※本稿は、鈴木裕介『頭の中のひとりごとを消す方法』(池田書店)の一部を再編集したものです。
■完璧主義の人ほど反すうしやすい
では、なぜ反すうが生じるのでしょうか。
反すうが生じるメカニズムについて、心理的な背景から見ていきましょう。
まず、反すうしやすい人の心理的な特徴として次の3つが挙げられます。
心理的な特徴
1/自分の内面ばかりを考える
2/他者の視点を取り入れにくい
3/完璧主義
まず、反すうしやすい人の心理的な特徴として、「自分の内面ばかり考え、他者の視点を取り入れにくい人」があります。興味・関心が自分のほうに向きやすいといえますが、思考が内向きになりやすい人は、自己没入的になって反すうしやすくなります。
ただし、これは生まれつきの傾向もあります。
また、完璧主義の思考スタイルを持っている人は、失敗を許容できず、何度も自責の念にとらわれます。
完璧主義の思考では、「できたこと」よりも「できなかったこと」に注意が向きやすくなります。そのため、失敗やトラブルがあると、自己否定的な思考になりやすく、反すうが生じやすいのです(※1)。
※1 Flett, G. L., Nepon, T., & Hewitt, P. L. (2016). Perfectionism, worry, and rumination in health and mental health: A review and a conceptual framework for a cognitive theory of perfectionism. In F. M. Sirois & D. S. Molnar (Eds.), Perfectionism, health, and well-being (pp. 121-155).Springer International Publishing/Springer Nature.
■すべての感覚は注目するほど増幅する
反すうにつながる生理的な背景についても見ていきましょう。
まず、思考や感情と身体の感覚は密接に結びついています。
たとえば、人間の心拍数は、1分間に60~100回くらいです。
心拍数が60/分の人と心拍数120/分の人であれば、明らかに後者のほうが不安になりやすかったり、イライラしやすかったりします。
痛みも同様です。頭痛や腰痛があると、メンタル状態が影響を受けやすく、メンタル面のストレスを感じていればいるほど、身体の痛みを強く訴える傾向にあります。
くわえて、「すべての感覚は、注目すればするほど増幅する」という原則があります。
痛みに注目すればもっと痛くなるし、不安に注目すればするほど、ますます不安になる、ということです。
とすれば、自分の注意を向ける方向をある程度コントロールする練習が必要になってくるわけです。
■ぼんやりしているときほど、反すうしやすい
反すうが生じる背景には、脳のしくみも関係しています。
慢性的なストレス状態になると、危機感知センサーである脳の扁桃体が過剰に活動し、人間らしい合理性を司る前頭前野の機能が低下します(図表1)。
すると、「やばいぞ!」「大丈夫か!?」というネガティブな感情が増幅され、「どうすればよくなりそうか」という考えを整理しにくくなるのです。
・動物的な危機感知センサー〈扁桃体〉
・人間的で合理的な司令官〈前頭前野〉
この拮抗関係は、反すう対策のカギの1つですので押さえておいてください。
■反すうは「デフォルト時」に起こる
さらに脳には、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)というネットワークがあります。
これは、ぼんやりしているときや何もしていないときに活発になるネットワークです。
過去の記憶を思い返したり、未来のことを考えたり、自分の気持ちを振り返るときにはたらきます。
デフォルト・モード・ネットワークが過剰にはたらいたときに、反すうが生じるといわれています(※2)。
反すうが生じると、ネガティブな記憶や、それに関する感覚・感情ばかりが引っ張り出されてきます。つまり、デフォルト・モードに入っているときは、ふだんの自分とはまったく違う記憶のシステムネットワークがはたらいていて、“まるで別人のように”なっているのです。
脳内の記憶ネットワークに「番地」のようなものがあるとしたら、ふだんの家でリラックスしている自分は「1番地」にあるけど、反すうモードのときは「2番地」、仕事モードのときは「3番地」、趣味で楽しんでいるときは「4番地」というような感じです。
反すうモードに入っているとき、ほかの「番地」にあるポジティブな記憶にアクセスすることはできません。
だから、反すうモードのままでいると、自分が最悪な存在で、何もできなくて、何も達成しておらず、いい思い出もまったくないように感じられ、絶望感や無力感が永遠に続くかのように感じられるのです。
しかし、それはあくまで「モード」であり、「波のようなもの」です。
ある程度の時間が経過したら、基本的には収まってきます。
何らかの気晴らしや、イメージワークやボディワークを行うなど、反すうモードを変えるための試みがうまくいけば、抜け出すことは十分にできます。
■反すうはナメてはいけない「強敵」
反すうモードにあるとき、事態を好転させるような現実的な思考はできません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
まずは、
反すうはまったく役に立たないものである
という認識を強く持つことが必要です。
反すうから抜け出せない理由として、「あれこれ考え続けることがよいことである」「なんとなく、ずっとそのことについて真摯に考え続けているような気になる」という誤った認知があります。前述の認知的不協和のメカニズムによるものです。
※2 Hamilton, J. P., Farmer, M., Fogelman, P., & Gotlib, I. H. (2015).Depressive rumination, the default-mode network, and the dark matter of clinical neuroscience. Biological Psychiatry, 78(4), 224-230.
■強い感情には一種の快楽が伴う
反すうから抜け出せなくなるもう1つの理由として、
反すうによって味わう強い感情が、反すうから抜け出すのを難しくさせるということが挙げられます。
強い感情を体験することには、それがうれしいことや楽しいことだけでなく、怒りや悲しみなどであっても、一種の快楽が伴います。
そのため、「自分の怒りや悲しみに浸ることから抜け出せなくなる」という現象が起こります。これは、決してめずらしいことではありません。
反すうモードのなかで、「自分はこんなに苦しんでいる」「こんなに大変な経験をしている」という物語を繰り返し味わうと、ある種の陶酔が生じ、心理的な満足感につながることがあるのです。
そうした満足感を得られることで、自分を卑下したり、悲観的に考えたりすることが強化されると、現実的な問題解決よりも、反すう思考に浸ることが目的化してしまうことがあります。
結果、「自分は何もできない」という無力感がさらに強くなり、自己否定感にさいなまれてしまうという事態につながるのです。
■つぼみのうちにつむ
こうした自己否定の感情は、連鎖的に積み重なります。たいていの場合は、自己否定の感情が積み重なりながらも、ほどよくそれらを遠ざけて回復し、日常生活を送ることができます。
しかし、その自己否定の感情が極限までつのってしまったとき、人は「こんな自分はもはや死ぬべきだ」という結論に至ることがあります。まさしく「反すうは人を殺すもの」であり、恐るべき対象であるということを強調しておきたいと思います。
反すうは、決してナメてはいけない強敵です。その負の影響を十分に理解したうえで、正しくおそれ、反すうから離れるためのスキルを身につけましょう。
そのために、相当の努力を傾けてしかるべきものという認識を持ってください。反すうは、放っておくと雪だるま式にふくれ上がって手がつけられなくなります。
自分の頭の中でぐるぐるとめぐる思考や感情が反すうだと気づいたら、すぐに対策に取りかかりましょう。
「反すうはつぼみのうちにつんでおくことが大切」です。
■首をゆっくり動かす「山本エクササイズ」
まずは何よりも「反すうから離れた状態」を実感してもらうことが大事なので、いつでもどこででもできて、気持ちが軽くなることが実感できる山本エクササイズというボディワークを紹介します。
これは私が尊敬する心理臨床家の山本貢司先生から教えていただいた方法で、「山本スペシャル」とか「山本エクササイズ」と私が勝手によんでいるものです(山本先生からの許諾はいただいています)。
基本的には、“とにかく、ゆっくりと首を左右に傾ける”のみです。
速い動きは交感神経系を活発にし、ゆっくりとした動きは呼吸・心拍・筋活動の低下を通して副交感神経を優位にします。
さらに「首まわりの筋肉をゆっくりと動かすこと」は副交感神経のうち、安心感を司る迷走神経のはたらきを活性化させます。
この「ゆっくりとした動きに集中すること」によって、思考にいきがちな注意を切り替え、自律神経系を調整することで身体の状態をリラックスモードに変えるのです。
職場のデスクでも、電車の中でも、どこででも手軽にできるので、心がしんどくなるほどの反すうに気づいたら、ぜひやってみてください。
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鈴木 裕介(すずき・ゆうすけ)
内科医・心療内科医・産業医
2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2015年よりハイズ株式会社に参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年、「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原内科saveクリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。著書に『我慢して生きるほど人生は長くない』(アスコム)などがある。
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(内科医・心療内科医・産業医 鈴木 裕介)

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