※本稿は、井手隊長『ラーメンビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■“カフェのような空間”を作り出した一風堂
長いラーメンの歴史において、「豚骨ラーメン」の台頭は避けて通れないテーマである。そして、その全国的な普及とグローバル展開を語るうえで欠かせない存在が、「博多一風堂」と「一蘭」、この二つの博多発祥のラーメンチェーンである。
いずれも単なるラーメン店の枠を超え、ラーメン業界全体に新たな価値観とスタンダードをもたらした。ここでは、両者がどのようにして「豚骨ラーメン最強時代」を築いたのか、その歩みと功績をあらためて見ていきたい。
まず、「博多一風堂」が登場したのは1985年。当時、博多のラーメンといえば、豚骨特有の匂いや、雑多な屋台文化の延長線上にある「男臭い」ラーメンのイメージが根強かった。
「一風堂」はこうした既成概念を打ち破るべく、あえて豚骨臭を抑え、旨味を凝縮したクリーミーで上品なスープを開発。あくまで本格派ながら、誰もが受け入れやすい味に昇華した。
スープの乳化具合やタレのバランス、食感のいい極細麺といった要素もさることながら、特筆すべきはその“場づくり”である。
木製の看板、手染めののれん、木目調の内装、店内に流れるジャズのBGM。
それまでラーメン店が主に中高年男性の居場所であったのに対し、「一風堂」は若年層や女性客の取り込みに成功。豚骨ラーメンを誰もが日常的に楽しめる食文化へと再定義した功績は大きい。
■豚骨ラーメンを世界に知らしめた火付け役
さらに注目すべきはその海外展開である。2008年、「一風堂」は満を持してニューヨークに出店。異国の地で本格豚骨ラーメンを根づかせるという挑戦は、当時としては前例の少ない取り組みだった。
しかし「一風堂」は現地の嗜好に寄り添いつつ、日本のラーメン文化を海外に広げ、大きな話題と支持を集めた。
この成功によって、日本の他のラーメン店にとっても海外進出が一つの大きな選択肢となり、「ラーメン=国民食」から「ラーメン=グローバル食」へと認識が変化していった。豚骨ラーメンを世界に知らしめた火付け役としての役割は、計り知れない。
一方で、「一蘭」はそのアプローチにおいて、「一風堂」とは異なる独自性を築いたチェーンである。最大の特徴は、徹底した“味集中”のコンセプトだ。
個々の席が仕切られ、スタッフとの接触も最小限に抑えられる「味集中カウンター」によって、来店客は目の前の一杯にだけ集中することができる。
■一蘭が打ち立てた「没入型ラーメン体験」
視覚情報や他者の存在を極限まで排除したこの仕組みは、まさに「没入型ラーメン体験」とでも呼ぶべき革新であり、一人でも気兼ねなくラーメンを楽しめる環境は、国内外で多くの支持を集めている。コロナ禍で3密を避けたソーシャルディスタンスが叫ばれた時には、「一蘭」の味集中カウンターが再注目された。
「一蘭」もまた豚骨の臭みを抑えたスープ設計を採用しており、濃厚でありながら口あたりは軽やか。初めて豚骨ラーメンを食べる客層にも抵抗感が少なく、広範な需要に応える形となっている。
特筆すべきは、注文時に細かく好みを指定できる「味のオーダーシステム」だ。麺のかたさ、タレの濃さ、ニンニクの量など、細部にわたって個人の嗜好に合わせてカスタマイズできるこの仕組みも大変好評だ。
■総合的な価値で「また来たい」と思わせる
「一風堂」と「一蘭」。この二つのブランドには共通点も多い。まず、どちらも豚骨ラーメンにおいて「臭みの除去」を徹底した点である。豚骨特有の熟成臭は、一定のマニア層には歓迎される一方で、苦手とする人も少なくない。
全国展開や海外進出を視野に入れた時、より多くの人に受け入れられる味の構築が求められる。その課題を、両社は独自の製法で乗り越えた。
また、両者に共通するのは店舗体験の重視である。味だけではなく、空間、接客、サービスの仕組みといった総合的な価値によって「また来たい」と思わせる。
その意味で、彼らが提案したのはラーメンそのものだけではなく、「ラーメンの楽しみ方」であったとも言えるだろう。
こうして見ていくと、「一風堂」と「一蘭」が登場したことは、単に一ジャンルとしての豚骨ラーメンを広めたという枠にとどまらず、日本のラーメン文化全体の進化に大きな影響を及ぼしていることが分かる。
豚骨ラーメンはかつての博多のローカルフードから、今や日本全国、そして世界中で親しまれるグローバル食となった。その変革の最前線に立っていたのが、この二つの博多ブランドだったのだ。
クサウマのローカル食を、誰が食べても美味しい一杯に再構成したことで、豚骨ラーメンは新たな時代を迎えた。そして今もなお、多くのラーメン店がこの二つのブランドの影響下にあることを考えると、豚骨ラーメンの時代はまだまだこれからなのかもしれない。
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井手隊長(いでたいちょう)
ラーメンライター、ミュージシャン
全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター、株式会社フライヤー執行役員、flier公式チャンネル総合プロデューサー。「東洋経済オンライン」「プレジデントオンライン」「AERA DIGITAL」等の連載のほか、メディア出演、ラーメンの商品監修など多方面で活躍中。ラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」「サクサクヒムヒム ☆推しの降る夜」など多数。
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(ラーメンライター、ミュージシャン 井手隊長)

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