本当のお金持ちの生活とは、どのようなものか。作家の橘玲さんは「いま、世界的な潮流としてギラギラしたお金持ちはダサいと言われている。
新しい上流階級の間では、『BOBOS(ボボズ)』という生き方が注目を集めている」という――。
※本稿は、橘玲、大橋弘祐『難しいことはわかりませんが、1億円貯める方法を教えてください!』(文響社)の一部を再編集したものです。
■ギラギラしたお金持ちはもうダサい
【大橋】橘先生、単刀直入にお伺いします。
お金持ちになる方法を教えてください。
【橘】私の知っていることでよければお話しします。
絶対とは言いませんが、ほとんどの人がお金持ちになる方法はあります。
【大橋】ベンチャー企業を興して、上場させるとか、株で大きくぶち当てるとか、そういうのではなく、誰でもできるやつで教えてください。
【橘】もちろんです。
【大橋】本当ですか? お願いします! ぜひ教えてください!
【橘】では、最初に聞きます。大橋さんはなぜ、お金持ちになりたいのですか?
【大橋】なぜって、お金持ちがいいに決まってるじゃないですか。だって、お金があればいいマンションに住めるし、いい車に乗れるじゃないですか……?
【橘】少し古いですね。
【大橋】古いんですか……。

【橘】はい。はっきり言うならダサいですね。
【大橋】……。
【橘】いま、世界的な潮流としてギラギラしたお金持ちはダサいと言われています。
大橋さんはBOBOSという言葉を知っていますか?
【大橋】いや、知らないです……。
■億万長者ほど質素な生活をしているワケ
【橘】「ボボズ」とは、「ブルジョア(Bourgeois)」と「ボヘミアン(Bohemians)」を組み合わせた造語で、経済的にはそれなりに裕福でありながら、世間の常識やしがらみにとらわれず、自らの価値観を重視するような生き方をしている人々です。
ボボズはお金があっても、カジュアルでいることを好みます。アルマーニを着て三ッ星レストランに行くよりも、ユニクロを着て近所のビストロに行って夫婦でおいしいワインを飲むとか、豪華クルーズよりも子どもたちと山に登って自然に触れるほうがぜいたくだよね、という価値観です。
【大橋】ミニマリストみたいなもんですかね?
【橘】ミニマリストやスティーブ・ジョブズのノームコア(※)も、ボボズの影響を大きく受けています。
また、私が大きな影響を受けたトマス・J・スタンリーの著書『The Millionaire Next Door(となりの億万長者)』では、アメリカの資産1億円以上のお金持ち(ミリオネア)を対象に調査をした結果、お金持ちは中古物件に住み、コストコのようなディスカウントストアでクーポンで買い物をして、靴やカバンは修理して使い、余暇は子供のスポーツ観戦を楽しんでいる、と記されています。
実際、マーク・ザッカーバーグはホンダの車に乗っていましたし、イーロン・マスクも普段は750ドルのプレハブに住んでいます。

※ノームコアとは派手さや個性を主張するのではなく、清潔感や自然体を重視するファッションのこと。

スティーブ・ジョブズの黒いタートルネックとジーンズの組み合わせが代表例としてよく挙げられる。
■お金持ちになる「最大のメリット」
【大橋】す、すみません。ちょっとよくわからないのですが……、じゃあ、何のためにお金持ちになるんでしょうか?
【橘】多くの人にとって、お金持ちになる最大のメリットは自由になれることだと思います。
【大橋】自由ですか?
【橘】はい。大橋さんは、朝、早起きしたくない。つまらない仕事をしたくない。やりがいのある仕事をしたい。嫌いな上司と仕事したくない。勝手に転勤を決められたくない。そう思ったことはありませんか。
【大橋】めちゃくちゃあります。というか毎日思っていますね。

【橘】でも、仕方なく、それを続けているわけですよね。
【大橋】まあ、会社員ですからね……。
【橘】それを会社に隷属していると言います。
【橘】収入を会社に依存しているので、上司がどんなに嫌いな人でも、顔を合わせて、言われたことを守らないといけません。
毎日いやな上司と顔を合わせることは幸福度を下げ、うつ病をわずらうことがありますし、パワハラを受け続けると戦争体験に匹敵する心理的トラウマを引き起こす可能性があるという研究もあります。
【大橋】戦争に匹敵するトラウマですか……。
■ストレスを減らし、幸福になるには…
【橘】また、稼ぐ力がなく、収入を結婚相手に依存している場合は、どんなに嫌な相手でも別れられません。
関係が破綻している夫婦が一緒に暮らして、強いストレスが続くと、心臓病のリスクが上がるという調査結果もあります。
【大橋】心臓病……。結婚生活が破綻しているのに一緒に暮らしていると、死にやすくなるってことですか。
【橘】そうです。ところが、お金があれば、そういったことを我慢しなくて済み、好きなときに、好きな相手と、好きなことができます。
これは経済的自由と呼ばれています。
経済的自由になると、ストレスが低く幸福度が高いことが世界中の調査で明らかになっています。
経済的自由

働かなくても生活ができるため、会社やお金に縛られることなく、やりたいことを自分のペースでできる
【大橋】先生、それはわかるんですけど、タワマンにも住みたいんですよね……。
【橘】……。
【大橋】あと、ポルシェにも乗りたいです。
【橘】どうしてもそうしたいのであれば、個人の価値観なので、私がとやかく言うことではありません。お金持ちになって買えばいいと思います。
ただ、話を進めているうちにその行為がバカバカしいことがわかってくると思うので、いったん話を次に進めましょう。
■資産1億円を持つ人は意外と多い
【橘】じゃあ、お金持ちになる方法についてお話ししましょう。
【大橋】そもそも僕でもお金持ちになれるんですかね?
【橘】はい。お金持ちの定義にもよりますが、資産1億円をお金持ちと定義するなら、ほとんどの人がなれます。
【大橋】え、ほとんどの人が1億円の資産を持てるんですか?
どうして、そう言えるのでしょう?
【橘】単純な計算をしてみましょう。
会社員の生涯年収の平均が2~3億と言われています。共働きであれば、5億円です。
5億円のうち15%を貯蓄に回し、年率3%で運用すれば、軽々と1億円を超えます。
実際、アメリカのミリオネアを概算すると、なんと5世帯に1世帯はミリオネアです。日本でも20世帯に1世帯がミリオネアです。つまり、1億円持っている人は意外と多いのです。
これも『となりの億万長者』の中で述べられていることですが、先進国で平均的な収入があれば、理屈のうえではほとんどの人が資産1億円のお金持ちになれるということを意味しています。
【大橋】夢がありますね……。
【橘】これは、ある意味、残酷な真実とも言えます。
【大橋】え、どうしてそれが残酷な真実なのでしょう?
【橘】欧米や日本のようなゆたかな社会では、特別な才能などなくても、やり方を間違えなければ、誰でも億万長者になって経済的自由というゴールに到達できます。
つまり、大橋さんが、もしお金持ちになれないのであれば、それは国のせいでも、親のせいでもなく、自己責任となるからです。
【大橋】自己責任……。

■でも、バカはお金持ちになれない
【大橋】でも先生、実際問題、お金持ちになってない人がたくさんいますよね。
お金持ちになる人とそうでない人の違いはなんでしょう?
【橘】前提としておさえておきたいのは、わたしたちが住む世界が知識社会だということです。
【大橋】知識社会ですか……。
【橘】知識社会というのは知識がある人が報酬を受けられる。そうでない人は報酬を得られない。ということです。
少し極端な例ですが、アメリカのIT企業が集まるシリコンバレーという場所では、世界中から優秀な頭脳が集まり、富裕層が多く住みます。
ところが州の住宅規制がきびしく、アパートや高層マンションを建てることができないため、少ない住宅に借り手が殺到して家賃がどんどん上がっています。
その結果、公立学校の教師とか市役所の職員など、日本なら「安定した仕事」とされる人たちが家賃を払えなくなり、トレーラーハウスを買って「ホームレス」にならざるを得なくなっています。
■資本主義・市場経済の「近道」とは
【大橋】すごく頭がいい人は豊かな生活を送れるが、そうでない人は、苦しい生活に追いやられるということですか。
【橘】この例は極端ですが、わかりやすく言うなら、バカはお金持ちになれないということです。
【大橋】……。バカですか……。
【橘】現代では、情報はオープンになっているため、誰でも情報を入手することができます。そのような世界では、必要な情報を的確に入手し、それを活用する知識がある人は、いくらでもお金持ちへ「近道」ができます。
それができない人、すなわちバカな人は、ひたすら回り道をするほかありません(図表1)。それが、私たちの生きている知識社会であり、資本主義・市場経済のルールです。
しかし、それを親や学校の先生が教えてくれるわけではありません。
【大橋】お金持ちになる方法なんて、いろんな人がいろんなことを言うので何が正しいかわからないですし、そもそも、本を読んで難しい言葉が出てくると、「無理だ」「面倒くさそう」ってなってしまいます……。
■「無理ゲー社会」になりつつある
【橘】いままでは、それでもよかったかもしれません。なぜなら勉強をして大学に入り、そこそこの会社に就職して、こつこつ働いて定年まで勤めあげれば「ふつうの生活」が手に入った時代でした。
しかし、いまは知識社会が高度化しています。
それによって何が起きているかというと、正しい情報を的確に入手してそれを使わないと、頭の良い人たちにお金を簡単に吸い取られてしまいます。
これからは、普通にやっていては働いても働いても、生活がラクにならないということです。つまり日本も、先ほどのシリコンバレーの例のようなクリアできない「無理ゲー(※)」になりつつあるのです。
※クリアできないゲームのこと
【大橋】お先真っ暗ですね……。
【橘】少し厳しいことを言いましたが、大橋さんには大きなアドバンテージもあります。
【大橋】僕にアドバンテージなんてあるんでしょうか……?
【橘】あります。それは日本に生まれたということです。
■豊かな日本に生まれたという幸運
【大橋】え、どうしてですか⁉ こんな超高齢化、衰退途上国の日本で生まれたことが、どうしてアドバンテージなんでしょう。
【橘】もし北朝鮮のような独裁国家で生まれていたら、いつ自分の財産が没収されてもおかしくありません。そもそも自由がありません。親の身分によって人生を決められてしまいます。
先進国で生まれたとしても、ヨーロッパではアフリカや中東から大量の移民が流入したことで排外主義が台頭し、暴動や賃金の低下など混乱が続いています。
また、欧米の英語圏では、SNSの参加者が桁違いに多いために、フェイクニュースを信じてピザ店で発砲したり、大統領選挙の結果をハッカーが左右するような想像を超える事件が起きています。
それに比べて日本は治安が安定し、敗戦から80年以上も戦争とは無縁で、世界第4位の経済大国で、国民のゆたかさの指標である1人あたりGDPを見ても(一貫して順位を落としているとはいえ)世界でもっとも恵まれた国のひとつであることは明らかです。

※これまで日本の知識人は、「アメリカやイギリスのような成熟した市民社会がつくれないのは日本人が愚かだからだ」と慨嘆してきましたが、いまでは欧米の知識人が「日本がうらやましい」と言いはじめています。
【大橋】世界的に見たら恵まれてるんですね……。普段意識していませんが、日本で生まれたことには感謝しないといけませんね……。

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橘 玲(たちばな・あきら)

作家

1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。05年の『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補に。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)など多数。

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大橋 弘祐(おおはし・こうすけ)

作家・編集者

立教大学理学部卒業後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』(文響社)が日本テレビの地上波ゴールデンタイムでテレビドラマ化。『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社、山崎元との共著)など「難しいことはわかりませんがシリーズ」が70万部を超えるベストセラーになる。『漫画 バビロン大富豪の教え』の企画・脚本も手掛ける。

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(作家 橘 玲、作家・編集者 大橋 弘祐)

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