※本稿は、名取芳彦『グズを直す本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■話し方上達の近道は素直であること
「住職は話が上手ですね」と言われると、「話が上手なのではなく、口がうまいだけですよ」と、私は照れ隠しで答えます。
私自身、自分の話が上手かどうかを意識することはほとんどありません。ただ、自分が体験して気づいたことや感じたことを、相手にわかりやすく、具体的にイメージしやすいようにお伝えしようとしているだけです。とはいえ、これが自然にできるようになるまでには、十年ほどかかりました。
私が住職を務めるお寺では、かつて月一回、ベテランアナウンサーの村上正行さん(故人)にお願いし、“話の寺子屋”と称した話し方の勉強会を三年ほど開催していました。
村上さんは、アナウンサーとしてだけでなく、人間としても本当に素敵な方でした。私の話し方は、村上さんの指導を素直に実行した結果だと言えます。
素直に実行できたのは、村上さんを尊敬していたからです。尊敬する人の言葉には、素直に従えるものです。
そのおかげで、素直さが上達への近道であることも知りました。人前で話すことや、初対面の人との会話なども苦にならなくなり、楽しめるようになりました。人生で尊敬できる人に出会えるのは、まことに幸いです。
さて、この“話の寺子屋”で村上さんがおっしゃったことの中から、人前や初対面が苦手な方が、それを克服するための参考になる話をいくつかお伝えします。
■「人前で話すのは恐い」ではなく心を開く
話しというのは、こちらが裸になれば相手も裸になります。こちらが鎧を着れば、相手も鎧を着てしまいます。
「人前で話すのは恐い」と言う人がいますが、それは相手を最初から敵に回しているようなものです。相手を敵にしないためには、まずこちらが心を開くのがとても大切です。
心を開かない人は、どんな素晴らしいパーティーの中にいても、独りぼっちです。他人に関心がなく、周りの人のほうから自分に関心を持ってほしいと思っているんです。たとえば、いい時計をしてパーティーへ行けばみんなが何か言ってくれると思っているのです。
お皿を取る時も、ナイフを使う時もわざと時計を見せようとします。
ですから、人前が苦手だったり、パーティーが嫌いだったり、初対面の人が苦手な方は、まず自分が相手に対して心を開き、相手に関心を持つのが大切なのです。
何にでも関心を持ってください。そして、何にでも感動してください。季節を感じる感覚や、物事を受け止める感性は、動物の中で人間が一番にぶいのではないかと思います。その中でも、子どもが一番敏感です。大人になるほどにぶくなってきます。
つまらない大人が「秋冷頓に加わり候」などと書く前に、子どもたちは秋のトンボを追いかけ、冬の遊びをやり、春の歌を歌い、夏の水に飛び込んでいます。あなたにもあった、そのみずみずしい子どもの頃の感性を呼び覚ましてください。
「話す」という行為は、もともと「放す」「離す」から来ています。つまり、自分の心を外に向けて放していくことです。
■「作るな、気取るな、偉ぶるな」
この言葉にしても、言霊ともいわれるように、心が宿っています。「ハ(葉)」は刃も山の端もそうですが、本体があって、そこから突き出てきた部分です。言葉の本体は心です。心から出てくるのが言葉です。だからこそ大切なのは、本体の心なのです。
話のコツは一つ。それは、自然に話すということです。逆に言えば「作るな、気取るな、偉ぶるな」ということ。パーティーなどで挨拶する来賓は、それなりの社会的な立場の人です。ところが、肩書が邪魔をして、話を作り、気取った話し方や内容にしようとし、偉ぶることも多いので、聞いている側はつまらないのです。
人は、話の内容などたいして聞いていません。
では、なぜ特定の局の天気予報を見るかと言えば、その局のキャスターの話し方に表れている人柄で見ているんです。それが「話し」というものです。
私はこうした村上さんのアドバイスを素直に受け止め、今も楽しく練習しつづけています。あなたも、言葉の本体である心を、まずは磨いていきませんか。
■その緊張は、自分を“過大評価”している証
緊張とは、心拍が速くなったり、身体がこわばったり、手汗をかいたりするなど、おもに身体的な反応を指します。ただ「緊張してドキドキした」と言うように、身体反応以前の精神的な状態も表します。
「感情」の研究には“次元論”という分野があるそうです。それによると、緊張は、ワクワクする快さと同じレベルの明瞭な覚醒状態ですが、不快の領域に分類されます。
もちろん、緊張は悪いことばかりではありません。
私も人前で話をする時にドキドキしていたことがありましたが、大先輩に「ドキドキは心の応援団の拍手の音だ」と言われて共感しました。
それ以来、適度な緊張を楽しみながら勤めを果たせるようになりました。どんなに緊張しても「あと二時間すれば終わっている」と思えるようになり、緊張を楽しめるようになったのです。
むしろ最近は、何かに臨む際、ある程度緊張していないと、特に相手がいる場合はかえって失礼に当たるとさえ感じます。
ところが、緊張と似た感情でありながら、プレッシャーは少し話が違ってきます。
プレッシャーとは、心理的・精神的な抑圧感を指します。私の経験では、自分の能力以上のことを相手から求められているような気がして、それに応えられるかわからない不安や自信のなさから来る緊張状態のことです。
■失敗した時に出る自分の本性を磨いておく
初めての職場環境、オーディション、デート、講演など、「今回失敗すると次に挽回するチャンスがない」といった、最初で最後のような切羽詰まった状況に直面した時に、人はプレッシャーを感じます。
相手がこちらの能力以上のものを求めていると勝手に思い込み、プレッシャーを感じるのは、「自分ならやれるだろう」と自分自身を過大評価している証拠です。
実際には、相手は「まあ、やれるだけやってみて」くらいにしか期待していないことが多いものです。実力以上のものは出ませんから、やれるだけやると割り切るしかありません。
「でも失敗したら、二度と声がかからないかも」とさらに自分にプレッシャーをかけがちですが、そんな時は失敗した時に出る自分の本性を磨いておくしかありません。
昭和の時代、放送局のアナウンサー採用試験の最終審査では、審査員は失敗した時の対応を見ていたそうです。人は失敗した時にこそ本性が出ます。失敗してしかめ面になり、その場を凍りつかせたり、雰囲気を悪くしたりする人は不採用になります。
採用されるのは、失敗しても周囲を明るくできる人です。番組編成の時期になると、民放各局でアナウンサーのハプニング特集が放送され、私たちを大いに笑わせてくれますが、それはそのようにして選ばれた本性が明るい人たちだからでしょう。
ですから、過度なプレッシャーを感じても、失敗した時に前向きになれるよう日頃から自分磨きをしておけばいいのです。
■深呼吸で自律神経のバランスを整える
実際にプレッシャーを感じる時の対処法としては、自律神経のバランスを整え、心身をリラックスさせる深呼吸が一番です。
私たちは気分が落ち着いている時は、呼吸が自然と深くなります。見晴らしのいい展望台に立った時や、海岸に座って眼前に広がる海原を眺めてリラックスした時を思い出していただければわかるでしょう。この心と身体の仕組みを逆手に取るのです。深呼吸をすることで、心もリラックスした状態に導かれます。
また、私は心に張りがない時に、この心と身体の反応を利用して、心に張りを取り戻します。
それは声の高さと心の関係を利用する方法です。私たちは心に張りがあると声が高くなります。
きれいな場所に行けば、普段より高い声で「きれいだ」と言いますし、おいしいものを食べても「おいしい」と声が高くなります。これを利用するのです。
心がだらけていると「おはよう」は「おぁよう」に、「森と林」は「森とぁやし」のように発音が不明瞭になりがちです。そんな時は、意識して高い声で「おはよう」「森と林」と言うと、不思議と心に張りが戻ります。
プレッシャー(圧力)を物理学では、二つの物体が接触面で互いに垂直に押し合う力と定義しています。自分が直面している物事に対して、垂直に自分が向かい合っているとプレッシャーは大きくなります。
本項でお伝えしたプレッシャーに対するいくつかの付き合い方は、この垂直にかかっている力を斜めに逃がす効果がありそうです。ぜひお試しください。
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名取 芳彦(なとり・ほうげん)
元結不動密蔵院住職
1958年、東京都江戸川区小岩生まれ。密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。密蔵院写仏講座・ご詠歌指導など、積極的な布教活動を行っている。主な著書に、『気にしない練習』『人生がすっきりわかるご縁の法則』『ためない練習』『般若心経、心の「大そうじ」』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)などベストセラー、ロングセラーが多数ある。
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(元結不動密蔵院住職 名取 芳彦)

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