老化を防ぐために、避けたほうがいい食べ物は何か。同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターの米井嘉一さんは「脂質を摂りすぎると、有害なアルデヒドという物質が生成され、老化を促進する糖化反応を連鎖的に起こす。
とくに避けるべきデザートがある」という――。
※本稿は、米井嘉一『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)の一部を再編集したものです。
■最高に美味しい組み合わせ「糖と脂」の甘い罠
ある広告の宣伝文句にあるように、糖と脂の組み合わせは、とても美味しいものです。糖は基本的に甘味の成分ですし、脂は脳内の報酬系に作用して依存症になるリスクがあるほど。だから、つい食べすぎてしまいます。
美味しいものを食べたとしても、運動して消費できれば問題ないですし、AGEsを含む食べ物も基本的には香りや旨みを引き立て、幸せな気持ちになるので、食べても構いません。ただし、繰り返しになりますが、食べすぎることがよくないのです。
糖化ストレスを防ぐために、これまでは糖質の制限だけが注目されてきましたが、脂質の摂りすぎも問題です。
糖化は、基本的に糖質とタンパク質の結合によって起こる化学変化なので、脂質は無関係に思えます。ところが、最近の研究で、脂質の過剰摂取の影響でも糖化が起こることがわかっています。
それはなぜなのでしょう? この脂質と糖化の関連性を紐解くにあたり、ついに「黒幕」の正体を明かすときが来ました。
脂質を摂りすぎると、血液中に中性脂肪、コレステロールなどの脂質異常症の原因となる脂肪がたくさん増えます。
すると、脂肪が代謝される過程で脂肪酸に分解され、その脂肪酸が酸化すると、有害なアルデヒドという物質が生成されます。
このアルデヒドこそが、すべての元凶といっても過言ではありません。脂肪酸由来のアルデヒドが、体内のあらゆる場所を攻撃し、そのダメージを受けた箇所から、糖化反応が連鎖的に起こってしまうのです。
■体のどこへでも入り込んで悪さをする黒幕
極端な話をすると、糖や脂を過剰摂取してAGEsが血液中でつくられたとしても、AGEsは終末糖化産物なので、それ以上反応を起こすことはなく、そのまま排泄されたり、免疫細胞に貪食されたりして終わりです。
しかし、現実にはAGEsは、体の至るところで生成され、遺伝子まで変性させてしまう傍若無人な悪さを発揮しています。
体内で生成されるAGEsは問題の原因になりますが、実はAGEs単体ではそれほどの凄まじい悪の能力を持つことはできないのです。
では、なにがAGEsを強大な悪にたらしめるのでしょうか?
それが、物質「アルデヒド」です。
アルデヒドとは、炭素原子(C)と水素原子(H)、酸素原子(O)の組み合わせであるアルデヒド基(CHO)を持つ物質のこと。アルデヒドはさまざまな物質と化学変化を起こしやすく、多くの種類が存在します。
たとえば、飲酒した場合に、アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程で生成されるのが有害なアセトアルデヒドです。アセトアルデヒドは、その後アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無害化されます。
また、新築の家などで起こるアレルギー反応「シックハウス症候群」の原因となるのは、人体にとって有毒な化学物質であるホルムアルデヒドです。
このほかにも脂肪酸由来のメチルグリオキサールなど、さまざまなアルデヒドが存在します。
アルデヒドは、体内のさまざまな物質と反応しやすい性質を持ち、しかも血管から細胞膜、核の内部までどこまでも入り込んでいく能力を持ちます。そのため、体のあらゆる場所に侵入し、攻撃を仕掛け、ダメージを与えることができるのです。
■アルデヒドの攻撃で糖化がうながされる
有害なアルデヒドが、ところかまわず攻撃を仕掛けることで、細胞がダメージを受けますが、糖化もアルデヒドの攻撃をきっかけに起こる現象といえます。
代表的な糖の一種であるグルコース(ブドウ糖)の分子は、リングのような環状の立体的な構造をしています。このうち0.002%はリングが壊れた開環型のグルコースのエラーが生じますが、環状構造が壊れると、内部のアルデヒド基が露出してしまいます。これが、周囲を攻撃し、糖化のリスクを高めます。
糖の過剰摂取により、高血糖状態になると、開環型のグルコースの量も相対的に増えるので、アルデヒドの量も増えます。これにより、アルデヒドはさらにグルコースと結びついたり、アルブミンなどの血液中のタンパク質(血清タンパク質)を攻撃したり、細胞表面にある「糖鎖」という、糖とタンパク質や脂肪をつなぐ鎖と反応したりし、さまざまなアルデヒドを連鎖反応的に増やしていきます。
このような一連の反応によってアルデヒドが過剰になると、アルデヒドがアミノ酸(タンパク質を構成する最小単位の有機化合物)の間に入り込むようになります。
それらが通常のタンパク質とは異なる変性タンパク質になるのですが、それこそがAGEsの正体。糖とタンパク質が結びつくことで起こる糖化ですが、実はアルデヒドによって誘発される反応だったのです。

しかも、アルデヒドは、前述したように毛細血管から細胞膜の内側まで侵入することができ、細胞内の核の内部にまで入り込みます。侵入した先で次々に反応を起こしながら、糖や糖鎖と結びついて糖化を誘発するのです。
DNAまで糖化させ、AGEsを生成し、病的なエピゲノム変化を起こさせるのは、このとんでもない黒幕であるアルデヒドの仕業といえます。
これまで、体内で糖化が起こり、AGEsが生成されることの問題点を指摘してきましたが、実は体内の糖化反応の背景には、アルデヒドの増加が影響しており、糖と脂の過剰摂取による病的な老化を引き起こす主犯こそ、アルデヒドだったのです。
■デザート系ならフルーツよりもこれを避ける
グルコースの環状構造が壊れ、開環型の鎖状グルコースのエラーが発生する割合は0.002%ですが、実はフルーツなどに含まれるフルクトース(果糖)の開環型の発生割合は0.6%と、グルコースの約300倍にもなります。このことから、フルクトースはグルコースよりもアルデヒドが増えやすく、いろいろな問題を起こしやすいことが考えられます。
しかし、だからといってフルーツを避けることはありません。フルーツには、フルクトース以外に、グルコースもスクロース(ショ糖)も3分の1ずつ入っていますし、食物繊維や抗酸化作用のあるビタミンCなども含まれているからです。
ちなみに、クエン酸などの酸味は口腔内の甘味受容体の感度を上げ、糖の量が少なくても甘味を感じやすくなるため、柑橘系の糖類がフルーツのなかでも特に少なくなっています。
デザート系ならフルーツよりも、ケーキや甘いジュース、アイスクリームといった均一な甘味を持つ食品のほうが大量の糖類を使用しているため、そちらを避けるべきだと思います。

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米井 嘉一(よねい・よしかず)

同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授

1958年東京生まれ。武蔵高等学校卒業、慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。
1989年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。2008年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長、(公財)医食同源生薬研究財団代表理事。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。主な著書に『アンチエイジングは習慣が9割』(三笠書房)、『若返りホルモン』(集英社)など多数。

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(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授 米井 嘉一)
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