■「もう自転車に乗れない」と煽るメディア
マスメディアもネットメディアも混乱しまくっている。「これからは自転車に乗れない」「歩道走行で即、罰金(本当は反則金)だ!」など、もう煽りに煽っている。私はその無知ぶりに少々面食らっているのだが、これに関してはマスメディアもネットも法律の文言と、その運用の差を知らなすぎると思う。
たしかに「歩道通行・反則金6000円」「夜間無灯火・反則金5000円」などと定められてはいる。しかし、今回の青切符導入で、即、切符が切られるかというと、それとこれとは別問題なのだ。
■青切符を導入した警察官僚たちの本音
これに関して、私は自治体主催あるいは警視庁交通安全センター主催などの講演会で「本当はこうです」と言いつのってきた。
同席する警察官僚は口々に「ヒキタさんのおっしゃるとおりです。しかし、警察の口からは言えないのですよ」という。だから民間から私が出ていって「法の解釈、警察庁の方針からすると、現実として今後こうなります」と言うのだ。
それを警察官僚たちが頷いて聞いている。
どういうことか。実際の現場に立てば分かる。
ともあれ、冷静な視点で経緯を振り返り、その上で実際問題、青切符は何について切られるか考えていこう。
■「113項目のNG行為」が効きすぎた
自転車の事故が多すぎる、自転車乗りがルールとマナーを知らなすぎる……といった批判を受けて、ついに警察庁が「自転車にも青切符導入」と大きく舵を切った。これに関しては新聞やテレビも大いに取り上げ、「では、何が取り締まられるのか」と話題になった。
信号無視? 2人乗り? 傘さし運転? 逆走? そこに警察庁が出した最初の答えが、2025年春、警察庁の記者クラブで配布されたプレスリリース「113項目の取り締まり項目」だった。
後から考えると、これが混乱の元となった。
■「車道を走るのは危なすぎる」と大反発
反則金額は原付バイクをベースとしたとのことで、違反内容に応じて3000円から1万2000円となった。信号無視や車道逆走などの悪質なものもあるが、一方、歩道走行も反則金6000円などとあった。
テレビや新聞などのマスメディアはこれをセンセーショナルに報道した。2026年4月からは「自転車で歩道を走れなくなる」と。スタジオの識者と称する人びとは「ママチャリに乗るのは控えたほうがいいですね」「自転車のマナーが悪いので自業自得です」などと言った。
これらの報道にママチャリ市民は大いに反応し、パブリックコメントには「歩道禁止なんて反対」「車道が危なすぎるのに」が殺到したという。
パブコメの結果が出たのが2025年6月。その3カ月後の9月4日、警察庁が急遽、発したのが「自転車ルールブック」だった。この冊子は、いわばパブコメに対する警察からのアンサーだったのだ。
■歩道通行をめぐる警察からのアンサー
警察庁から出た「自転車ルールブック」は計53ページのちょっとした冊子となった。
最初に提示されたのが「歩道を通る自転車を取り締まることはしない」という文言だ。引用しよう。
取締りの基本的な考え方
自転車の運転者による反則行為のうち(中略)悪質・危険な行為が自転車の交通違反の取締り対象となります。
一方で、単に歩道を通行しているといった違反については、これまでと同様に通常「指導・警告」が行われます。青切符の導入後も、基本的に取締りの対象となることはありません。
(警察庁「自転車ルールブック」より)
これが警察の方針だ。
つまり、現状のママチャリ利用については特におとがめがないという話になる。
■指導警告はされても即、青切符ではない
本来、歩道通行には「自歩道指定」「子供とお年寄りと障碍者」「車道が特に危険な場合」という条件があるのだが、三つ目が拡大解釈を重ねられて今に至った。
ところが現在、マスメディアやネットの中に溢れるのは「4月から自転車が歩道を走ると即『罰金』(本当は『反則金』)」の連呼だ。傘差しも罰金、併走も罰金、二人乗りも罰金、などという。
みんな間違いである。
警察としては、このルールブックで「めったやたらに青切符切りません、だから安心してね」と言いたかったんだろう。
だが、マスメディアも、ネットメディアも、この「ルールブック」を満足に読まなかった。恐らく今でも読んでない。だからこそ半年経った今となっても混乱が続いているのだ。
この経緯、元はといえば確かに警察庁の初動ミスだったと思う。だが、次にダメなのはマスメディアの不勉強なのである。
■警察が見逃さない「悪質・危険な行為」
一方、このルールブックの中では、即青切符を切る「悪質・危険な行為」が、6つ例示されている。警察による、この手の例示というのは「いざ始まったときに必ず取り締まる」内容となるものだから、その重点項目をみていこう。
① ながらスマホ運転
最初に出てくるのが、目下喫緊の問題である「ながらスマホ」だ。じつに危ない。しかし頻繁に見る。片手運転になるし、画面を凝視しながらの運転というのはどうしたって事故の元だ。
ここには2種類あって、ながらスマホで事故寸前(あるいは事故)の場合は赤切符である。一方、スマホを片手で持って見つめると、単独でも、即、青切符。つまりスマホがらみはすべて赤・青の切符が切られる。それだけスマホがらみの事故が多いのだ。
② ブレーキを付けていない自転車
これは一時期流行った「ノーブレーキ・ピスト」で、競輪選手が使う固定ギアの自転車などのことを指す。まだそんなヤツいるのかとちょっと不思議な項目だ。
③ 遮断機の下りた踏切侵入
こんなの当たり前中の当たり前だと思われるが、いわゆる「開かずの踏切」などで起きがちだ。
■「傘さし」+αの合わせ技で青切符
④ 複合違反
じつは今回のルールブックの中で、これが一番汎用性の高い項目だと思われる。
たとえば既出の113項目の中で「傘さし運転」について。これが単独で行われた場合は「指導・警告」でおしまいだ。ところが、傘さし運転をしながら、車道を逆走していたとする。それぞれ単独ならば指導・警告ですんだところが、ダブルで重なると、青切符になる。
⑤ 警察のいうことを故意に無視
⑤と④はちょっと似ている。単独の違反、たとえば逆走(右側通行)している自転車に対して、警察官が指導・警告で「逆車線に行きなさい」と言ったとする。
それを無視して右側通行を続けたりすると、アウト。青切符だ。
⑥ 反則行為で他者の危険を誘発した場合
これも2つの例が提示されている。
たとえば、歩道をハイスピードで走り、歩行者が驚いて立ち止まったりした場合。
■「逆走」と「信号無視」も大問題
私としては、この「即・青切符」の中に、逆走(右側通行)と信号無視を入れて、合計8つとしてほしかった。特に逆走は出合い頭事故の元凶となっていて、その出合い頭事故こそが、すべての自転車死亡事故の半分以上を占めているのだから。
そういうことを含め、今回のルールブックは若干甘いと思う。自転車は軽車両という名の車両なのだから、そこには責任と義務が生じるということを分からせなくてはならない。
ただ一方、青切符滑り出しの施策として「重点項目を決める」というのは悪くない。「何でもかんでも違反、113項目も違反項目はある」というのでは、誰も守れない。
それにしても何とも言いがたいのが、マスメディア・ネットメディアを問わずの、報道姿勢だ。
視聴率稼ぎか、クリック数稼ぎなのか、罰金だ反則金だと煽るばかり。これからの自転車交通、事故を減らす方策、など誰も考えちゃいない。「ルールブック」の発表前も後も、メディアの報道は正直言って混乱を極めている。今もだ。
ということで、それはさておき結論。
自転車に即、青切符が切られる要件は以下の6つ(図表5)。基本はみな警察庁の「自転車ルールブック」に書いてある。
何はともあれまずはこれを読むべきだろう。
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疋田 智(ひきた・さとし)
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。大東文化大学社会学研究所客員研究員。学習院大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。YouTube『芝浦自転車研究所』
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(自転車評論家 疋田 智)

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