※本稿は、米井嘉一『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)の一部を再編集したものです。
■人間には「老化のバランス」に良し悪し
日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が81.09歳です(2023年)。このうち、「病院通いはしているものの、認知症やがんもなく、寝たきりでもない、自立した生活を送れている」という条件で定義した「健康寿命」の平均の場合、平均寿命との間には女性が約12歳、男性が約9歳の差があります。アンチエイジングの観点からすると、この健康寿命をできるだけ長く延伸させることが最大の目的となるわけです。
しかし、人間は歳をとれば必ず老いてくるもの。体の至るところに機能的な衰えが見え始め、生活習慣病などの問題に頭を悩ませる時期が必ず訪れます。
日本は高齢化が進み、100歳以上の高齢者も増えていることから、「人生100年時代」などといわれていますが、その一方で40~50代の現役世代からは、「疲れやすい。気力が湧かない。腰が重い」といったなんとなくの不調を訴えるケースが年々増えているように思います。
実際に100歳超の人々(百寿者)を調査した大規模な研究が、アメリカや日本で行われており、糖尿病の発症率が70~80代で20%であるのに対し、百寿者ではわずか6%と圧倒的に少ない結果が出ています。このデータから考えられるのが、人間には「老化のバランス」に良し悪しがあるということです。
予防医学の観点からすると、実年齢というものはさほど意味を持たず、重要なのは体の機能が正常に保たれているのかという「機能年齢」にあるということです。
■病的な老化を示す4つのキーワード
体の機能というのは、生活習慣に深く影響を受けるもの。暴飲暴食や運動不足、睡眠不足といった不摂生は、一時的なものであれば問題ありません。しかし、これらが長年の習慣となって蓄積していけば、40~50代になって不調や病気、老化の兆候が出てくるのも仕方のないことです。
このような場合は、悪しき生活習慣の結果として、老化のバランスが悪い「病的な老化」が進行してしまっている状態といえるでしょう。
こうしてみると、実は老化も生活習慣病のひとつであると考えることができます。生活習慣病であるからには、老化も生活のあり方によって防げるものなのです。
では、病的な老化とは具体的にどういう状態をいうのでしょう?
それは4つのキーワードで示すことができます。「さびる」は酸化作用、「しぼむ」は内分泌機能の低下によるホルモンの減少で、「風化する」は気力の減退、そして最後の「黄ばむ(コゲる)」は、いわゆる糖化による糖とタンパク質が結びつくことで起こるAGEsの影響です。AGEsは基本的に黄褐色なので「コゲる」と表現することができます。
病的な老化というのは、体内でこれらの現象が起こっている状態を指します。
■遺伝子には「若者パターン」と「老化パターン」がある
老化には遺伝も影響しているといえますが、その影響の割合はわずか1割。
遺伝子の働きには、オンとオフの切り替えスイッチがあり、若者と高齢者では働きに違いがあります。いわば遺伝子の「若者パターン」と「老化パターン」の切り替えがあり、老化パターンが発動すると、さまざまな不調や機能的な衰えが表れるわけです。
たとえば、中年以降になると痛みやかゆみを感じやすくなるのは、痛みを感じるシステムに関する遺伝子が働きだすためであり、局所での炎症も遺伝子の働きで起こりやすくなります。また、歳をとるにつれ、ストレスへの耐性も遺伝子の働きの影響で弱くなってきます。若い頃はすぐに立ち直れたのに、高齢になるほどダメージが大きくなるのです。
遺伝子の老化パターンへのスイッチの切り替えは、生活習慣が乱れているほど早くなります。アンチエイジングの観点では、若いうちから生活習慣を整え、できるだけ遺伝子の老化パターンへの切り替えを遅くするというのが、重要なポイントとなります。
■体を老化させる5つの危険因子
体の機能が低下し、病的な老化を引き起こすのは、基本的には生活習慣の乱れ。特に食事・運動・睡眠の3本柱のうち、1本でもバランスが崩れると、老化のリスクが高まります。
ただし、誰もが皆同じようなルートを辿って衰えていくわけではありません。
人によってリスクとなる原因は異なるのです。そして、この生活習慣に起因する、老化における5つの危険因子というものがあります。
これらの危険因子が、それぞれの人の弱点となり、概ねその弱点から老化が進行することになります。予防する場合の優先順位もリスクが最も高い因子をカバーすることから始めます。
「酸化ストレス」は、活性酸素などの酸化ストレス作用によって体が「さびる」ストレス。そのダメージによって、さらなるストレスの連鎖を生みます。
「糖化ストレス」は、糖とタンパク質が結びついてAGEsを生み、体の各所で機能不全を起こします。
「心身ストレス」は、仕事や人間関係といった精神的なストレス。不安や緊張は体にとっては危機と判断され、コルチゾールをはじめとするストレスホルモンが分泌されて血糖や血圧が上がります。これらが常態化すると、高血糖や高血圧の状態に陥ります。
■免疫力はその他の危険因子とリンク
「免疫ストレス」は、感染症にかかりやすい、重症化しやすいといった免疫システムの能力のこと。
「生活習慣」は、食事や運動、睡眠の3本柱はもちろん、過剰な飲酒や喫煙、過密なスケジュールといった生活習慣全般の問題。喫煙は酸化ストレスを招き、飲酒は糖化ストレスを高めます。
これら5つの危険因子は、それぞれがリンクする関係にあり、連鎖反応的に問題が拡大してしまうこともあります。多くの場合、弱い部分から機能低下や衰えが表れ始め、病的な老化が進行していきます。自分の生活を見直し、もしいずれかの因子に当てはまるようであれば、そこから優先的に改善に取り組んでいくのが効果的です。
たとえば、食事に問題があって、糖質や脂質が明らかに多く、タンパク質が少ないというのがわかっていれば、3つの栄養素の摂取バランスの割合を整えることから取り組めばよいですし、食事は適正なのに状態がよくならない場合は、もしかしたら運動が不足している可能性があります。
そういう場合は、散歩やストレッチの時間をとるなどの対策をするのもよいでしょう。また、睡眠時間を確保する、禁煙をするといった、自分なりに問題点をあぶり出して危険因子をつぶしていくことが、病的な老化を防ぐことにつながります。
■一番ダメなのは「安静」にすること
生活習慣を改善し、病的な老化を防ぐにあたり、最もやってはいけない行動があります。それは「安静」にすることです。
疲れるのは嫌だし面倒だから動かない、ちょっとした外出も億劫、人と会うのが嫌、ひざの調子が悪いから歩きたくない、さまざまな理由をつけて、じっと安静にしてしまうのは一番よくありません。
人間は、使うからこそ「必要な能力」「必要な機能」と判断され、筋肉や骨はもちろん、体の生体機能も含め、新陳代謝を繰り返しながら、体の状態を維持しています。ところが、安静にしてしまうと、体を使う機会がないために不要と判断され、どんどん退化して衰えてしまいます。
脳も例外ではありません。活動することによる神経刺激が減少すれば、神経細胞も減ってしまい、心身ともに病的な老化へと加速してしまうことになるのです。
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米井 嘉一(よねい・よしかず)
同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授
1958年東京生まれ。武蔵高等学校卒業、慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。1989年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。2008年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長、(公財)医食同源生薬研究財団代表理事。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。
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(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授 米井 嘉一)

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