※本稿は、牧田善二『医療に殺されない 病院・医者の正しい選び方』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■医師が考える今の医療制度の大問題
自由診療とは、公的医療保険の対象にならない診療をひっくるめたものを言います。自由診療には、公的医療保険の保険適用がまだ認められていない最新の治療や、病気の発見や予防のために受ける人間ドックやワクチン接種などが該当し、これらはすべての医療費が全額自己負担となります。
せっかくいい薬があっても、承認されていない薬だと、日本では混合診療が禁止されているので、公的医療保険の診療では患者さんに処方できません。
混合診療とは保険適用の治療や薬と、保険が適用されない治療や薬の、両方を用いた診療のことです。日本ではこの混合診療が認められておらず、たとえ1つでも自由診療の薬を処方すると、他の薬や治療を含め、すべて全額自己負担の自由診療になるのです。これが今の医療制度の大きな問題だと私は感じています。
■混合診療禁止の問題と自由診療の現実
一人でも多くの患者さんが人工透析になるのを防ぎたい――そう思ったため、私は自由診療のクリニックを始めました。自由診療なのは、患者さんを人工透析から救う最新の治療を行うと混合診療になってしまうからです。保険では認められていない薬や検査が必要なので、自由診療にするしかないのです。
これを解決するには混合診療が認められることが必須です。
混合診療を禁止するのは国としての理由があるのでしょうが、このまま続けていくのには無理があります。患者さんの不利益を解消するため、将来的には混合診療が認められるようになるのだろうと考えています。
国民皆保険だと、医者も医療機器も不足している病院で治療を受けても、最新の医療機器と熟練の技を持つ医者を備えたトップクラスの大学病院で治療を受けても、同じ手術を受けたのであれば、まったく同じ料金となり診療報酬に変わりはありません。これは、ある意味では不公平です。
質がいい医療を提供してもほかと変わらない料金では、欧米のように病院や医者が切磋琢磨するような環境にはならないでしょう。
患者さんにとっては、安いお金で最高の医療が受けられるのであれば、それが理想でしょう。しかし、国民皆保険の制度では高額な医療費を国や地方自治体も負担することになります。最新の高額な医療を公的医療保険の適用にすると、医療費で国や自治体の予算が破綻してしまうかもしれません。
それを避けるためにも、混合診療を認め、希望する患者さんに自由診療の範囲に含まれる最新医療が受けられるようにしたほうがいい――私はそう考えています。
■新しいタイプの抗ガン剤治療が受けられない
自由診療は、医療を提供する病院や医者がそれぞれで価格を設定し、患者さんはその金額の100%を支払います。当然、自己負担額が1~3割の公的医療保険の診療よりも、はるかに高い金額を支払うことになります。
もちろん、公的医療保険の診療でいい治療が受けられるのでしたらそのほうがいいに決まっています。かつては、保険診療だけで、いい治療が行われていたので、自由診療の必要性を主張する医者はほとんどいませんでした。
ところが、医療はものすごい勢いで進歩し、それまでにはなかった命が助かるような薬や治療法がどんどん開発されています。
代表的なのがガンの治療です。以前は、「ガン=死」と言われるほど、命に関わる恐ろしい病気でした。そのため、現在でも「ガンにだけはなりたくない」と願っている人がほとんどでしょう。
しかし、ガンの治療法も進歩して、治癒率は格段に上がってきています。抗ガン剤も劇的に効くものが次々と開発されており、必ずしも「死に至る病」ではなくなってきているのです。
特に抗ガン剤の進歩は目覚ましく、ガン患者の生存率の向上に大きく貢献しています。
一昔前の抗ガン剤は副作用が強く、体への負担が大きいため、「抗ガン剤は毒」「抗ガン剤に殺される」といったマイナスイメージを持たれていました。
現在は、ガンをピンポイントに攻撃し、ピタッと合ったタイプのガンに劇的に効く「分子標的薬」という、新しいタイプの抗ガン剤が次々と開発されています。しかしながら、こういった新しい薬は公的医療保険の適用外のものが多いのです。
また、どのタイプの抗ガン剤が適しているのかを判断するための知識や経験が必要です。実は欧米では、ガン治療は薬物療法を専門とする「腫瘍内科医」が中心になって治療を進めています。
■腫瘍内科医の不足と新薬承認のジレンマ
ところが、日本ではこの腫瘍内科医が圧倒的に不足しています。2019年のデータによると、アメリカの腫瘍内科医は約1万7000人、それに対し日本では1300人程度、10分の1以下という少なさです。
さらに、日本では新薬が承認されるまでに時間がかかりすぎるという大きな問題も潜んでいます。そしてそれは、現在の日本の公的医療保険制度のデメリットでもあるのです。
基本的にひとつの薬が開発されたとき、有効性や安全性のデータを国に提出して審査を受けます。病院や医者がその薬を処方できるのは、国がそれらのデータをチェックして承認が得られてからになります。
承認が得られるまでには数年かかりますし、海外で承認が得られたとしても、日本でその薬が承認されるまでにさらに時間がかかります。
例えば、欧米で承認されていて、非常に効果が高い薬があったとしても、日本で承認されるまで待たなければなりません。これらは「国内未承認薬」と言われ、治療に使用した場合は、その薬代はもちろん、本来なら公的医療保険の適用になる治療費もすべて保険適用外となり、全額を自己負担することになります。
■裁判でも認められなかった混合診療
もちろん、新しい薬にはリスクがあります。
ただ、ガンと闘っている患者さんは、承認されるまでの時間を待つことができないケースもあります。効果があるのであれば日本で承認されていない薬だとしても試したい――そう願うのは当然のことでしょう。
このようなとき、通常の薬は保険診療で支払い、承認されていない薬だけ自由診療で支払うのが理想なのですが、日本では混合診療が禁止されているので、それが認められません。
公的医療保険が適用される治療を選ぶか、通常の薬代を含めすべて自己負担で(この場合、莫大なお金がかかります)承認されていない薬を使うか、どちらかを選ぶしかないのです。これは国の法律で決められているルールですから、どうしようもありません。
この問題に関して、ある患者さんが「日本のルールが間違っている」と裁判を起こしたことがあります。しかし、その裁判では混合診療は認められませんでした。
ですから、ガン患者さんが、「どうしても助かりたい。保険がきかない最新の治療を受けたい」と思ったときには、すべての治療費を自己負担でするしかないというのが、現在の日本のルールです。
■「治験」という抜け道
ただ、抜け道はあります。
例えば、国立がん研究センター中央病院などで、まだ承認されていない薬の有効性や安全性を確かめるために行う、「治験」という臨床試験に申し込む方法です。この場合、治療費は無料になります。
治験を受けるためには、自分の試したい薬の治験を行っている病院を探し、その病院を受診しなければなりません。大学病院や国立がん研究センター中央病院など都市部にある大きな病院で行っているものが多いので、地方に住んでいる場合は通院というハードルがあります。
いろいろな事情から、受けたくても受けられないというケースも多く、限られた人しか受けられない治療と言えるかもしれません。
----------
牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。
----------
(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
