェーデン人の方が長生きをしているというこの事実を、私たちは直視すべきです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。
精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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