子供の勉強に親はどのように関わればいいのか。心理学者の内藤誼人さんは「子供に対して自分の将来を保証してくれる、とても素晴らしい学問・科目の存在を伝えるべきだ」という――。

※本稿は、内藤誼人『すごい子育て 科学的に証明された子どもの伸ばし方』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■科学が証明…子供に「恩恵」を与える科目
子どもに算数(数学)を教えるときには、どのように問題を解くのかだけではなく、いかに算数が将来的に有用な学問であるのかもくり返し教えましょう。
「算数ができるヤツは、お金持ちになれるんだぞ」

「高校生になって数学ができるヤツは、モテるぞ」

「算数だけは手を抜いちゃダメだぞ、社会に出てから成功者になれるんだから」
親としては、こんな感じのこともしっかりと教えてあげたいものです。
事実、算数ができる人ほど社会に出てから成功します。
アメリカのテネシー州にあるヴァンダービルト大学のデビッド・ルビンスキは、「数学的早熟少年・少女研究」(SMPY)に参加した子どもを35年後に調査してみました。
すると、子どもの頃に数学の成績が良かった人ほど、35年後には仕事で成功していることがわかりました。数学ができる子ほど、組織での地位が高く、年収も高いという明確な傾向が確認されたのです。
したがって、親としては「算数」がいかに自分の将来を保証してくれる、とても素晴らしい学問なのかを、口が酸っぱくなるほど子どもに言い聞かせたほうがいいのです。これは絶対にやってください。
「方程式なんて覚えても意味ない」
にもかかわらず、たいていの親はまるで反対のことを子どもに言っています。
「算数なんて、社会に出てから使わないぞ」

参考文献

Lubinski, D. & Benhow, C. P. 2006 Study of mathematically precocious youth after 35 years. Perspectives on Psychological Science, 1, 316-345.

Eren, O., & Henderson, D. J. 2011 Are we wasting our children’s time by giving them more homework? Economics of Education Review, 30, 950-961.

Yeager, D. S., Henderson, M. D., Paunesku, D., Walton, G. M., D’Mello, S., Spitzer, B. J., & Duckworth, A. L. 2014 Boring but important: A self-transcendent purpose for learning fosters academic self-regulation. Journal of Personality and Social Psychology, 107, 559-580.

Brisson, B. M., Dicke, A.L., Gaspard, H., Hafner, I., Flunger, B., Nagengast, B., &Trautwein, U. 2017 Short intervention, sustained effects: Promoting students’ math competence belief, effort, and achievement. American Educational Research urnal, 54, 1048-1078.
■「方程式なんて覚えても意味ないぞ」は嘘
そんな風に親に言われた子どもは、算数を好きになるわけがありません。これでは子どもの将来を親がダメにしているようなものです。


子どもには、算数がいかに役に立つかを教えましょう。
アメリカにあるテキサス大学のデビッド・イーガーは、中学3年生に宿題をする将来的な理由について考えさせるようにすると(学歴があれば好きな仕事につける、結婚しやすいなど)、嫌いな科目にも真面目に取り組み、成績が上がることを確認しています。
ドイツにあるチュービンゲン大学のブリジット・ブリッソンも、数学が自分の人生にどのように役立つかを関連づけて考えるようにさせると、6週間後、5カ月後の2回の調査で、きちんと宿題をやるようになっていることが確認できたという報告をしています。
作家の曽野綾子さんが、「二次方程式など社会に出てから使わない」「私は、それでも生きてこられた」という話をどこかの本に書いておりました。
たしかに作家として生きていくのに数学は使わなかったのかもしれませんが、あまりに乱暴な意見だと思います。
すでに数多くの研究において、「数学は社会に出てから役に立つ」ということは明らかにされているのですから、子どもには算数好きになれるように促してあげるのが親としての務めではないでしょうか。
●ポイント

何で算数を学ぶのかを教えることが大切

将来、算数が役に立つことをきちんと教える
■算数の宿題だけは意味がある
学校の先生は、子どもがうんざりするほどたくさんの宿題を出します。
先生は、いろいろな科目の宿題を出すと思うのですが、子どもの負担を考えると、本当のところ宿題は算数だけでいいかもしれません。
アメリカにあるネバダ大学のオズカン・エレンは、1032の学校の2万54人の中学2年生について、宿題を終えるのにかかる時間を1週間調べてみました。
すると、数学で2.4時間、科学(理科)で1.7時間、英語(国語)で2.2時間、歴史で2.1時間という結果でした。子どもにとっては相当な負担です。
次にエレンは、宿題の量と試験の成績についての関連性を調べてみました。

その結果、宿題がたくさん出されるほど、数学に関しては試験の成績に直結していることがわかりました。つまり、数学に関しては宿題は大いに意味があることになります。
ところが、その他の科目、科学、英語、歴史については宿題の量と試験の成績にまったく関係がありませんでした。数学以外の科目の宿題は、子どもの時間を奪い、重い負担を強いるだけだったのです。
子どもの負担を考えると、算数のプリントはしっかりとやらせ、その他の宿題は「まぁ、先生に怒られない程度にほどほどに片づける」だけでもよさそうな気もします。もちろん、出された宿題は全部やったほうがいいことは言うまでもありません。
■10分でもいいので毎日計算問題を
子どもに勉強を教えるのなら、算数を中心に教えましょう。
特に計算問題が大事です。
数学の能力と、計算の早さには大きな関連性があります。数学のできる子は、計算がとても早いのです。計算が遅いのに、数学の成績が良いという人はあまりいません。
小学生のうちは、とにかく計算問題をたくさん解かせましょう。
計算が早いことは、中学校に上がってからも、高校生になってからも必要な能力です。
しかもありがたいことに、計算能力というものは、やればやるほど伸びます。
有名なところでは、百ます計算。百ます計算を小さなうちにしっかりとやらせましょう。計算が早くできるようになるほど、算数を嫌いになりません。あっという間に計算問題を解くことができると、子どもにとっての自信にもつながります。算数も好きな科目になります。やればやっただけ能力の向上を自分でも感じることができますので、面白いと思うようになるのです。
毎日、子どもには30分でも15分でもいいので、算数の、特に計算問題をたくさんやらせてみてください。
●ポイント

算数の宿題だけは成績を伸ばすのに意味があった。

小学生のうちは計算問題をたくさん解かせる

----------

内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。
有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

----------

(心理学者 内藤 誼人)
編集部おすすめ