わが子が将来、スポーツの世界で成功するようにするために親は何をしたらいいのか。世界の研究を調べた心理学者の内藤誼人さんは「生まれ月や出身地などによって大成するかどうかがわかる」という――。

※本稿は、内藤誼人『すごい子育て 科学的に証明された子どもの伸ばし方』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■プロ選手になるのに有利な生まれ月
親というものは勝手なもので、まだ海のものとも山のものともわからない赤ちゃんに、いろいろな期待をするものです。「うちの子には、将来、大谷翔平選手みたいなプロ野球選手になってほしいな」などと夢想しては、ニヤニヤして楽しむのです。
そういう親御さんの夢を打ち砕くようなお話になってしまうので申し訳ないのですが、生まれてくる子どもが何月生まれなのかによって、プロのスポーツ選手になれるかどうかはある程度は決まってしまうようです。
日本では、年度の切り替わりが4月。そのため、早生まれ(1月から3月生まれ)の赤ちゃんは、4月生まれの赤ちゃんに比べると、ほぼまる1年の差がついているわけです。
知能に関しても、体力に関しても差があるのもしかたがありません。早生まれは、生まれたときから不利なのです。
参考文献:Helsen, W., Sarkes, J. L., & Van Winckel, J. 2000 Effect of a change in selection year on success in male soccer players. American Journal of Human Biology, 12, 729-735.
■トップ選手の約4分の1は8月か9月生まれ
子どもの才能などとは関係なく、何月生まれかによってプロになれるかどうかがある程度決まってしまうということは、ベルギーにあるルーベン・カトリック大学のウェマー・ヘルセンによって確認されています。
かつて、ベルギーではサッカー選手の年齢を区分する期日は8月1日でした。そのため、トップ選手の約4分の1は8月か9月生まれだったのです。
ところが、ベルギーのサッカー協会が年齢の区分する基準日を1月1日に変更することにしました。
ヨーロッパでは、年齢を区切る基準日が1月1日だったからです。これは国際サッカー連盟(FIFA)が採用している基準でもあります。ベルギーでも他の国の標準に足並みを揃えようということになり、変更がなされたのです。
そこで、ヘルセンはこの前後でのセレクションの結果を調べてみました。
すると案の定、それまではずっと、セレクションで「才能あり」と判定されるのは8月生まれが多かったのに、基準日の変更後は、1月生まれが圧倒的に多くなっていることがわかりました。
日本でも大きな傾向は変わりありません。
Jリーグの選手を対象にした調査ですと、4月から6月生まれが多く、全体の約3割を占めます。そして最も少ないのが1月から3月生まれなのです。
サッカーだけではありません。他のスポーツ選手を調べても、早生まれ(1月から3月生まれ)の選手は相対的に少ないのです。
もちろん、子どもの才能もあるでしょうし、それ以上に本人の努力が大切なことは言うまでもありませんが、もし子どもが早生まれなのだとしたら、スポーツ選手になるために相当のいばらの道を歩むことになることは覚悟させましょう。たとえ同学年でも、ほぼ1年の差がつけられていたら、どうしても不利に決まっています。

●ポイント

早生まれの子どもは勉強もスポーツも不利

子どもの生まれ月を考慮してあげることが大切
■田舎で生活する意外なメリット
「うちの子は将来、野球選手にしよう」

「うちの子には、プロのサッカー選手になってもらいたい」
たいていの親は、子どもの将来を夢見ながら、あれこれと空想をして楽しんでいるのではないかと思います。
本当に子どもを将来、プロスポーツ選手にしたいのであれば、田舎に引っ越すのもいいアイデアです。さまざまなスポーツ選手を調べてみると、都会で生まれ育ったプロは少なく、人口の少ない田舎で育っていることを証明する研究もあります。
参考文献:Cote, J., MacDonald, D. J., Baker, J., & Abernethy, B. 2006 When “where” is more important than “when”: Birthplace and birthdate effects on the achievement of sporting expertise. Journal of Sports Sciences, 24, 1065-1073.
■大谷翔平も山本由伸の出身地は
カナダにあるクイーンズ大学のジャン・コートは、いくつかのスポーツのプロ選手の出身地と、生まれ育った町の人口を調べてみました。すると図表のようなデータが得られました。
アメリカのMLB(907人)の場合、生まれ育った町の人口が「5万人以下」が最も多く全体の37.7%を占め、「500万人以上」はわずか1.8%。人口が多くなるほど、逆に選手の数が減っていきました。
日本の選手で言えば、ドジャースの大谷翔平選手の出身地は岩手県奥州市で人口約10万5000人(旧水沢市は約5万5000人)で、山本由伸選手は岡山県備前市で同約3万人。
驚くべきことに、こうしたMLBの傾向がバスケットボールのNBA(436人)、アイスホッケーのNHL(151人)、ゴルフのPGA(197人)にもあったのです。
プロの選手は、人口が少ない、いわゆる「ド田舎」で育っている選手が多いことがわかります。もし子どもをスポーツ選手にしたいのなら、都会からド田舎へ家族で移住してもいいのではないでしょうか。
ちなみに、どうして田舎育ちの子どもほどプロになりやすいのかというと、理由は単純で、子どもがのびのびと走り回れる場所がいくらでもあるからです。
都会ですと、そもそも子どもが走り回れる場所がほとんどなく、道路には自動車が走っているので注意しないといけません。
田舎には、自由に走り回れる場所がふんだんにあり、しかも学校に通うにしても30分から1時間も歩かないといけない場所にあることも珍しくないので、普通に登下校をするだけで、足腰や、心肺機能を鍛えることができるのです。
小さな子どもがいる家庭は、田舎への移住も考えてみましょう。都会に比べると刺激が少ないかもしれませんが、子育てには理想的な環境だと思います。
●ポイント

子どもをプロスポーツ選手にしたいなら田舎に住む

都会になればなるほどプロスポーツ選手にするのは難しい

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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