※本稿は、清水栄司『「いつも不安で頭がいっぱい」がなくなる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■舌がんのニュースを見て不安になる人
不安と上手に付き合うための第一歩は、自分の思考や行動のくせからくる悪循環を知ることです。自分が抱えている不安の悪循環を見える化し、それを断ち切るための方法についてお伝えします。
認知行動療法では、いろいろな方法を通じて患者さんの考え方のくせを明らかにします。そのうちの1つに「『認知(思考)』『行動』『感情』の3要素を図に書き出す認知行動モデル」というものがあります。
方法はとても簡単です。図表1のように、自分に起きた「できごと」(特に、不安な感情を引き起こすストレスフルなできごと)を書き、それに対する「認知(思考)」「行動」「感情」の3要素をそれぞれ書いていきます。
まずは、強い不安を感じるきっかけとなった「できごと」を書いてみましょう。できごとは、外部からの刺激(ストレッサー)とも言えます。例として、「有名人のAさんが舌がんになったというニュースを見た」というできごとを書きます。
ポイントは、できごとの欄には、客観的な事実を書き、自分の考えをここに書かないようにすることです。
■事実と思考が区別できていない
強い不安を感じているときに、人間は、「認知的フュージョン」といって、「認知(思考)」と客観的事実(現実)を区別できず、融合(フュージョン)させてしまう傾向があることが知られています。
この認知的フュージョンから抜け出すための技法を「脱フュージョン」といいます。脱フュージョンでは、まず自分が認知的フュージョンにおちいってしまっていることに気づき、できごとはできごと、認知(思考)は認知というように、事実ベースのできごとと自分の考えを区別するようにします。
つまり、頭に浮かんでいるものが客観的な事実(できごと)なのか、自分の思考に過ぎないのか客観的に観察、識別し、混同しないようにする習慣づけのことです。次に、そのできごとについて浮かんだ「認知(思考)」を書きます。
「自分も舌がんになる」
このように、事実に対して頭に浮かんだ考え(認知)を書きます。そして「行動」を書きます。例えば、次のようなものがあるでしょう。
「ネットで舌がんについて検索し続けた」
「鏡で自分の舌を確認したり、触ったりし続けた」
「家族に自分の舌を見てもらって、どう見えるか確認した」
最後の「感情」には、「不安」と書きましょう。
■3つの要素を書くと不安の解像度が上がる
ちなみに、「認知」「行動」「感情」の3要素を書き出すのが簡単でよいと思いますが、4番目の要素として、「身体反応」を書く方法もよいでしょう。たとえば、心拍数が増えた・呼吸が荒くなった、汗をかいたなどです。
なおこのとき、「舌がぴりぴりする」「舌が熱い」のような身体反応を感じている場合もあるかもしれません。舌に関する身体反応は、外部からの刺激(できごと)ではなく、自分の内部(心身の反応)で起こっているので、「できごと」の欄には書かないようにしましょう。
3要素(あるいは4要素)を書き出すことで、自分が漠然と不安に感じている状況が明らかになります。最近よく使われている表現を使えば「自分の不安の解像度が上がる」ともいえます。
さらに、犬恐怖症の人の例で考えてみましょう(図表2参照)。できごとは「道で子犬に出会う」であり、「犬だ! 危険だ!」と認知(思考)しています。このとき思い出されているのは、子どものころに公園で犬に噛まれ、大けがをした記憶です。
■犬が怖い人の認知行動モデル
そこで「逃げる」という行動を取り、「恐怖・不安」の感情が湧きました。このとき、心臓がバクバクするなどの身体反応が起きています。この人は「犬は危険だ」と考えているわけですが、あらためて冷静に3要素の図を見直すと「子犬って、そこまで危険なんだろうか」という別の考えが生まれるかもしれません。
たしかに、再び犬に噛まれないという保証はないですが、子犬に噛まれて病気になったとか、亡くなった人のニュースは、近年、ほとんど耳にしたことがありません。
あるいは「逃げる」という行動についても、あらためて、偏った行動になっていないか、見直すきっかけになるでしょう。
「逃げるという行動をとっているから、いつまでも犬に慣れることができないのでは? 逃げないほうがいいのでは?」
「逃げた結果、犬に噛まれなかったけど、それによって『やっぱり犬は危険だ』『逃げてよかった』という考えが強化されてしまっているのかも?」
「逃げなかったとしても、逃げたときと同じように、犬に噛まれることはなかったのではないか」
などなどです。
■“検索し続ける”が恐怖を強めている
このように、自分がおちいっている不安の悪循環に気づくわけです。不安という感情自体は直接的にコントロールすることが難しいのですが、認知(思考)や行動については自分で直接的に見直したり、変えたりすることができます。不安感情を直接的にではなく、間接的に認知(思考)や行動を変えることを通じて、コントロールできるようにするわけです。
もう一度、舌がんの例に話を戻しましょう。有名人の舌がんのニュースに恐怖を感じ、ネットで舌がんについて調べ続けるという行動は、その場しのぎで不安を下げるかもしれません。ただ、長い目でみると、かえって自分が舌がんであるという思考が強まってしまい、よけいに不安が強くなるという悪循環におちいっていることにも気づけるでしょう。
できごとと「認知(思考)」「行動」「感情」の3要素を見える化し、自分の思考や行動の悪循環のパターンに気づき、好循環になるように見直していけば、不安の増幅を防げるはずです。
■「不安日記」をつけてみよう
不安を可視化する方法として、不安日記というものがあります。不安日記では、特定のできごとと認知行動療法の3要素の「認知(思考)」「行動」「感情」を記録していきます。
ここでの感情は不安です。「認知(思考)」「行動」「感情」の3要素を見える化した図を、毎日の日記として簡単に書くという感覚です。
それでは、書き方を説明していきましょう。不安日記では、まず日付と「できごと」について書き出し、不安の点数をつけます。
例えば「子どもが学校から帰るとすぐに無言で自室にこもり、何を聞いても『大丈夫』としか言わない」と書いたら、不安の点数を100点満点で記入します。
次に、自分の「認知(思考)」を書きます。上記の例では、「学校で何かあった、いじめられた」という思考です。さらに、できごとに対しての否定的な解釈と、その確信度(どれだけ信じているか)について、0~100%で評価します。例では、「子どもが学校で孤立する」で、90%の確信度です。
■「役に立ちそうで立たない行動」に気づく
そして最後に、安全行動について書き出します。安全行動とは、文字通り、本人としては「一時しのぎでもいいから」と安全を求めて行っているけれど、結果的には不安を過剰にする悪循環につながってしまっている行動のことです。
「偽の安全行動」という言い方もします。「一見、必要そうだが、不必要にやりすぎている行動」「役に立っていそうで、役に立たない行動」を意味します。
実は、安全行動は、実際に手足を動かして行う行動だけではありません。
特に全般不安症の人は、同じことをぐるぐる考え続ける(反すうする)メンタルアクトの安全行動によって、不安の悪循環におちいっていることがよく知られています。また、「憂うつになって、ずっと反すうする」と似た行動として、「不安になってずっと心配する」=「心配する」のもメンタルアクトの安全行動です。ちなみに、「心配する」は、英語でworryという動詞を使うことからも、行動といえるでしょう。
■1日1回の習慣で自分の傾向が分かる
メンタルアクトと認知(思考)は、何が違うのだろうと思ったかもしれません。メンタルアクトは自分の意志で、頭の中でし続ける行動です。一方で、認知行動モデルや不安日記で書く「認知(思考)」は、自分の意志とは関係なく、ぱっと頭に浮かんでくる考えだという違いがあります。
不安日記の安全行動の欄に書くとするなら、例えば「何があったのかと心配し、どうしたらいいかと反すうする」となるでしょう。あるいは、「同じような悩みを抱えている人をネット検索して、その人のブログやSNSを読みあさり、どうしたらいいか対処法の知識を得ようとする」などが代表的な安全行動といえるでしょう。この不安日記は、1日に1回、書く習慣をつけてください。
自分が書いた不安日記を読むと、自分がどんなできごとに不安を感じるかという傾向がわかります。また、不安になったときに、どのように考え、どのような否定的解釈をし、どのような安全行動をしているのかも明らかになります。
■多くの人が安心を求めて振り回されている
また、多くの人は自分が取っている安全行動に気づいていません。「どうしたらいいかをぐるぐると考える」などは、頭の中でいつの間にかやってしまっているので、客観的に自覚するのが難しいのです。
安全行動を見える化すると、自分のやりすぎに気づきます。「何があったのかと心配し、どうしたらいいかと反すうする」のも10~20分くらいはいいかもしれませんが、何時間も考え込んでいても、いい解決策が浮かぶとは思えません。
不安なことについてネットで10~20分程度調べて、大まかな知識を得るのは有意義な時間の使い方だと思いますが、2時間も3時間も同じ情報を繰り返し検索・閲覧しているとなると、役に立たない安全行動だとわかりますよね。
安全行動に気づいたら、安全行動に時間をかけるのはもったいないので、やめて、その大切な時間で、自分がやりたい大切なことをやるように行動しましょう。安全行動をやめるイメージ・トレーニングをした後で、実際に安全行動をやめる練習をして、不安にふりまわされず、自分の大切な時間を自分のために使えるように自分を変えていきましょう。
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清水 栄司(しみず・えいじ)
千葉大学大学院医学研究院教授、精神科医
千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教授、医学部附属病院認知行動療法センター長、子どものこころの発達教育研究センター教授。精神科医。大学での研究のほか、実際の診療にも30年以上あたっている。1965年山梨県生まれ。1990年千葉大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院精神神経科、プリンストン大学留学等を経て、現職。専門は認知行動療法。精神保健指定医、精神科専門医・指導医、公認心理師、認知行動療法師。認知行動療法の第一人者として、数多くのメディアに出演している。
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(千葉大学大学院医学研究院教授、精神科医 清水 栄司)

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