成果を出す人はどのように休憩をとっているのか。多くの大富豪に仕えてきた執事の新井直之氏は「成果を出す人は効率的に疲れをとるため、上手に休憩する。
コーヒー休憩ひとつとっても、『どこで休憩をとり、どんな体験をするか』にこだわっている」という――。(第2回)
※本稿は、新井直之『なぜかいつも上手くいく人の休みの使い方』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
■意外と奥が深い「休憩の取り方」
仕事をしているとき、そのときの気分で、ちょっとした休憩をとっていませんか。
実は、気分で休む習慣が身についてしまうと、短い休憩を繰り返しても疲れが抜けず、かえって仕事のリズムを崩してしまうことにもなりかねません。
だからこそ、どのタイミングで休むかを決めることが重要なのです。
もしかしたら、「90分働いたら10分休む」というような方法を、とっている人もいるかもしれません。
一概に悪いともいえませんが、集中力が高まっているときでも作業を中断してしまうリスクがあるのは確かです。
せっかく思考が流れているのに、休憩によって流れを止めてしまう。
それではリズムが分断され、かえって非効率になってしまいます。
実は、成果を出す人は、休み方を「気分」では決めません。
「もう少しがんばろう」「この辺でやめよう」と感覚にまかせるのではなく、「ここまで仕事を終えたら一度休む」と明確に意識しています。
たとえば、
「資料を一通り仕上げたら」

「このメールを送ったら」

「この会議の準備が終わったら」
というように、タスクの完了を休憩の合図にします。

そうすることによって、無理に「休もう」としなくても、リズムが自然に生まれ、その短い一連の動作がいわば切り替えの儀式になり、自然と次の集中力を支える「間」になるのです。
達成感を伴って気持ちよく休めるだけでなく、作業の区切りごとに頭を整理できるため、次に取りかかるときの立ち上がりも早くなります。
■「どこで止まり、どこで動くか」を決める
この発想は、タスク管理にも役立ちます。
休憩を明確にすることで仕事全体の見通しが立ちやすくなり、今日どこまで進めるかを具体的にイメージできるようになるからです。
結果として焦ることが減り、安定して集中できるようになります。
反対に、気分まかせで休むと作業が曖昧になり、終わらせた感覚が得にくくなります。
これは小さな違いのようでいて、生産性に大きく影響します。
流れを保ちながら、次の動きを整えるためにも、気分にまかせるのではなく、自分で「どこで止まり、どこで動くか」を決める必要があります。
自分のリズムを理解し、区切りの取り方をコントロールできるようになると、ムダな疲れは減り、仕事全体が整っていきます。
気分の波に左右されず、自分の意思で流れを整える。
休憩を戦略的に設計できる人ほど、長く安定して成果を出し続けていけるのです。
■頭も心も軽くなる“一石二鳥”の気分転換法
誰しも、集中力が続かず、つい気が散ってしまうことがあるでしょう。

頭の中に悩みや不安があると、目の前の仕事に取りかかれず、特に行きたいわけでもないのに、トイレに立ったりするなど、ムダな行動を繰り返してしまいがちです。
気分転換を試みるものの、誤った方法では時間を浪費するどころか、かえって疲れをためてしまうことにもなりかねません。
よくあるのが、ゲームによる気分転換です。
最近はスマートフォンで手軽に遊べるゲームも数多くありますが、これが厄介です。短時間のつもりでも、次第にのめり込んでしまい、気づけば何十分どころか、何時間も経っている。
リセットするどころか目的を忘れて没頭し、「またやってしまった」と自己嫌悪に陥り、余計にストレスを感じる――これでは本末転倒です。
もう少し建設的なのが、SNSを開いて、情報収集や人との交流で気分を変えようとすることです。
知人の投稿を見て、「あいつもがんばっているから自分も」と前向きな気持ちになれれば良いのですが、実際には「自分ばかり苦労している」と比較して落ち込むことも多いものです。
自分の投稿に対する「いいね!」の数を気にして、一喜一憂するようになれば、もはや休息ではなく、心をすり減らす作業になってしまいます。
SNSはつながりを得るツールであると同時に、精神的負担を生む要因にもなるのです。
■おすすめは「磨くこと」
では、成果を出す人はどうしているのか。
彼らが好んで行うのが「靴磨き」です。

靴磨きは、汚れを落とすという一つの作業に集中できるため、頭を空っぽにし、雑念を払うのに最適です。
しかも、短時間で終わるので、のめり込む心配もありません。オフィスに靴磨きセットを常備しておき、仕事の合間に磨く人もいます。
休日に時間を取ってまとめて磨く人も多く、靴を磨きながら「この靴が自分を支えてくれている」と感謝の気持ちを持つようになるといいます。
これは、靴に限ったことではありません。
彼らは「磨く」という行為を通じて心を整えます。
パソコンやスマートフォンの画面、フォトフレーム、絵画の額、窓ガラスや床など、身の回りのものを磨くことで、頭の中もすっきりしてくるのです。
磨く作業は単なる清掃ではなく、一種の精神修行ともいえます。
修行僧が本堂や廊下を丁寧に磨くのも、心の雑念を払うためです。
私たちもこの方法を取り入れることができます。
オフィスで靴磨きは難しくても、スマートフォンや腕時計、メガネなどを磨くぐらいならその場で可能です。
数分間、無心になって磨くだけで、驚くほど集中力が戻ってくるでしょう。

さらに、身だしなみも整い、心も軽くなる。一石二鳥の気分転換法として、日常に取り入れる価値があります。
■疲れがとれる「上手な休憩法」
「予定していたタスクが終わった!」
そんなとき、コーヒー休憩は最も手軽な気分転換といえます。
少しの休憩時間でも頭がすっきりして、その後の生産性が大きく上がることもあります。
逆に、休憩したつもりでも気分が切り替わらず、仕事のスイッチが入らないこともあります。
実はコーヒーを飲むという同じ行為でも、休み方によって効果に大きな差が生まれるのです。
よくあるのは、自動販売機で缶コーヒーを買って、デスクで飲むというスタイルです。私も会社員時代はよくそうしていました。
しかし、仕事をしていた同じ場所でコーヒーを飲んでも、環境が変わらないため気分転換にはなりづらく、結果として、休憩してもあまり疲れがとれず、その後の集中力も戻らないままになってしまうこともありました。
仮に同じ時間を使うならば、カフェに出てコーヒーを飲むほうが、気分転換をしやすいでしょう。
周囲の雰囲気に助けられて、自然と気持ちが落ち着くからです。ただし、それでも「心からリラックスした」という実感を得られるとは限りません。

■あえて一杯5000円のコーヒーを飲む理由
一方で、成功している人たちは、ちょっとした休憩の取り方にもこだわります。彼らは高級ホテルのラウンジや会員制のサロンなどで、たとえば「コピ・ルアク」と呼ばれる1杯5000円以上する、希少なコーヒーを楽しみます。
缶コーヒーやチェーン店のコーヒーにはない特別な時間が、印象深い体験となって記憶に残るのです。
彼らが求めているのは、コーヒーの味だけではなく、「特別な体験」としての休憩です。非日常の空間に身を置くことで、脳がリフレッシュされます。
「いつもと違う場所で休んだ」

「特別な時間を過ごした」
という印象が残ることで、心身がしっかりと切り替わるのです。
これは「記憶に残る休み方」を意識するということです。
この方法のポイントは、脳に「休んだ」と感じさせることです。
高級ホテルのラウンジで、5000円のコーヒーを飲めといっているのではありません。非日常を演出できる小さな工夫で十分です。
たとえば、テーマ性のある喫茶店に行ってみる、特別なスイーツを味わいながら一息つく、あるいはオフィスビルの屋上で景色を眺めながら缶コーヒーを飲むなど、少しの違いでも気分転換できます。
重要なのは、いつもの延長ではない「違う場所」「違う体験」を意識的につくることです。

たった数分の休憩でも、日常とのギャップを感じられる時間にする。
それだけで、仕事に戻ったときの集中力が変わります。
休憩をどう過ごすか。その工夫が、パフォーマンスの差を生むのです。

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新井 直之(あらい・なおゆき)

執事、日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役

明治大学 政治経済学部 卒業後、米国企業日本法人勤務を経て、日本バトラー&コンシェルジュを創業。自ら執事として大富豪・超富裕層など、国内外のVIPのお客様を担当する傍ら、企業創業家・資産家向け顧問サービス、企業向けにホスピタリティ・おもてなし・富裕層ビジネスに関する講演、研修を行なっている。著書にベストセラーとなった『執事だけが知っている世界の大富豪53のお金の哲学』(幻冬舎)、『執事のダンドリ手帳』(クロスメディア・パブリッシング)、『執事が教える至高のおもてなし』(きずな出版)など著作多数。著書は世界各国でも翻訳出版され、著者累計発行部数は50万部を超える。

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(執事、日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役 新井 直之)
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