投資の神様ウォーレン・バフェットは投資先をどのように見極めているのか。バフェットと彼の右腕だったチャーリー・マンガー(2023年死去)が過去31年間のバークシャー・ハサウェイの株主総会で話した内容をまとめた書籍『ウォーレン・バフェット 投資家に贈った全言葉』(アレックス・W・モリス著、KADOKAWA)より、一部を紹介する――。

■「なぜテクノロジー企業を避けるのか」追及への回答
1990年代後半、バークシャーの年次株主総会での質疑応答には、それまでとは少し異なる雰囲気があった。具体的には、株式市場で好調を維持していたテクノロジー企業を、なぜバフェットとマンガーが避け続けるのか、と(時には激しく)尋ねる株主が、特に世紀末の数年間、次第に増えていったのだ。
この状況はバフェットとマンガーにとって、証券選定に関する彼らの見解や、どの企業が「能力の輪」の内側にあるかを判定する特定の「フィルター」について、改めて説明する良い機会となった。いつものことではあるが、(1999年株主総会での)テクノロジー投資を求める株主からの執拗な質問に対するマンガーの回答は、簡潔で明快なものだった。
「それは私たちにとって、簡単な投資判断ではありません。そして、そういうものは、私たちが求めているものではないのです」
この話題が詳しく掘り下げられるにつれて、バフェットとマンガーがこれを実務においてどのように考えているのかについて、重要な洞察が得られる。それは、投資対象の選定だけでなく、ポジションサイジング(バークシャーが、アメリカン・エキスプレスやコカ・コーラといった企業にやってきたように、数十年にわたって保有する大規模な長期投資を行う意思)にも影響を及ぼしているのだ。この点に関して、バフェットの次の発言は極めて重要である。
「私たちは、『確実な』リターンと交換してくれるなら、『大きな』リターンを喜んで差し出します」
■変化は不利に働く可能性が高い
――1996年株主総会(03:27:03)――
【チャーリー・マンガー】もしあなたが理解できると思うものがあって、それが非常に魅力的だと思うのなら、その理解できることをするのが賢明だと私たちは考えています。もし私たちが、私たちのささやかな能力に合う企業を見つけられなかったとしたら、ファイザーやマイクロソフトに投資していたかもしれません。
ですが、そうする必要はまったくありませんでした。別にそれらの企業を下に見ているわけではありません。
もっと才能のある他の人たちが、それが素晴らしい行動であると気付いたのですから。
【ウォーレン・バフェット】私たちは、変化は私たちに不利に働く可能性が高いと感じています。私たちは、変化によってどうなるのかを予測する優れた能力を持っているとは考えていません。ですが、私たちは、変化の影響をあまり受けない事業を見つける能力をいくらか持っていると思っています。
たとえばジレットでは、今から10年後や20年後には、製品はより良くなっているでしょう。シェービング技術はどんどん改良されます。しかし、ご存じのように、ジレットは(1960年代初頭にウィルキンソンとの小競り合いがあったものの)、基本的に、他の企業の何倍もの資金を、より良いシェービング技術を開発するために費やすでしょう。彼らは流通システムを持っており、信頼も得ています。
■マイクロソフトの10年後の予測は非常に難しい
もし彼らが新製品を発表して、「これは男性が注目すべきものです」といえば、男性はそれに注目します。そして数年前には、女性たちをシェービングに注目させようとしたときも、同じようにうまくいったのです。
彼らは他の分野では同じような信頼を得ることはないでしょう。しかしシェービング分野では、それを手に入れているのです。
これらは構築しようと思ったからといってできるような資産ではありません。そして、それらはめったなことでは破壊されないのです。
私たちは、清涼飲料水やカミソリ、キャンディーなどの業界が、今から10年後、20年後にどうなっているか、大まかにはわかっていると思っています。マイクロソフトは、最高の経営陣が率いる驚異的な会社だと思いますが、その世界が10年後、20年後にどうなっているか、私たちにはまったく見当もつきません。
さて、もし自分たちには見抜けないことを見抜いて実行できる誰かに賭けるとするなら、私は他の誰でもなくビル・ゲイツに賭けたいですね。他の人には賭けたくないです。
■変化をチャンスだとはまったく思わない、むしろ怖い
【バフェット】結局のところ、私たちは、事業がこれからどうなっていくのか、自分自身で理解したいのです。ウォール街の人たちは、誰かが「この事業はこれから大きく変化する」といえば、それを素晴らしいチャンスだと見做します。ちなみに、彼らはウォール街自体が大きく変化するときには、それを素晴らしいチャンスだとは見做さないのですがね。
私たちは、変化をチャンスだとはまったく思いません。むしろ、ぞっとするほど怖いのです。なぜなら、物事がどのように変わるのか、私たちにはわからないからです。

たとえばガムを噛むとき、20年前にどう噛んでいたか、そして今から20年後にどう噛むかについて、かなり正確にわかっていると思いますよね。ガムを噛むという技術に、多くのテクノロジーが入り込むとは、普通は思いません。それなら、なぜ他のことに頭を悩ませる必要があるのでしょう? シンプルなものに賭けることができるのに、なぜ、よく知りもしないものに賭けようとするのでしょうか?
■バフェットの譲れない投資哲学
――1999年株主総会(04:44:41)――
【バフェット】ビジネスとして素晴らしい成果を上げる事業、つまり、短期間で株価が上がる株としてではなく、ビジネスとして成功する事業を見つけ出すことは、インターネット業界ではそんなに簡単ではないと私は思います。もし、この分野のトップクラスの人たちに、今後成功するであろう5社から10社の企業を挙げてもらい、その中のどれが6、7年後に、たとえば2億ドルを稼ぎ出すかを予測してもらったとしても、彼らはひとつも当てられないでしょう。
だからといって、彼らが初期投資家として大金を稼げないという意味ではありません。彼らは次の投資家たちに売り抜けることができるからです。しかし、結局のところ、事業はビジネスとして成功しなければなりません。成功する事業はいくつか出てくるでしょうし、インターネットは世界に莫大な影響を与えるでしょう。ですが、だからといって簡単な投資判断になるのかどうか、私には確信が持てません。
【マンガー】それは私たちにとって、簡単な投資判断ではありません。そして、そういうものは、私たちが求めているものではないのです。
■百貨店の優位性を破壊した「変化」
――1999年株主総会(00:34:15)――
【マンガー】技術革新が特定のビジネスを破壊するかどうかを予測するのは難しいものです。
私が若い頃、百貨店には一種の独占的な優位性がいくつかありました。路面電車の乗り換え地点という街の中心に位置していたこと。月賦払いという一種の独占的なサービスを提供していたこと。そして、どんな天候でも一度に買い物を済ませられるという利便性があったことです。
それらは誰にも真似できないことでした。そして、百貨店はこれら3つの優位性をすべて失いました。それでも、その多くはその後何十年にもわたってうまくやってきました。
一方で、変化が起きて破壊されることもあります。私たちのトレーディングスタンプ事業は、経済環境の変化によって破壊されました。私たちの百科事典事業、ワールド・ブックは、パソコンやCD-ROMなどによって深刻な打撃を受けてきました。変化が大きなリスクであることは認めますが、確度の高い予測をすることは簡単ではありません。
【バフェット】オマハの16番街とファーナム通りの交差点に行くと、かつて路面電車の線路が交差していた場所を見ることができます。
そこは街で最高の立地でした。人々はそこで、50年や100年の賃貸契約を結んでいました。路面電車の路線が動くことはないだろうから、これ以上安全な投資はないように思えました。
ところが、唯一変化したのは、路面電車そのものだったのです。路面電車は廃止され、がらくたになってしまいました。あんなに永続的に見えていたのにね。
■バフェットですら「予測できない」10年後の世界
シカゴのマーシャル・フィールズやニューヨークのメイシーズといった巨大百貨店の優位性は、信じられないほどの商品の幅広さでした。そこに行けば、300種類の縫い糸や、500種類のウェディングドレスなど、何でも見つけることができました。そして、延床面積10万平方メートルや20万平方メートルの市街地の店舗は、巨大な商業施設でした(訳注:日本で主流の、テナントが多数入居している「百貨店」とは異なり、かつてのアメリカの百貨店は、ひとつの企業が運営する、巨大な単一の店舗だった)。
ところがその後、郊外型ショッピングモールが登場し、多くの店が寄り集まった「店舗」が実際に誕生したのです。これによって、同じく信じられないほど多様な商品が、今度は何十万平方メートルもの広大な敷地で提供されるようになったのです。
インターネットは、あなたのパソコン上の店舗になります。
そして、それもまた信じられないほど多様な商品を提供しています。その中には、オンラインでの小売にあまり適していないように思えるものもあります。
しかし、チャーリーがいうように、それが今後どうなるかを正確に予測するのは難しいのです。自動車の小売業は、これからいくつかの重要な点で変わっていくと私は見ています。そして、その変化の大部分は、インターネットの影響を非常に大きく受けるでしょう。しかし、今から10年後や15年後にどうなっているのか、正確に予測することはできません。
■探しているのは「変化の影響を受けにくい事業」
――1999年株主総会(02:44:26)――
【バフェット】私たちは(テクノロジー分野での)そうした活動が、社会的な観点からは非常に有益だと考えています。しかし、投資という観点からは、私たちにとって重要なのは、10年後や15年後、20年後にどうなっているかを、大まかには予測できる事業を見つけ出すことです。つまり、私たちが探しているのは、一般的に、大きな変化の影響を受けない事業なのです。
私たちは、投資のプロセスにおいて、変化をチャンスというよりも脅威と見ています。それは、現在のほとんどの人の株式市場の見方とはまったく逆です。しかし、私たちは、いくつかの例外を除いて、大金を稼ぐ方法として、変化を熱望することはありません。私たちは、すでに多くの利益を生み出している事業が、将来もさらに多くの利益を上げられるように、変化がないことを望んでいます。だから、私たちは変化を脅威と見做しているのです。
私たちが事業を検討するときに、たくさんの変化がやってくるだろうと思えたら、10回中9回は手を出さないでしょう。そして、10年後や20年後も今とほとんど変わらない可能性が高いと思うものを見つけたら、私たちははるかに自信を持ってその将来を予測することができます。
■コカ・コーラはこれからもほとんど変わらない
コカ・コーラは、110年以上前に売っていたものと、ほとんど変わらない製品を今も販売しています。そして、流通や消費者との対話、その他諸々の根本的なことは、本当にまったく変わっていません。50年前のコカ・コーラに対する分析は、今でもほぼそのまま通用します。私たちは、そういった類いの事業にこそ安心感を覚えるのです。
このやり方では、私たちはたくさんの巨大な勝者を見逃してしまいます。ですが、どっちみち私たちはそれらを選べなかったでしょう。そして、このやり方は、巨大な敗者もほとんど抱えないで済むということも意味します。これは、長い目で見れば大きな強みです。

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アレックス・W・モリス
ポートフォリオの透明性を誇り、長期に焦点を当てた株式調査サービス「TSOH Investment Research Service」の創設者。フロリダ大学で学士号と MBA を取得。2021年にTSOH Investment Researchを設立する以前は、株式アナリストとして勤務。フロリダ州デイビー在住。2011年からバークシャー・ハサウェイの株主。

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(アレックス・W・モリス)
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