※本稿は、和田秀樹『65歳からは戦略的ちょいデブ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「あっさりしたもの」で体はつくれない
年をとれば、誰もが体や脳の衰えを感じるもの。テレビに出ているタレントの名前がすぐに出てこない、駅の階段を早足で上がると息切れがする、新聞やスマホの文字がかすんで読みにくい……。
こうした変化は、遅かれ早かれ誰にでも訪れます。しかし、真面目な人ほどこの変化を敏感に察知し、「健康のために何かを変えなければ」と考え始めます。テレビや雑誌、ネットにあふれる「○○を食べると血液サラサラ」「△△体操で腰痛改善」といった情報に飛びつき、「健康的な食生活」を誓うのです。
その典型例が、「油物を控えて、あっさりしたものを食べる」という選択です。
ステーキや天ぷら、唐揚げ、ラーメン、チャーハンなどの油分が多くてカロリーが高い料理を避け、サラダや魚、煮物中心の食事に切り替えるのです。
メタボが気になる40代、50代の食生活としてはアリかもしれません。ところが、「年をとったら肉は控えて、消化のよいものを食べたほうがいい」という思い込みが強すぎると、寿命を縮める要因になりかねません。
■糖質よりたんぱく質を優先する
たしかに、加齢とともに胃腸の機能は落ち、食べたものを消化吸収する能力は低下していきます。
しかし、消化吸収力が落ちているからこそ、栄養価の高いものを意識してとらなければならないのです。
「消化によいもの」というと、みなさんは何を思い浮かべるでしょう。やわらかく煮たうどん、おかゆ、そうめん、食パン……。これらはたしかに胃腸への負担は少なく、消化は抜群にいいでしょう。しかし、栄養学的に見れば、これらはほとんどが糖質(炭水化物)です。
体を構成する筋肉、骨、血管、そしてホルモンや免疫細胞の材料となるのはたんぱく質です。消化がいいからといって、うどんやあっさりした和食ばかりを食べていては、肝心のたんぱく質がまったく足りません。
胃腸をいたわっているつもりが、実は「体に材料を与えない食事」になってしまっている方は大勢います。
■日本人の多くは“隠れたんぱく質不足”
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によれば、65歳以上の高齢者が一日に摂取すべきたんぱく質の推奨量は、男性でおよそ60グラム、女性で50グラムとされています。さらにいうと、「体重(キログラム)=一日に必要なたんぱく質の量(グラム)」です。
つまり、体重60キロの人は一日60グラム、体重70キロの人は70グラムのたんぱく質をとる必要があります。
「なんだ、そのくらいか」と思うかもしれませんが、もともと食文化が穀物中心である私たち日本人は、世代を問わずたんぱく質不足に陥る傾向があります。
実は、高齢になると消化機能が落ちるので、「体重×1.2」グラムのたんぱく質をとるのが理想とされています。つまり、なおのこと意識してとるようにする必要があるのです。
よほど意識して肉や魚、卵を食べない限り、必要量のたんぱく質を確保するのは大変です。若いころと同じ感覚で、「今日は食欲がないからお茶漬けでいいか」と食事をすませてしまう日が続けば、たんぱく質不足は深刻化します。
その先に待っているのは、体力や気力の低下だけではありません。ウイルスと戦う免疫力の低下、頭の回転を支える認知機能の低下、そして骨密度の低下……。これらの老化現象が、ドミノ倒しのようにやってきます。
いつまでも若々しい心と体でいたいなら、これまでの健康常識を疑ってください。消化能力の低下を補うために調理法を工夫し、サプリメントの力も借りて、貪欲にたんぱく質をとりにいく。それこそが、60代以降の方にふさわしい食生活なのです。
■「たんぱく質のとりすぎ」は心配無用
「肉を食べろというけど、たんぱく質のとりすぎで腎臓が悪くなったりしない?」
真面目な方ほど、このように心配されるかもしれません。
しかしはっきり申し上げますが、日本のシニアの食生活において、たんぱく質のとりすぎを心配する必要はまずありません。圧倒的に多くの方は、不足を心配すべきです。
おそらく、意識して「食べすぎかな?」と思うくらい食べて、ようやく推奨量である男性60グラム、女性50グラムに届くかどうか、というのが現実です。
腎臓に重篤な疾患がある方以外は、食べすぎを恐れる前に、「どうやってノルマを達成するか」を考えてください。
とはいえ、胃腸が弱くて急に肉をたくさん食べるのは難しいと感じる方もいるでしょう。そこで提案したいのが、今の食事に肉を50グラムだけプラスするという作戦です。
肉50グラムとは、だいたい薄切り肉2~3枚分です。うどん屋に入ったら「かけうどん」ではなく「肉うどん」にする。ラーメンなら「チャーシュー麺」を選ぶ。サラダを買うなら「蒸し鶏」が乗っているものを選ぶ。
これだけの工夫で、50グラムの肉(たんぱく質換算で約10グラム)を上乗せできます。
■ステーキが無理ならアイスクリームを
それでも、「食後に胃がもたれてしまいそう……」という方も多いでしょう。
そもそも欧米人と日本人では胃腸の強さが違います。80歳になっても平気でTボーンステーキを食べる欧米人もいますが、日本人は40歳をすぎたあたりから、脂っこいものが苦手になる人が多いのが現実です。
しかし「胃が弱いから」とあっさりしたものばかりを食べていては、どんどん体が枯れていってしまいます。
そこで提案したいのが、「デザートで脂質をとる」という戦略です。
食欲がないとき、ぜひ食べていただきたいのが「アイスクリーム」。それもあっさりした氷菓ではなく、乳脂肪分が10%以上あるような濃厚なバニラアイスを選んでください。
アイスクリームなら冷たくて口溶けがいいので、肉がのどを通らないときでもスルスルと食べられます。それでいて、効率よくたんぱく質と脂肪を補給できます。
「甘いから糖分が心配」という声も聞こえてきそうですが、シニアにとっては、糖質過多よりエネルギー不足のほうがよほど害悪です。
私が診ている認知症の患者さんたちも、甘いものを食べているときは本当に幸せそうで、機嫌がよくなります。人間にとって「甘い、おいしい」と感じる幸福感は、生きる意欲そのもの。
あまり食欲がない日は、アイスクリームをご飯がわりにしてもいいくらいです。
■脂肪をしっかりとると脂肪が燃えやすくなる
「脂肪」と聞くだけで健康の敵だと眉をひそめる人がいますが、食事としての脂質まで敵視するのは誤りです。
脂質は体を動かすエネルギー源になるだけでなく、細胞膜やホルモンをつくる材料にもなります。太るからといって油を極端に抜いた食生活を続けると、細胞膜をつくる材料が枯渇してしまいます。
細胞が油切れを起こすと、肌のカサつきやシワの原因になります。油抜きダイエットをした人が、やせたというより「やつれた」「急に老け込んだ」ように見えるのは、まさに細胞が干からびてしまった結果なのです。
さらに、あまり知られていませんが、脂肪には「脂肪を燃焼させるスイッチ」としての役割もあります。
人間の体は、適度な脂質が入ってくることで代謝が回り始めます。脂肪を完全に絶ってしまうと、体は飢餓状態だと判断してエネルギーを溜め込もうとするため、かえって脂肪が燃えにくくなってしまうのです。
「脂肪を燃やすために、脂肪をとる」。このパラドックスを理解することが、若々しさを保つ秘訣になります。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。
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(精神科医 和田 秀樹)

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