仕事のモチベーションが湧かない時はどうすればいいか。精神科医の久賀谷亮さんは「ベストな対処法は体を動かすこと。
心拍数を上げることで、やる気を高める脳内物質が分泌される」という――。
※本稿は、久賀谷亮『最高の脳リカバリー法 からっぽ瞑想』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
■脳内に「やる気成分」を生む方法
仕事に行く前と、仕事後――パフォーマンスアップのためには、どちらのタイミングでジムに行くほうがいいと思いますか? 答えは、仕事に行く前。
なぜなら、やる気は行動の先に出てくるものではないからです。つまり、「行動が先、やる気は後からついてくる」ものなのです。気持ちがどうにも乗らないときのベストな対処法は、「まずは体を動かす」のが正解。
私は「最近、仕事のモチベーションがまったく上がらない……」というご相談を受けたときは、瞑想にプラスして、運動をおすすめしています。
まずは瞑想で脳疲労をクリアにする。そのうえで、心拍数が上がるくらいのやや負荷のある筋トレ――例えばスクワットなどをやると、体内で「エンドカンナビノイド」という、私たちのやる気を高める物質が分泌されます。
■脳内にマリファナ類似物質を出す
エンドカンナビノイドは、運動をすることで体の中で自然につくられる脳内マリファナ類似物質(神経伝達物質)。大麻の「カンナビノイド」と似た性質を持つ高揚感をもたらす物質であることが分かっています。
いわゆる「ランナーズハイ」をもたらすエンドルフィンに似た作用を持ち、気分を高めてやる気を引き出してくれるのです。

エンドカンナビノイドを出すために、長い時間運動をする必要はありません。心拍数が若干上がれば十分なので、ほんの数分間とごく短時間でOKです。
仕事をする前に軽くスクワットをしたり、階段を上ったり――「やる気が出ないな」と悩む前に、まずは軽く体を動かす。動けばやる気を高める脳内物質が出てくるので、気持ちが自然に切り替わってきます。
■集中するときに働く脳の回路2つ
「仕事をしていても、気が付けばぼんやりと違うことを考えてしまう」――そんな集中力の低下に悩む現代人は多いようです。
ぼんやりと考え事をしていたり、注意が定まらずあちこちに向いてしまっているときは、「心がさまよっている」状態をつくる脳の回路、デフォルトモードネットワークが活性化しているときです。
このデフォルトモードネットワークを沈静化させるのが、からっぽ瞑想です。
からっぽ瞑想で「心がさまよう状態」を落ち着かせたうえで、「脳が何かに集中するときに働く回路」を鍛えるためのトレーニングをプラスすれば、集中力を高めることが可能です。
何かに集中するときに「働く回路」は、次の2つ。
1 タスク実行系の「セントラルエグゼクティブネットワーク」

目の前の課題に「どうとり組むか」を決定し、手順を組み立てる回路
2 注意制御系の「前頭頭頂注意ネットワーク」

雑音を遮断して、対象だけに注意を向け続けるための回路

セントラルエグゼクティブネットワークは、人間らしい、高次な活動を支える脳の回路です。
一方、前頭頭頂注意ネットワークは注意コントロールの要。雑音がある場所で読書に没頭できるのは、このネットワークが働いてくれるおかげです。

■ろうそくを見つめる「ゆらぎ瞑想」
この2つの回路をトレーニングするのに効果的なのが、ろうそくを見つめる「ゆらぎ瞑想」。ろうそくのゆらめく炎を一定時間、静かに見続けることに集中する瞑想方法です。
とてもシンプルな方法ですが、「小さな変化のある対象」に意識を向け続けることで、先の2つの回路を活性化させ、集中力を養うことができます。
この応用としては、「雨音に耳を澄ませる」、「雲の流れを見続ける」なども有効。「微妙に変化するもの」を対象として見つめ続けるのがポイントです。
■歩くときにアイデアが浮かびやすいワケ
机に向かって必死に考えているときよりも、散歩中にふと、アイデアがひらめく――そんな経験をしたことがある人は多いと思います。
この理由の1つは、生理的なところにあります。軽い運動をすることで脳血流が高まり、酸素と栄養の供給が増えたことで脳の働きが高まることが、まず1つ。
加えて、歩くことで脳の神経細胞や血管の形成を促す「BDNF(脳由来神経栄養因子)」というたんぱく質の分泌が活性化することも、数々の研究で明らかにされています。
つまり、私たちの脳は、歩くだけでよりよく働いてくれるようにできているというわけです。
■自然の中を歩くと健康になる
さらにクリエイティビティを高めるためには、歩くことに加えて「自然」という要素を組み合わせることを、私は推奨しています。つまり、自然の中での「歩く瞑想」です。

カンザス大学(アメリカ)の研究では、4日間、自然環境に身を置いた後に創造性をはかるテストを実施したところ、テストのスコアが50%も向上することが確認されています。
また、森林浴研究の第一人者である宮崎良文教授(千葉大学)の研究では、森林浴をすることでストレス軽減や血圧安定など、心身全体の健全性が増すことも分かりました。
ここでは、歩くことで脳のパフォーマンスを高めたうえで、自然環境の力を借りて創造力を引き出す。そんなダブルの効果を狙っていきましょう。
■心の中で「右、左」とつぶやく
歩く瞑想の具体的なやり方は、次の通りです。
できる限りゆっくりと歩きながら、脚の筋肉や関節の複雑な動き、足が地面をついて、離れる感覚などに注意を向けます。
歩行以外のことに意識がさまよい始めたら、からっぽ瞑法のときと同じようにそれを静かに認め、再び歩く動きに注意を引き戻しましょう。
歩く動きに合わせて、「右、左」とか、「足を上げる、下げる」などと、心のなかでつぶやくとやりやすくなるかもしれません。

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久賀谷 亮(くがや・あきら)

医師/医学博士

イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わる。
2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』 (ダイヤモンド社)などがある。

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(医師/医学博士 久賀谷 亮)
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