※本稿は、ひろゆき『人生の正体 生きること、死ぬこと』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■ひろゆき「僕はウソをつく資格がない」
ウソをつくことは、その場しのぎだと思われがちだ。
でも実際は、その場では終わらない。ウソをついた次の瞬間からあらたな工程が発生する。自分がつくった「物語」の整合性を、維持管理するためのマネジメント能力が試されることになる。
いつ、どこで、誰に、どんなウソを話したか――。
まずはその設定を、次に会うときまで自分のメモリに保持しておかないといけない。それができないと物語に矛盾が生じる。ウソが露呈する。
ウソをウソとして完結させるには、面倒な長い道のりを要するのである。
「ウソをつくのは悪い」という倫理や道徳の話をしたいのではない。
僕は記憶力が極端に悪い。ウソをついても、いつ、どこで、誰に、どんなウソをついたか覚えられない。つまり、僕にはウソをつく資格がないのだ。ウソをマネジメントできないから、ウソはつかない。いや、つけないのである。
■「マネジメント能力」がない人にウソをつくのは難しい
ウソは、いかに無理なく辻褄を合わせられるか、そのマネジメント能力が問われる。
ウソも正直も、人格や道徳感のひと言で片づけられるものではないのだ。
上手にウソをついて、それがなかなかバレないのはどういう人なのか。
やはり、記憶のメモリが大きいかどうかにかかっていると思う。
ウソが成立する条件は単純だ。
ついたウソの設定を忘れずに、長く頭の中にとどめておけること。これには記憶力や注意力が必須条件だ。
別に、ウソが上手な人は頭がいい! と持ち上げるつもりはない。普通の人が真似しようと思っても、そういったスキルがなければすぐさま事故る、という話なのだ。
多くの人は、そこまで計画的で巧妙なウソなど考える機会がない。だから、慣れていないウソをついてもすぐに破綻し、信用もガタ落ちする。信用が失墜すると、人生が面倒くさいことになる。
■ウソって割に合わない
結局、僕が言いたいのはこうだ。
ウソは割に合わない。
僕はあまりウソをつかないし、ウソつきの人も嫌いだ。それは僕が「真実」の人というわけでなく、単に「面倒くさい」からだ。ウソを嫌う理由は、人によって違う。
裏切られたくない。
「あれ? たしかあの人、こう言ってたと思うけど……。そうじゃないんだとしたら、僕だけじゃなくて、いろいろな人に迷惑がかかるんじゃないですか?」
この手の、最初に言っていたことが事実と違うことで状況がどんどんこんがらがってしまうという話は多々ある。そういうとき、僕は心の底からこう思うのだ。
「めちゃめちゃ面倒くさい話になってんじゃん!」
ようするに、ウソが混ざると多くの人が巻き込まれるのだ。
事実確認、やり直し、修正、フォロー。
人間関係のトラブルは、だいたいウソがからんでくるものなのである。
■「過剰な断定語」は不安の裏返し
ウソと同じくらい厄介なのが、過剰な断定語だ。
「絶対」「マジで」「100%」といったセリフである。
それらは一見すると強い気持ちの表明だ。
人はおうおうにして自信がないとき断定に走る。
Aさん「あなたを心の底から愛しています。100%、ウソ偽りはありません」
Bさん「ありがとう。でも……」
Aさん「いや、絶対! マジで! 100%! 本当なんです!」
Aさんは誠実であろうとしているのかもしれない。でも断定を重ねることで“真実味”ではなく“焦り”の響きを帯びる。圧力で押し切ろうとした結果、むしろ言葉が軽くなってしまうのである。
揺るがない真実はむしろ静寂を帯びるものだ。過剰な断定は、不信や不安の裏返しと取られても仕方ない。
断定語は検証不能だ。
「絶対」と言われても、測りようがない。「100%」と言われても、基準がない。
さらに断定語は反論を封じるためにも使われる。
「絶対」と言われれば、議論は止まる。「100%」と言われれば、余地は消える。
でもそれは正しさの証明にはならない。
正しさは、声の大きさとは無関係なのだ。あくまで根拠や具体性や再現性に基づくのである。
過剰な断定は要注意である。言う側も、受け取る側も。
■「言葉の安売り」はブーメランとなって返ってくる
強い断定語は、時にブーメランとなって自分に返ってくる。それが、もっともわかりやすくハマるのは恋愛の話かもしれない。
「一生キミとは絶対に別れない」「オマエをマジで愛してる」「アナタには100%ウソはつかない」
言葉を投げかけている側は優しさのつもりで言っている。受け取る側も嬉しい。
でも、この誓約はだいたい破綻する。
なぜなら、心の底から「あなたのことがいちばん好きです」と言っている人も、上っ面の言葉でサービス精神から言っている人も、不倫をする人はするし、しない人はしないからだ。
ここでのポイントは、不倫の善し悪しではない。
言葉の精度の問題だ。
人間の感情は同時に走る。奥さんも好き。子どもも大事。友達も大事。趣味も大事。でも、不倫相手も好き。
それなのに「100%」と言い切るのは、全体の割合と数字が合わない。
サービス精神が高じて、あまりに言葉を安売りしすぎているのだ。
強い断定語は、相手を安心させるために使っている、その場しのぎの逃げ口上にすぎない。だから、「あのとき、たしかそう言ってたよね?」「言ってることとやっていることが全然違うじゃん!」と激しく突っ込まれるような事態に陥ったら、説明したり、訂正したり、謝ったり、必ず帳尻を合わせるための「回収」が必要になる。
追求に耐え切れず、前言を撤回することになるなら、そんなハッタリは、最初から言わないほうが無難だ。
■ひろゆき「僕が正直でいるのはコスパがいいから」
ウソもそうだが、僕は不正確なことを言うのがあまり好きではない。そもそも感覚として、不正確なことがあまり思考の中に浮かんでこないのだ。
だから、僕は正直でいい。他人の目を気にして品行方正に振る舞おうとしているわけじゃない。ウソも、雑な断定も、運用コストが高いから言わないだけなのだ。
・ウソも強い断定語も、言ったことを貫き通すためには高度なマネジメント能力が必要
・ウソも強い断定語も、設定管理には記憶力が必須
・両者とも一度言葉にして発したら、将来にわたって注意深く生きなければならない
正直でいることは「良い人」の証明ではない。圧倒的にコスパがいいから正直でいるのだ。リソースは有限であり、別のことに使ったほうがいい。
正直でいることは、人生をラクにするための最適化なのである。
■現実世界のウソとSNSのウソの違い
一方、SNSはウソが露見しても、逃げ切ることができる。
理由は単純で、リアルなコミュニティに比べて矛盾が見つかりにくいうえ、後始末の責任がなし崩し的にうやむやにされがちだからだ。
まず、SNSではウソの全体像が見えにくい。
タイムラインはどんどん流れていくし、投稿は膨大な情報の切れ端として消えていく。読んでいる側も面倒なので、いちいち過去の発言までさかのぼって整合性をチェックしたりはしない。
つまり、ウソを検知するのに時間と手間がかかり、矛盾が表面化しにくいのだ。
次に、ウソがバレても何とかなる。
リアルのウソは、同じ会社や学校、友人関係のように、同じコミュニティの中で回り続ける。だから、どこかでいったん矛盾が噴き出したら逃げ場がなくなり、ウソで直接的に迷惑をこうむった当事者から説明責任を追及される。
かたやSNSはどうか。相手が「顔の見えない大多数」であるぶん、個対個の関係性は希薄だ。ウソに対して激怒りする人もいるが、全員から怒りを買うわけでもないので、騒ぎ立てる人間はブロックすれば済む。後始末のコストは安上がりだし、アカウントをつくり直せば、関係ごと切り捨てて次のゲームに移れる。
■ヘラヘラと正直に生きたほうが圧倒的にラク
SNSでは、ウソは秒速で拡散されるため、1回のウソで得られる注目度・共感・勝った感といったリターンが極大化しやすい。しかも、大したダメージもなく、逃げ切りが可能なので、必然的にウソだらけになる。
じゃあ、ネット界隈を揺るがすような重大なウソをついても、当事者は無傷で逃げられるのか。それは、やはり難しい。なぜなら、ログだけは淡々と残り続けるからだ。
それは、長い時間が経過し、ウソが風化され、人々の記憶から消し去られたころにやってくる。何かのきっかけで昔の投稿が掘り起こされ、「あのときこう言ってましたよね?」と過去の過ちを突きつけられる。
ウソの当事者があらたなキャラとして生まれ変わり、いまは別世界を生きていようとも関係ない。過去についたウソが、巡り巡って自分の元に戻ってくるのだ。
ログを掘り起こされることを恐れて、毎日ビクビクしながら生きるのはそうとう疲れる。自分のついたウソに押しつぶされないように生きるより、もっとヘラヘラと過ごせる人生のほうが圧倒的にラクだろう。
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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)

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