ビジネスの現場で求められる「論理的思考力」とはなにか。言語化コンサルタントの木暮太一さんは、「相手を論破することでも、自分が賢くなることでもない。
あくまでも、クライアントの負荷を減らすために自分の思考と行動の質を高めることだ」という――。
※本稿は木暮太一『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■どの「論理的思考力」を身につけるか
一般的に「論理的思考力」は、「問題や課題に対して筋道を立てて考え、根拠に基づいて結論を導き出す力」を指します。情報を分解して整理したり、グループ分けして因果関係を明確にしたり、優先順位をつけて相手にわかりやすく提示したりするのが「論理的思考力」です。
これは仕事をするうえでとても重要な能力です。しかし非常に幅が広く、それだけ身につけるのが難しいです。すぐにすべてを身につけられるのがベストですが、それは現実的ではありません。そのため、論理的思考力のうち、身につけなければいけない要素を「優先順位をつけて論理的に」考える必要があります。
仕事ができる人の頭のなか』の目的は、「仕事ができる人」の頭のなかにあるものを分析し、自分も「仕事ができるようになること」です。そこに絞って考えると、目的は「クライアントの負荷を減らすこと」になり、そこに向けて重要度が高いものから身につけていくという発想になります。
同書第2章では、言語化の必要性をお伝えしています。クライアントの負荷を減らすために、まずは言葉を明確にしなければいけません。

ただし、「明確になっていればすべて正しい」わけではありません。ゴールを明確にし、そこに至るための作戦プランとアクションを明確にしても、「その作戦」と「そのアクション」でゴールにたどり着けるとは限りません。見当違いの筋が悪すぎる作戦とアクションを出してしまっているかもしれないからです。
■必要なのは「より妥当なものを選ぶ力」
ここで必要なのが論理的思考力、その中でも「より妥当なものを選ぶ力」です。
一緒に仕事をしているメンバーが的外れな考え方をしていると大変です。なぜその考えがNGなのかを説明しなければいけませんし、時間も取られてしまいます。ましてや仕事を任せるなんてできないと感じるでしょう。だから「妥当なものを選ぶ力」は相手の負荷を減らすために必要不可欠なんです。
仕事ができる人になるために必要な論理的思考力は、
・常にゴールを意識して、ゴールを達成するために必要なことを考える

・ゴールを達成するための手段として妥当なものを考える
の2点です。
仕事で論理的思考力を身につける目的は、相手を論破することでも、自分が賢くなることでもありません。あくまでも、クライアントの負荷を減らすために自分の思考と行動の質を高めることが目的です。
■「相手の負荷を減らす」ために頭を使う
「何をすればいいかわからないから、行動できない」では、あなたはずっと仕事ができない人のままになってしまいます。
ゴール達成のために何をしたらいいかを指示されないことはあります。そもそも経営層や上司でも、それがわからないケースも多いです。
そんなときに仕事ができる人は「言われてないからできません」とは言いません。自分で論理的に考えて状況を整理し、質の高い作戦を選び、自ら行動していきます。ぼくらに必要な論理的思考力とは、それができるようになる力です。
論理的に考えられる人は、細かい人・理屈っぽい人と近いイメージがあるかもしれません。しかし、実際はまったく違います。
論理的思考ができる人は、仕事ができます。でも「理屈っぽい人」は仕事ができない人です。この二者は何が違うのでしょうか?
それは、その人の「目的」です。
相手の負荷を減らすために考えている人は「論理的思考力が高い」です。
一方で、自分が言いたいことを言っているだけで相手のことを考えていない、とにかく相手を否定するなどして相手の負担を増やしている人は、単に「理屈っぽい」だけです。
同じようなことを考え、発言していたとしても、目的の違いで大きく意味が変わります。
■コンサル風の概念を持ち出す前に…
本来の目的を見失って、むやみにフレームワークを多用する人もいます。「3C分析はしたの?」「その発想はMECE(ミーシー)になってないよ」など、思考のフレームワークを持ち出すケースもありますが、これも本当に意味があるのか考えなければいけません。(※3C分析とは、「顧客(customer)、ライバル(competitor)、自社(company)」の3つのCにスポットを当てる考え方です。また、MECEとは「漏れなく、ダブりなく」という意味で、両方とも有名なコンサルティング会社のマッキンゼーで考案された概念です。)
たしかにMECEにできれば、頭のなかは整理されるし、思考の質は高まるかもしれません。ですが、なんのためにそれをするのでしょうか? 漏れなく・ダブりなく考えなければいけないケースとはどの場面なのでしょうか?
混沌とした世界情勢やビジネス環境を分析する場合には、MECEで考えていくことが重要かもしれませんね。でも、ぼくらは分析屋でも評論家でもありません。
また、すべての状況を「漏れなく」考えたところで、それらすべてに手が回るわけでもありません。必要なのは「重要ポイントを、漏れなく」押さえることです。
大事なのは、MECEに考えることではなく、クライアントの目的を達成させることです。そこからブレてはいけません。

■まずは「筋が悪い案」を出さないこと
同様に、「論理的思考力を身につけて、誰もが考えつかないような鋭い指摘をしよう」と考える必要もありません。もちろんそれができればベストですが、難易度が高すぎます。ひとまずは、「筋が悪い案」を出さない(相手の負荷を増やさない)ことができればOKと捉えたほうがいい。
ぼくは新人育成のサポートに入っている企業から相談を受けたことがあります。「自分から動けないメンバーが多かったのでロジックツリーで考えさせようとしましたが、全然うまくいかないんです」とおっしゃっていました。論理的に考えて行動できるようにと、メンバーにロジカルシンキングの研修を何度も受けさせていたようですが効果が見られなかったようです。
「研修プログラムのどこを見直したらいいでしょう?」と相談されましたが、問題はそこではありませんでした。研修の中身を見直す前に、そもそも新人メンバーがロジックツリーで状況を整理する必要が本当にあるのかを考えてみます。
■新人には「高度な提案」をする義務などない
新人メンバーはまだ業務に慣れていません。業界やビジネス全体像についての知識も浅いでしょう。つまり、見えている範囲がまだまだ狭いんです。仮に全体を整理して俯瞰して考える手法を身につけても、その段階ではほとんど何もできません。

では、新人メンバーに論理的思考力が不要かと言えば、そうではありません。見えている範囲内で「クライアントが掲げているゴールを意識して、タスクを奪うために何をすればいいか、妥当な策を考えて実行する」ができればいい。
ぼくらに必要なのは、ひとまず「クライアントの負荷を下げ、タスクを奪うこと」です。最初はクライアントがやりたいこと、やろうとしていることの中だけでいいんです。
たとえば、あなたが入社したての新人で、まだ右も左もわからないとしましょう。そして、あなたの上司が「ネット広告の反応を上げたい」と思っているとします。
ここであなたがすべきことは、その上司の負荷を減らすことです。自分で何か見えているわけではないのに「もう一度ゼロからすべての可能性を洗い出して考え直しましょう」などと提案する必要はありません。
上司が直近でやりたいのは「ネット広告の反応を上げること」です。販促手法をすべて洗い出して、「ネット広告の代わりにチラシを配ったり、新聞広告を出すこともあり得ますよね? ゼロベースで考え直しましょう」などと提示したら、むしろ上司の負荷を増やしてしまいます。
自分の意見を伝えるのがいけないのではありません。「なんでもかんでも言えばいいのではない」ということです。

高度なことを考えるのは、経験を積み、実力が上がってからで大丈夫です。まずはあなたにタスクを依頼してくるクライアントが何をしたいかを考え、クライアントがやりたいことを実現するために何をすればいいかを考えてください。
■「桃鉄のボンビー」になっていないか
ゲームの「桃鉄」に“貧乏神(ボンビー)”というキャラがいます。いつまでもあとをついてきて、「社長のために」と言って、いろんなことをしてくれます。しかし、それらがいちいち余計なことなんです。勝手に社長の資産を売ってきたり、逆に勝手に何かを買ってきてしまったり。
もちろんあれはゲームの話ですし、わざとそういう設計がされています。でも、現実世界にも貧乏神のようなことをしてしまう人がいます。本人は「よかれ」と思ってやっていますが、それが的外れすぎて相手が迷惑してしまうのです。
でも、貧乏神は、なぜ貧乏神になってしまうのでしょうか?
■何より大事なのは「クライアントの目的」
多くの組織で「自走する人材」が求められています。自走するとは、自分で考えて動くという意味です。その都度「これをしますか? これでいいですか? どうしますか?」と聞いてくるのではなく、自分で考えて自分で実行する人が望まれています。いちいち聞かずに自分で考えて行動してほしいと思っているわけです。
あの貧乏神も、自分で考えて、自分の判断で行動していますよね。でも貧乏神がすることは迷惑でしかありません。
では、この「自走する人」と、貧乏神の違いはなんでしょうか?
両方とも、指示待ちではなく自分から率先して行動しています。両者の違いは、クライアントの目的&作戦に合致しているかどうか、そしてそのアクションがその目的を実現させるために「論理的に筋がいいもの」になっているかどうか、です。
クライアントがやりたいことをくみ取り、その実現に向けて筋のいいアクションを「勝手に」やる人は「自走する人」です。一方で、それが筋が悪いアクションだったら、「余計なことをしでかす人」と評価されます。
ポイントは、目的&作戦に繋がっているか、そして、繋がる可能性が高いかという話なんです。
では、仕事ができる人が共通して持っている論理的思考力とは何か? それは、繰り返しになりますがこの2つなんです。
・常にゴールを意識して、ゴールを達成するために必要なことを考える

・ゴールを達成するための手段として妥当なものを考える

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木暮 太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント、作家

一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事。14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。『リーダーの言語化』『すごい言語化』(ともにダイヤモンド社)ほか、著書68冊、累計195万部。

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(言語化コンサルタント、作家 木暮 太一)
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