※本稿は、伊藤滉一郎『子どもが沈まない 親が無理しない 小中高大受験戦略』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
■高校受験で広がる「子どもの可能性」
中学受験を避けてあえての高校受験を選ぶことで得られるメリットもあります。まず、都市部の高校受験のメリットに関して言えば、競合が中学受験と比較して弱いという点が挙げられるでしょう。
首都圏の中学受験率はおよそ2割(東京都は3割)です。これは言い換えると教育熱の高い上位2~3割が中学受験の段階で抜け(小学校受験で抜ける方もいますね)、高校受験はその上位層が抜けた状態での戦いになるということです。そのため、中学受験に比べて少ない時間的・金銭的コストでそれなりの高校に合格することが可能となり、コスパよく難関大学への道筋が開けるという見方もできます。
慶應や青山学院など、小学校、中学校、高校と入り口がいくつもある大学付属校は、高校受験が最も枠が広く入りやすいというのが業界の共通認識です。
2つ目のメリットとして、「社会の縮図」を思春期に身をもって経験できるという点が挙げられるでしょう。私の体験談ですが、社会で生きていくにあたって、高校以降に出会った学力的に恵まれた人たちだけでなく、公立中学校時代の様子を体感としてリアルに思い出せるのは、自分の強みであると感じます。
■多様な価値観に揉まれる3年間の価値
中高一貫の私立校を卒業し、難関大学に入学して、大手有名企業で働くのが当たり前という環境で育ってしまうと、そのような価値観が固定化されてしまい、そのレールから逸脱することに抵抗が出てきてしまうのではないでしょうか。
小中のうちから私立校に通い、恵まれた環境で思春期を送るのもいいかもしれませんが、私は公立中学校での経験を通して、世の中には「いい大学を出て、いい企業」だけではない、多様な生き方があるのだと体感として知っている人生も悪くないのではないかと感じています。
3つ目は、なんと言っても(親の)時間的・金銭的負担が小学校受験・中学受験に比べて少なく済むという点でしょう。
高校に入学するまでの塾代の平均は100万円程度だと言われ、中学受験の半分程度の費用で済みそうです。中学受験ルートにおいては、入学するまでの3年間の受験対策で300万円程度の課金をしたのちに、6年間にわたって授業料や寄付金などを払っていく必要があり、小3から大学入学までに1000万円程度が必要と言われています。
■親の負担を最小化する「公立×指定校推薦」
公立の中学・高校に進んだ場合、入学金や授業料、設備費といった学費はもちろんかからず、入学時に必要な制服などの入学準備金は10万円ほどで、給食費や修学旅行の積み立てにかかる費用も年間10万~20万円程度です。入学金や制服代を除いても年間100万円前後かかる私立中高との差は一目瞭然です。
また、受験対策における親の時間的負担も高校受験ルートだと少なく済みます。中学受験においては、子どもが持ち帰ってきたプリントの管理や課題の進捗確認、学校情報の収集など親がつきっきりで伴走する必要があります。中学受験の伴走のために親が仕事を休職するケースも少なくないといい、まさに「親子の受験」の様相を呈しています。
一方で、高校受験の場合はお子さんがある程度成熟した15歳での受験ということもあり、親が手取り足取りサポートする必要はなくなります。基本的には高校受験塾におまかせでよく、最低限の声かけや健康管理などは必要ですが、親が家で一緒に問題に向き合うといったことは不要でしょう。
大学受験まで見据えたときに、費用・労力(対策時間)面で最もコスパが良いルートは、公立中・公立高から指定校推薦で早慶MARCHルートだと考えています。
■大学入試の3割超が「学校推薦型」を選ぶ時代
「指定校推薦」というと、一部の真面目な優等生にしか縁のない話だと考える方も多いかもしれませんが、現在、公募推薦・指定校推薦・付属高校からの推薦がメインとなる「学校推薦型選抜」は全国の大学で増加傾向にあり、メジャーな入試方式の一つになろうとしています。
2024年には、全大学入学者のうち35.5%が学校推薦型選抜(そのうち28.8%が指定校推薦)を経て大学に入学しています(※)。首都圏1番手でなく、2~3番手の公立高校にも、早慶MARCHの指定校枠が多く用意されています。例えば、神奈川県立川和高校は東大合格者が0人の年も少なくない公立校ですが、なんと早稲田大に12枠、慶應大に7枠もの指定校推薦枠を保有し、毎年こちらの枠を使い切るそうです。
※ 2024年度入試の全選抜区分中、総合型選抜の割合が1.6ポイント増加(Between 情報サイト)
川和高校よりも偏差値的に下のレンジであっても、早慶MARCHの指定校枠がたくさん用意されている公立校は多いので、そうした情報も入学前に調べておくとよいでしょう。指定校推薦を検討する場合は、もちろん校内のテストなどでは手を抜けませんが、難関大学志望者のように駿台や河合塾といった大学受験予備校に通う必要はなく、塾代も一般受験組に比べると少なく済む傾向にあります。
■地域によって大きく異なる内申点の重み
公立中学でそこそこに勉強して地域で2~3番手の公立高校に入り、指定校推薦で難関私大を手堅く狙うという戦略は、単純な労力や費用のみを考えたら最もコスパが良いルートです。定期テストなどに手を抜かずにコツコツと努力できるお子さんは、こちらの指定校ルートを検討してみるのもよいでしょう。
公立高校受験を忌避し中学受験に向かう理由として、最もよく挙げられるものの一つが「うちの子は公立中学で内申点が取れそうにないから……」ではないでしょうか。
ご存じの方も多いかと思いますが、内申制度というのは、高校入試において、生徒の学力だけでなく、授業への態度、提出物、学校生活の様子、出欠状況などを総合的に評価し、その結果を「内申書(調査書)」という書類に記載して高校へ提出する制度です。
各都道府県ごとに内申点を加味する割合は様々で、例えば東京都立高校入試では、学力テスト7割・調査書3割という配分になっています。
全国を見渡してみると内申点を重視する地域(兵庫県など)と当日点を重視する地域(千葉県など)があり、これは学力さえ高ければ内申点にかかわらず難関校への道が開ける地域と、学力が高くても内申点によって難関校を目指すことが難しくなる地域があるということを意味します。
■「内申弱者」だったからこそ得られた視点
公立中学における内申点というのは、(近年は改善されている地域もあるようですが)テストの点数や挙手の回数などによる定量的な基準だけでつけられるものではなく、(特に実技科目では)教員の一存で「素直で愛想が良いから」などといった極めて曖昧な基準でつけられることも多いのが現状です。
実際、こうした不確実性に不安を感じる親子は多く、これが中学受験参戦の決め手となることも少なくありません。ただ、多様なバックグラウンドの生徒が集まる公立中学において、教師が生徒をコントロールする上で内申制度が防波堤になっている側面もあり、「治安維持」に一役買っているという見方もできます。
ちなみに私は中学時代、圧倒的「内申弱者」でした。授業中に寝ていたり、先生に反抗するタイプの幼い生徒だったこともあり、数学の定期テストで98点をとっても「3」がつけられてしまったという苦い思い出があります。
しかも当時の愛知県の高校入試は、内申点の比重が40%程度あり、一定の内申点を下回るとその時点でトップ公立校への道が閉ざされるという悲しい仕組みになっていました。私は当然、公立高校は諦めざるを得ず、遠く離れた私立校に進学することになります……。
■「先生に好かれる能力」は一生モノのスキル
私のように内申制度に苦しめられた経験を持つ大人は多く、我が子には経験させたくない……と考える親御さんは少なくないようです。
中学受験では、大学受験同様、テストの点数のみで合否が決まるところが大半です。小学校受験に関してはほとんどが親御さんの努力や資金力で勝負が決まるので、こういった教師の一存で運命が決まるといった不確定要素を減らすことができます。
ただ、お子さんが将来、日本の企業社会で暮らしていきたいと考えるなら、「内申点稼ぎ」の能力は必要になってきます。特に伝統的日系企業(JTC:Japanese Traditional Company)では、それこそ内申点と同じように、「意欲的に頑張っている(ように見える)」といった曖昧な理由で評価され、出世が決まることが多いのも事実です。
そのため、10代のうちからそうした「上の人に好かれる」トレーニングを積んでおくことは、未来の自分に感謝されることになるでしょう。
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伊藤 滉一郎(いとう・こういちろう)
受験・学歴研究家、じゅそうけん代表
1996年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、メガバンクに就職。2022年じゅそうけん合同会社を立ち上げ、教育機関向けの広報支援サービスを展開する。高学歴1000人以上への受験に関するインタビューや独自のリサーチで得た情報を、XやYouTube、Webメディアなどで発信している。著書に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。
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(受験・学歴研究家、じゅそうけん代表 伊藤 滉一郎)

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