※ケント・ギルバート『日本の弁護士と日弁連の罪と罰』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
■死刑を続けている先進国は日本だけ?
日弁連は「死刑廃止2020会長声明」の中で、死刑を廃止すべき理由として、国家による人権侵害以外に、国際社会で死刑廃止に向かう潮流が主流になっていて、死刑を執行している国が世界の中では少数になってきていることを挙げています。
2017年12月現在、142カ国が法律上あるいは10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国であり、うち106カ国が全ての犯罪について死刑を廃止している。
OECD加盟国のうち、死刑を存置しているのは、日本・韓国・米国の3カ国だけであるが、韓国は10年以上死刑執行をしていない事実上の死刑廃止国であり、米国は2017年10月時点で19州が死刑を廃止し、4州が死刑執行モラトリアム(停止)を宣言している。
したがって、死刑を国家として統一して執行しているのは、OECD加盟国のうちでは日本だけという状況にある。
何と欺瞞に満ちた文章でしょうか。最初から「死刑廃止」の結論ありきで、そのために都合のいい情報だけを並べ、都合の悪い情報は隠して「日本は悪い」と結論付ける。
しかし、事実関係を調査した私には全部お見通しです。今からトリックを暴(あば)きましょう。
■「世界最大の死刑執行国」は中国
まず、死刑を全面的に廃止した国・地域は、25年前は60(1996年・アムネスティ・インターナショナル調べ)でしたから、それから約40増えているので、たしかに国際的には死刑制度廃止の流れがあるように見えます。しかし、世界最多の死刑執行数を誇る中華人民共和国にまったく触れていないではないですか。
さて、2024年の死刑執行上位5カ国と、アメリカと日本の執行数は図表1のとおりです。日本は2024年は死刑執行はゼロでした。
■独裁者による「処刑」は含まれない
人の命にかかわる問題ですから、死刑制度はその国の宗教観や歴史、習慣や文化、民族意識などと密接な関係があります。
ヨーロッパ諸国で死刑廃止国が多いというのは、キリスト教国家、特にカトリックの国々を中心に、死刑が廃止されてきたと見ることもできます。ただし、これらの国々が死刑廃止を唱え始めたのはごく最近の話で、それまでは散々死刑を執行していましたが。
逆に、非キリスト教国家は、死刑が存置されている国が多いのではないでしょうか。中東の国々や、インドネシア、マレーシア、日本もそうですし、インドやタイ、ベトナムなどもそうです。他にもアフリカだとエジプトやエチオピアなどもあります。
東南アジアでは、長年スペインの植民地だったフィリピンはカトリックなので死刑を廃止しましたが、ドゥテルテ前大統領が麻薬の密売に関わったとされる人を数千人単位で「処刑」したことは周知の事実です。しかし、このような人数は「死刑」に含まれません。
そう考えていくと、一概にどちらが正しいと言い切れる問題ではないのです。そういう各国のアイデンティティにも大きくかかわるデリケートな問題に、余所の国や国連やNGOが口を出すのは内政干渉です。
もちろん、中国や北朝鮮、あとアフリカにもいくつかありますが、無辜(むこ)の国民が正式な裁判を経ることなく、あるいは不当な裁判で死刑にされる独裁国家に対しては、国際社会が断固として声をあげるべきであることは、言うまでもありません。
■事件現場で警察に射殺される凶悪犯
また、アメリカの死刑制度について触れていますが、アメリカ人で弁護士でもある私は決して騙されません。
アメリカにはいくつ州がありますか? 50州です。2024年末現在、23州が死刑を廃止し、27州は死刑を存置しています。そのうちカリフォルニア、オレゴン、ペンシルベニアの3州は州知事令により死刑執行を停止していますが、残りの24州が死刑を執行しているのです。
それから、これはまったく自慢できない話ですが、死刑を廃止した州であっても、凶悪犯を警察が現場で射殺することは日常茶飯事です。むしろ死刑が廃止された反動で、義憤に駆られた警察官が、犯罪の現場で「私刑(=射殺)」に走る確率が上がるのではないかという指摘もあります。
■「見たくないものは見ない」日弁連の主張
そういった都合の悪い情報には一切触れず、死刑を存置している国が日本だけであるという結論に持っていきたいために、OECD加盟国に絞って、「死刑を国家として統一して執行しているのは」という都合のいい条件付けでアメリカを外し、「日本だけ」と結論付ける。これを「欺瞞」と言わずに何と言えばいいのでしょうか。
私は別に死刑を推進したいわけではありません。例えば、中国の死刑などは、アムネスティが報告書で「当局の施策の実施過程には、公正な裁判の保障措置がなく、不当な死刑執行の可能性がある」と強く非難しているように、大いに問題ありと言えるでしょう。
中国共産党の弾圧を受けているウイグル族や法輪功信者などは、犯罪者でもないのに、臓器移植のドナーにする目的で強制収容所に入れられて、適合する患者が現れたタイミングで死刑執行されるのです。
ただ、日弁連の死刑廃止の主張は誠実さのかけらもない詭弁です。自分たちに都合のいい論理構成で、十分な知識がない日本国民を騙そうとする、その性根が許せないのです。
■オウム事件の死刑執行に批判の声
日本でオウム真理教の元幹部ら13人の死刑が執行されると、欧州連合(EU)諸国や人権団体は、日本の死刑制度について批判しました。
共同通信によれば、EUとその加盟国、アイスランド、ノルウェー、スイスの駐日大使は、「いかなる状況下でも極刑の使用に強くまた明確に反対」し、「死刑廃止を視野に入れた執行停止の導入を呼び掛ける」などとする声明を発表しました。
声明は、事件が「日本国民にとって、とりわけつらく特殊な事件であると認識している」として、テロ行為を断固非難すると強調する一方で、「死刑は残忍で冷酷」であり犯罪抑止効果がなく、誤審で執行されれば取り返しがつかないなどと指摘しました。EUは全世界での死刑廃止を推進しています。そして死刑廃止国でなければ、EUに加盟できません。
また、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「オウム真理教による犯行は卑劣で罰せられるのは当然だが、死刑が答えではない」と指摘しました。
しかし、日本は逆に質問してあげたらいい。「ヨーロッパでは、現行犯の時点で犯人を逮捕せずに、どれだけ多く射殺しているんですか?」とね。
■公正な裁判で審理する日本は非道なのか
日本の刑事ドラマの常識では、わざわざ射殺しなくても、警察は逃げようとする犯人の足を撃てば走れなくなる、腕や肩を撃てば銃を使えなくなるから、それで逮捕できると考えますよね。
アメリカについて言えば、警察は胸を撃つ訓練を受けています。胸を狙えば万が一弾が逸れても、体のどこかに当たる可能性が高いからです。
彼らには「生け捕り」という発想は、日本と比べたらまったくと言っていいほどありません。アメリカ国内には約4億丁の銃が出回っています。犯人が銃を持っている可能性が極めて高いので、犯人逮捕はまさしく戦場と同じで「殺るか殺られるか」の状況になるわけです。
戦後、日本国内で発生した人質事件で犯人射殺により解決した事件は、1970年5月12・13日の瀬戸内シージャック事件、1977年10月15日の長崎バスジャック事件、1979年1月26日の三菱銀行人質事件の計3件のみ(2018年現在)で、これら以降は一例も存在しません。
日本では犯人を射殺せず、ひたすら説得して、強硬突入した場合もできるだけケガさせずに逮捕して、三審制で公正な裁判をやって死刑判決が出たら、再審の機会も与えた上で、ようやく死刑執行するのです。他の先進諸国と比べても、はるかに加害者の人権に配慮しています。
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ケント・ギルバート
米カリフォルニア州弁護士
1952年米国アイダホ州生まれ、ユタ州育ち。71年宣教師として初来日。80年米ブリガムヤング大学大学院卒業。
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(米カリフォルニア州弁護士 ケント・ギルバート)

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