トランプ大統領は何を考えているのか。米保守系シンクタンク「アメリカ・ファースト政策研究所」のフレッド・フライツさんは「トランプはロシア、中国、イラン、北朝鮮に対して、平和と繁栄を求めている」という。
トランプ・高市同盟で日米は繁栄する』(PHP新書)より、国際政治アナリストの渡瀬裕哉さんとの対談を紹介する——。(第2回)
■なぜトランプ大統領は焦っているのか
【渡瀬】トランプ政権は何を目指しているのでしょうか。
【フライツ】そうですね。私たちの海外の友人たちは、特にこの政権がなぜこれほど活発なのか、疑問に思っています。なぜこの大統領は就任後これほど多くのことを、これほど速く取り組めたのでしょうか。
理由の一つは、トランプ大統領には1期目を終え、その後4年間、考える時間があったことです。その間、彼はよりよい方法を探り、2期目のための政策を準備していました。
また、今回は2期目ですから、トランプ大統領にはもはや再選の可能性がありません。彼には、この4年間しかないことがよく分かっています。就任1年目以降は、下院の多数派維持に注力しなければなりません。
3年目には、新たな政策をさらに実施する時間的余裕が生まれるでしょう。しかし4年目には、次の大統領選挙キャンペーンに多大な労力を費やさなければなりません。
そのため、トランプ大統領にはあまり時間がないのです。
現トランプ政権は、是正と反発の期間となるでしょう。バイデン政権時代の誤りを是正し、バイデンが国内政策と外交政策、アメリカと他国との関係に与えた損害を修復するものです。
■否定される「バイデンの4年間」
【フライツ】覚えておいていただきたいのは、ジョー・バイデンは「アメリカ最大の安全保障上の課題は気候変動であり、中国ではない」と述べた人物だということです。狂っているとしか思えない主張です。中国はジョー・バイデンを愚か者だと見なし、バイデン政権下でアメリカの国際的な評判は著しく損なわれました。
トランプは米国の外交政策を再建しつつあります。イランを空爆する決定を下し、ロシアへの警告を発するなど、すでに再建されていることは明白です。強固で断固としたアメリカ大統領の存在は、アメリカの安全保障だけでなく、世界の安全保障にとってもよいことだと考えています。
トランプはその他多くの国内問題を解決しようとしていますが、ここでは詳しく触れません。唯一付け加えるなら、トランプ政権にとって非常に優先順位が高いのは移民問題、つまり、アメリカ南部の国境の安全確保です。
バイデン政権時代、少なくとも1100万人の不法入国者が米国に入ってきました。
私たちはその多くについて、彼らが誰なのか、どこに行ってしまったのかを知らないのです。
彼らはまだ私たちの国にいます。多くは犯罪者、ギャングのメンバー、中国の諜報員、ロシアの諜報員、イスラム原理主義のテロリストです。トランプは国境を封鎖しただけでなく、これらの人々を強制送還しています。そして、アメリカ国民は、それをとても喜んでいます。
■「トランプはプーチンが好き」は本当か
【渡瀬】トランプの派手なパフォーマンスについてどう思いますか。これも目標達成のために必要ですか?
【フライツ】彼は取引の達人です。虚勢を張ったり、ハッタリをかませたりする。それが彼のスタイルであり、ある種のパフォーマーなのです。
トランプの外国の指導者についての発言を取り上げ、トランプがプーチンや習近平に過剰に好意的であるかのように批判する向きがあり、「トランプは独裁者が好きなのだ」などといわれたりします。しかし、独裁者が好きなどということはまったくなく、トランプは単に取引を成立させようとしているのです。取引を成立させる際、相手にお世辞をいうことがあるでしょう。

大統領執務室でトランプ大統領が推進する政策を発表する際などにも、ある種のパフォーマンスが伴います。例えば最近、暗号通貨関連の法案「ジーニアス法」に署名した際、トランプは「これは私にちなんで名づけられた」と冗談を飛ばした。まさにトランプらしい言い方です。
トランプは面白いことをいったり、時にはさほど真剣でない軽いメッセージで人をからかったりすることもありますし、批判者、特に報道陣を挑発しようとすることがあります。それに関して説明を求められても、「トランプはトランプらしく振る舞うだけ」としか言いようがありませんね。
■アメリカが軍事力を行使できる条件とは
【渡瀬】トランプ政権の外交・安全保障政策における最終的な目標は何ですか?
【フライツ】米国国家安全保障戦略のことをトランプは「アメリカ・ファースト」と呼んでいますが、(アメリカ一国さえよければいい、というような印象を与えないために)他国の友人たちには「トランプ・ドクトリン」と説明したほうがよさそうです。
これは、強力なアメリカ大統領、強力な国家安全保障チーム、非常に攻撃的な国家安全保障政策、強力な軍隊を意味します。
しかし、大統領には軍事力を慎重に扱い、米国の国家安全保障の利益が脅かされる場合のみ使用することが望まれます。また、同盟国と協力する一方で、同盟国に自らの責任を果たすことを求める大統領でなくてはいけません。この大統領は国連を通じて行動しますが、特に中国が支配する国連機関に対しては懐疑的です。
この外交政策アプローチは、ある意味でロナルド・レーガンが提唱した「強さによる平和」というスローガンを基盤としていますが、トランプはこのモットーを少し修正し、「強さと通商による平和」を望んでいる、と述べました。
■トランプ「イランを永久の敵としたくない」
【フライツ】トランプはロシア、中国、イラン、北朝鮮に対してメッセージを送っています。
「合意を結んで緊張を解消しよう! そうすれば平和がもたらされ、皆が繁栄するのだ」と。2025年5月、サウジアラビアでの演説で語った言葉です。また、このとき「アメリカが永久の敵を持つことを望まない」とも述べました。
これはイランに対する非常に重要なメッセージでした。トランプがイランを爆撃する前に、彼は「イランを永久の敵としたくない」と述べ、外交を通じて両国の対立を解決するためイラン政府と協力する用意がある、と表明していたのです。ロシアと中国に対しても同様のメッセージを発しています。
ウクライナ戦争、台湾に対する中国の強硬政策、知的財産の窃盗、南シナ海における脅威、米国へのフェンタニル密輸など、トランプ自身が懸念する問題については両国に対して強硬姿勢で臨みます。トランプは中国との対話も望んでいます。関係改善を図りつつ、脅威と見なす中国の政策変更を迫る圧力をかけたい、と考えているのです。

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フレッド・フライツ
アメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)副所長

中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)、国務省、米下院諜報特別委員を経て現職。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)

早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員

パシフィック・アライアンス総研所長。1981年東京都生まれ。
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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(アメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)副所長 フレッド・フライツ、早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)
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