毎日の食事でどんな栄養素を摂るといいか。同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターの米井嘉一さんは「タンパク質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)の3大栄養素の摂取バランスは、『2:2:6』が推奨されている。
炭水化物6割は1200kcalで、そのうち100kcalカロリーは、食物繊維として摂取するよう心がけるといい。特に利用効率が高い食物繊維を含む食材がある」という――。
※本稿は、米井嘉一『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)の一部を再編集したものです。
■ドベネックの桶で考える「不足している栄養素」
「ドベネックの桶」とは、植物の成長を桶のなかの水にたとえたもの。桶の1枚ごとの板は摂取した必須栄養素の量、桶のなかの水が植物の成長度を表しています。多く摂った栄養素の板の高さは高くなる一方、不足した栄養素は低くなります。
この場合、水は低い板の場所から漏れ出すことになるので、植物の成長は、必須栄養素のうち最小のものに依存するということを表しています。
このことは、人間にも当てはまります。栄養素のいずれかを十分に摂ったとしても、不足なくバランスが保たれていなければ、健康が損なわれてしまうのです。
現在の生活ではタンパク質やビタミン、ミネラルがどうしても不足がちですが、そういう場合はサプリメントで補ってもよいと思います。不足して健康が崩れてしまうよりは、バランスを優先させたほうが効率的です。
■1日1回食事法はAGEsが溜まりやすい
1日に夕食を1回摂るだけという食事回数を減らしたダイエット法がメディアなどで話題になることがあります。

たしかに摂取カロリーが大幅に減少するため、ダイエット効果はあると思います。しかし、糖化から体を守るという観点では、この食事法はかなりリスクが高くなります。
長時間の空腹状態によって、消化器系は乾いた砂漠のような状態になります。そこへ大量の水をやると、あっという間に吸収されると思いますが、これは食事の消化吸収にもいえること。飢餓状態からようやく入ってきた栄養素は、瞬く間に吸収され、血糖値が急上昇して「血糖スパイク」を起こします。
さらに、血糖スパイクは「アルデヒドスパーク」を誘発し、アルデヒドが暴走して糖化反応が連鎖的に起こり、老化物質AGEs(糖化最終生成物)がたくさん生成されることになります。これを日常的に続けていくと、食事のたびにAGEsが溜まっていくため、病的な老化を進めることになってしまうのです。
一気飲みや早食いも同様で、急激に大量の食品や飲み物を体内に入れると、血糖スパイク&アルデヒドスパークを起こしやすくなります。糖化を進めることになりますし、カロリー吸収も必要以上に上がって肥満なども招きます。
基本的に食事はゆっくり摂ったほうが、血糖値が急上昇することはないので、アルデヒドの暴走も抑えられ、糖化ストレス対策としては有効です。
■大量のカプサイシンは幼児の脳腸相関を破壊
とうがらしなどの辛いものに含まれる成分がカプサイシンです。このカプサイシンを幼児に大量に与えると神経細胞の発達によくない影響があることがわかっています。

食事には「甘味・うま味・酸味・苦味・塩味」という5つの味覚があります。しかし、このカプサイシンの「辛味」というのは、味覚ではなく、痛みのセンサーである痛覚が反応するものなのです。
つまり、カプサイシンが痛みの受容体を刺激して「痛い」と感じるだけ。そして、カプサイシンを大量に投与すると、痛みの受容体が壊れてしまい、一緒に神経も破壊されてしまいます。
脳と腸は、血液や迷走神経を通じて情報を伝え合う「脳腸相関」というシステムが働いていますが、幼児にカプサイシンを大量に与えると、迷走神経が壊れ、腸からの情報が十分に伝えられなくなります。すると、脳神経の発達が遅れるなどの影響が出てきます。
その影響により、脳神経を守るグリア細胞が減少してしまうのですが、それが認知症の原因となる変性タンパク質の除去機能を低下させるなど、将来的に糖化によって進行する症状を助長してしまうことになります。
■PFCバランスを「2:2:6」にする
食事の栄養バランスを整える場合、基本となるのが、タンパク質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)の3大栄養素の摂取バランスです。
このPFCの1日における摂取カロリーの割合を、タンパク質2割、脂質2割、炭水化物6割に調整することを目指します。
忙しい生活を送っていると、コンビニ食や外食で短時間に済ませるような食生活になってしまいがちで、そうすると炭水化物が7~8割になったり、脂質が3~4割になったり、糖質と脂質が多く、タンパク質が少ない傾向に陥りがちです。
このような食生活だと、アルデヒドが暴走し、AGEsを増やすことにつながってしまいます。
そのため、まずは脂質、そして炭水化物のなかでも糖質とアルコールを減らし、タンパク質をたくさん摂ることを意識しましょう。

アルデヒドはアミノ酸と結合しやすい性質を持っているので、タンパク質をたくさん摂っていると、アルデヒドの暴走を抑え、糖化しにくい状態を保つことができます。著者が考えるタンパク質の推奨摂取量は1日に男性75g、女性70gです。
しかし、牛肉100g中に含まれるタンパク質は10~20%で、推奨量を摂るためには700gも食べないといけない場合もあります。ですから、お肉以外にも卵や納豆、乳製品などを積極的に食べて、いろいろな食品から摂れるように意識することが大事。
間食する場合はスナック菓子などではなく、タンパク質が豊富なさきいかやナッツ類に切り替えるだけでもだいぶ違います。このような目安はありますが、現状よりできればよいと気楽に考えましょう。
また、主食による炭水化物の摂り方も、ごはん食とパン食のどちらかを選ぶなら、タンパク質を含み腸内細菌との相性もよいごはん食を選ぶことをおすすめします。
■炭水化物のカロリー計算法
「糖質オフ」といった表示があるお酒は、まったくカロリーがないように思えますが、実際にはアルコールそのものにもカロリーが含まれており、アルコール1gにつき約7kcal、普通のビール(アルコール5%含有、普通缶350ml)の場合は約140kcalも含まれています。つまりビール1缶のカロリーは、ごはん1膳分に相当するのです。
アルコールでもっと厄介なのは、血糖値への影響です。アルコールは、数時間かけて肝臓で代謝されてアセトアルデヒドや酢酸になります。これらが最終的に分解されてエネルギーを生み、糖質(グリコーゲン)として蓄積されたり、グルコースとして活用されたりします。
つまり、飲酒によって血糖値が上がるのは次の日になるのです。
また、炭水化物のなかには、大切な食物繊維が含まれています。食物繊維の推奨摂取量は1日あたり約20gですが、大人で10g、子どもで15g不足しているといわれています。
食物繊維は腸内細菌の善玉菌による発酵によって酢酸や酪酸、アミノ酸が合成されますが、特に「干しいも」に含まれる食物繊維は利用効率が高く、熱量は1gあたり約3.6kcalです。このほか野菜、フルーツ、いも類、豆類、海藻類、全粒穀物(玄米、加工玄米、全粒小麦)には良質な食物繊維が含まれており、かつ良質な糖質が含まれています。
朝、昼、晩の食事で、毎回7gの食物繊維の摂取を目指すと、満腹感を得やすく、健康増進や糖尿病、肥満の予防には最適です。肥満、メタボ、高血糖、脂質異常症の食事療法としてもおすすめです。
PFCバランスとして推奨される炭水化物6割というのは糖質、アルコール、食物繊維の合計です。1日の摂取カロリーを2000kcalとすると、6割は1200kcal。そのうち100kcalカロリーは、食物繊維(約20g)として摂取するよう心がけましょう。

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米井 嘉一(よねい・よしかず)

同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授

1958年東京生まれ。武蔵高等学校卒業、慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。
1989年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。2008年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長、(公財)医食同源生薬研究財団代表理事。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。主な著書に『アンチエイジングは習慣が9割』(三笠書房)、『若返りホルモン』(集英社)など多数。

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(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター、同志社大学大学院生命医科学研究科教授 米井 嘉一 イラストレーション=平松 慶)
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