米国がイランとの開戦に踏み切りました。日本のインフレ再燃や金利上昇が心配です。インフレが再燃することで、高い確率で短期金利、長期金利ともに上昇します。家計は物価高の影響を強く受け大変です。さらにその上に金利の上昇が起こり、企業のみならず、住宅ローンを抱える人たちを直撃します。
■インフレ再燃が家計を直撃
まずはインフレです。中東情勢が不安定化する中で、原油やLNGの価格が騰勢を強め、乱高下しています。図表1は原油価格(ドバイ)です。今年1月には1バレル60ドル程度だった原油価格が2月には70ドル台に、そしてイランでの戦争が始まって1週間程度で、一時120ドルを超える水準となりました。G7の備蓄放出予想などで80ドル台まで戻りましたが、価格はとても不安定です。
原油価格は、国際情勢に大きく左右されます。図表1にある2022年は2月にロシアがウクライナに侵攻した年です。高騰しています。逆に2020年は年間では40ドル程度でしたが、コロナの蔓延が始まった4月には需要の急減から10ドル台まで値下がりしたこともありました。
今回も戦争により原油の移動が困難になっており、産油国は減産を行うところが増えています。ホルムズ海峡の封鎖状況にもよりますが、今後さらに原油価格が上昇する可能性も少なくありません。
心配なのは日本の物価です。2025年は3%前後で推移していた消費者物価(生鮮除く総合)ですが、今年1月には2.0%にまで下落しました。しかし、これは昨年12月末のガソリンの暫定税率廃止によりリッター25円ほど下がったことや、電気やガスの補助金の影響が大きく、食料品などは値上がりが続いています。コメの価格も高止まりしています。
日本は年間110兆円を超える輸入のうち、約4分の1がエネルギーです。そんな中での原油価格の上昇です。
また、このところ158円程度まで進んだ円安も大きく輸入物価に悪影響を及ぼします。このままでは、ガソリン価格は暫定税率廃止を帳消しにするくらいの上昇をし、電気・ガスは今後、補助金がなくなることに加えて、原油やLNG高の影響を受けて大幅な上昇が予想されます。インフレの再燃です。
後に詳しく述べますが、政府は補助金で対応しようとしていますが、それでは、長期金利上昇ということは避けられなくなります。
■実質賃金のマイナスが続く
インフレに話を戻すと、インフレが再燃すると、昨年1.3%下落した実質賃金のことが心配になります。実質賃金は実額である名目賃金からインフレ率を差し引いたものです。今年1月は13カ月ぶりにプラスになりましたが、このままでは春以降は、再度実質賃金がマイナスとなる可能性が高く、国民生活は以前より厳しくなります。
図表2には一人あたりの賃金を表す「現金給与総額」の数字も載せてありますが、インフレ率にはなかなか勝てておらず、実質賃金がマイナスの状態が昨年は続きました。(給与と比べる物価上昇率は、一般的には図表2で挙げた「生鮮除く総合」と少し違いますが、生活実感的には「生鮮除く総合」を用いるべきだという意見もあり、私もそう考えています)
それが今後、インフレがひどくなると当然、実質賃金が再度マイナスとなります。実質賃金がマイナスということは、これまでと同じものが同じ値段で買えなくなるということです。子供さんがいる家庭では、食料品などは量を確保せざるをえないですから、量を確保しようとすると質を落とさざるを得なくなります。
この春にある程度の賃金上昇は見込めますが、インフレはそれを帳消しにします。
さらには、原油などの価格上昇は、当然多くの企業業績を圧迫します。政府がいくら賃上げを声高に叫んでも、企業がそれに応じるかは不明です。むしろ、賃上げに慎重にならざるをえません。実際、連合の発表では労働組合の賃上げ要求は昨年の6.09%より低い5.94%で、民間のエコノミストの中にも昨年より低い賃上げ率の予想も少なくありません。
このままの状況が続けば、企業は想定していたような採用も行わず、また、賃上げも行いにくい状況になります。ますます、実質賃金は上がりにくい状況に陥ります。
■「未払利息」という一生免除されない重荷
そうするとインフレを抑え込むしか手はありません。民間企業の賃上げを促すより、インフレのほうが直接的に扱いやすく、日銀は政策金利(短期金利)を上昇させざるをえません。そうすれば、現状158円程度の円安にも多少良い影響があると考えられます。
おそらく日銀は、4月27日、28日の政策決定会合で政策金利を0.25%上昇させ、現状の0.75%を1.0%にすると考えられます。年末には1.25%まで上昇する可能性も低くありません。
そうした場合、大きな影響が出るのが変動金利で住宅ローンを借りている人たちです。今後、私の予想のように現状に比べ0.5%金利が上昇すると仮定すれば、もし、変動金利で住宅ローンを借りていて現状3000万円で20年のローンが残っているとすれば、年間で約8万円、20年間で160万円強の金利負担増となります。
住宅ローンには、急に返済額が増えない規定(5年ルール=5年間は返済額を変えない、など)がありますが、それでも金利上昇分は結局負担しなければならず、このルールがかえって「未払利息」という一生免除されない重荷になってしまう恐れがあります。
■長期金利も上がる
当然、こういう状況では、先にも述べたように、政府は今後インフレ対策を行わざるを得ない状況となります。ガソリン、電気、ガスなどへの補助金を出すなどです。そうすると、もちろんその財源が必要です。
それでなくても対名目GDP比で235%という先進国中最悪の財政状況の現状では、高市政権の「積極財政」の掛け声だけで長期金利が大きく上昇し、一時は10年国債利回りが2.3%にまで上昇しました。現在は少し落ち着いて2.2%前後ですが、こちらも再上昇する確率が高いでしょう。
これは当然、企業が借り入れる長期金利にも影響します。有利子負債が多い企業に影響を与えるのはもちろんのこと、財務内容が比較的良い企業でも、設備投資を躊躇する可能性があります。なぜなら、長期金利が上昇するとそれに応じた収益率の上昇が必要になるからです。
■ローン総返済額が1000万円も増える
もちろん、これから住宅ローンを借りる人にも影響します。
長期金利の上昇は、そういう人たちを直撃します。
高市政権が誕生する直前には1.6%程度、もう少しさかのぼって昨年1月には1.2%程度だった長期金利(10年国債利回り)が、先程も述べたように、現状2.2%程度にまで上昇しています。昨年初と比べて約1%、昨年の今頃より、0.7~0.8%上昇しているのです。
仮に今、5000万円の住宅ローンを30年で組もうと考えている人がいれば、0.8%の金利上昇で(昨年3月頃にローンを組んだ人と比べて)、年間約23万円、30年間では約700万円の負担増です。
1%の上昇なら(昨年1月頃にローンを組んだ人と比べて)、年間約30万円、トータルで880万円ほどの負担増です。昨年に住宅ローンを組んでいるのと今とでは、かなり大きな違いが出るのです。
首都圏エリア(1都3県)の場合、新築分譲マンション1戸平均8383万円(2026年1月)となっているので、同じ条件で1%の金利上昇により30年間でゆうに1000万円の負担増と想定されます。わずか1年程度の期間のズレで、これほど金利負担が増えてしまうわけです。今後、長期金利はさらに上昇すると見込まれているため、金利負担はどんどん大きくなって、返済期間も延びる可能性があります。
インフレで、目の前の生活が苦しくなる中で、住宅ローンの返済が重くのしかかる懸念は小さくありません。イランでの戦争の行方次第ですが、今後の原油価格、日本のインフレ率、金利からは当分目が離せない状況です。
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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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