※本稿は、岩田彰一郎『起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■アスクルが生まれた背景
アスクルは、1993年に、事務用品メーカーであるプラスの社内ベンチャーとして始まりました。
その最大の目的は、プラスの商品を拡販することで、長年、後塵(こうじん)を拝していた最大手メーカーに勝つことでした。
背景にあったのは、流通支配型メーカーによる独占構造です。
1980年代まで、多くの業界では、大手メーカーがリベートや報奨制度などで小売店を囲い込み、自社商品を優先的に扱わせて、ライバルメーカーの商品を排除することが行われていました。
文具業界もその例に漏れず、業界最大手のメーカーが独占的な力を持ち、街の文具店ではそのメーカーの商品が優先的に扱われていました。そのため、プラスの商品はなかなか扱ってもらえませんでした。
私も、1980年代後半に、その独占構造の壁にぶち当たり、悔しい思いをした経験があります。
当時、私は新商品の開発プロジェクトチームの責任者を任されていて、スタイリッシュで機能性も高い文具を開発しました。消費者調査では大好評で、これなら最大手メーカーにも対抗できると、自信を持って売り出しました。
ところが、発売されると、その自信は打ち砕かれました。
■良品なのに売れなかった理由
理由は、最大手メーカーの商品よりも劣っていたからではありません。店頭に並べてもらえなかったからです。当時、文房具店は全国に3万5000店ほどあったのですが、置いていただけたのはわずか200店ほどでした。
なぜ置いていただけないのかというと、最大手メーカーの商品を売るほうが業界内の地位があがり、たくさんリベートがもらえるからです。
店頭でライバル商品と比較されて、お客様の評価で売れなかったのなら、納得できます。しかし、店頭にも並べてもらえず、お客様が目にすることすらないというのでは、泣くに泣けません。
長年、このような業界構造に苦しんでいたので、プラスの社長は親の代から「最大手メーカーに一矢(いっし)報いたい」という強い思いを持っていました。それは私も同じでしたし、プラスの全社員が同じ思いだったでしょう。
どうすれば最大手メーカーに勝てるのか? その方法を議論するために、プラスでは1990年に「ブルースカイ委員会」を立ち上げました。今泉嘉久(いまいずみよしひさ)社長(当時)や2人の役員に加えて、慶應義塾大学の井関利明(いぜきとしあき)先生(現・同大学名誉教授)、事務局として、商品開発の責任者をしていた私もその委員会に参加し、意見を述べました。
■「ムダなこと」が事業のタネになる
ある時、その委員会で、社長が疑問を口にしました。
オフィスビルの搬入口を朝から晩まで見ていると、たくさんの業者が、それぞれの配送車で、ひっきりなしに出入りしている。これは非常に効率が悪いのではないか、という疑問です。
確かに、各業者がそれぞれに配送車とドライバーを用意するのでは、全体として見るとムダが生じているはずです。オフィスで必要なものを、まとめて配送するサービスがあれば、そのほうが効率的です。
また、この光景からもうひとつ見えてくることは、大企業は中小企業よりも、圧倒的に有利な条件で商品を買っているということです。
大企業は、電話やFAXで注文すれば、無料で商品を配送してもらえますし、値段も安くしてもらえます。一方、中小企業は、そんなサービスは受けられませから見れば公平とは思えません。
そこで、ブルースカイ委員会では、2つのキーワードが出ました。
ひとつは、「プラスにとって、お客様は誰?」。
これは、流通の方ではなく、最終的に商品を使う方、つまり、消費者、そして企業だと提起しました。
2つ目のキーワードは、「社会最適であるか?」にしました。
先述した状況は「社会最適」とはいえません。
社会最適にするためには、中小企業向けに、オフィスで必要なものをまとめて配送するサービスがあればいいのではないか。
お客様に直接配送すれば、小売店に商品を並べてもらえないという問題も解決します。
こうして、アスクルの事業アイデアが生まれたのです。
■「社会最適」にするために変えたこと
オフィスで必要なものをまとめて配送するとなると、卸(おろし)業者や小売店を介さずに、直接お客様に販売することになります。
従来の流通では、メーカーとお客様の間に卸業者や小売店が介在していました。これは、物流インフラやコンピュータが発達していない時代には、お客様にいち早く商品をお届けするために合理的な仕組みでした。卸機能も長い歴史を持つ社会システムとして、立派に機能しています。
しかし、物流インフラが整い、コンピュータで在庫を管理できるようになるなど、情報システムが進化すると、効率的とはいえなくなり、むしろ弊害のほうが目立つようになっていました。間に入る業者が多い分、多くのマージンが発生し、小売価格が高くなりますし、配送のコストも余計にかかります。
直接お客様に商品を販売すると、卸業者や小売店を介さない分、商品の原価が下がるので、安く販売できます。配送に関しても、これまでよりも少ない台数の配送車で、お客様のもとに素早く商品をお届けできます。
ただ、お客様に直接販売するためには、流通だけを再構築すればいいわけではありません。
しかし、お客様を開拓するには、大変なコストがかかります。
■小売店に「得意な役割」を担ってもらう
そこで、「エージェント制度」をつくりました。卸業者さんや小売店さんにアスクルのエージェントさんになっていただき、お客様の開拓をしていただいたのです。
エージェントさんがお客様にアスクル利用の申し込みをしていただき、お客様がアスクルに注文すると、注文金額の一定割合がエージェントさんに入る仕組みです。
また、お客様の与信・回収の役割も、エージェントさんに担(にな)っていただきました。小売店さんは地域密着でビジネスをしてきているので、地域の中小企業に対する営業活動や与信は、アスクルよりも得意です。
それぞれに得意な役割を担っていただく「機能主義」も、ビジネスモデルの構築で意識したことのひとつです。
小売店さんにとっても、従来の販売方法からは変わるものの、営業活動と回収という強みを活かして、新たなビジネスモデルで商圏を拡大することもできるので、ビジネスチャンスでもあったはずです。小売店さんとの共存共栄を図(はか)るという意味で、これも「社会最適」といえるのではないでしょうか。
このようなビジネスモデルを構築したことが、アスクルの大きな強みとなりました。
エージェントさんがお客様を開拓し、与信管理、代金回収の機能を担ってくださったことで、お客様への販売代金を回収できないなどのトラブルにあうこともなく、利益を安定的にあげられました。
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岩田 彰一郎(いわた・しょういちろう)
アスクル創業者/フォース・マーケティングアンドマネージメント代表取締役CEO
1950年、大阪府生まれ。1973年、慶應義塾大学卒業後、ライオン油脂(現・ライオン)入社。「free & free」などのヒット商品を手がける。1986年、プラス入社。1992年、同社営業本部アスクル事業推進室室長。翌年、アスクル事業を開始。1997年、アスクル事業がプラスから分社し、アスクル代表取締役社長に就任。2000年、同社代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)。2012年、LOHACOをサービス開始。2019年8月、退任。2019年9月、フォース・マーケティングアンドマネージメントを設立し、代表取締役CEOに就任。大手企業のイノベーションの推進およびベンチャー企業のハンズオンによる育成を行う。
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(アスクル創業者/フォース・マーケティングアンドマネージメント代表取締役CEO 岩田 彰一郎)

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